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是正・手直し管理とは、建設現場で発注者・設計者・社内検査から出た指摘事項を指摘リスト(ダメ出しリスト)で一元化し、原因究明・方針決定・実施・完了記録までを工程と並走させて完結させる実務です。竣工検査から引渡しの直前までに指摘が消え残ると引渡しが止まるため、施工管理の品質管理力が最も可視化される領域でもあります。
一方で、指摘の発生原因は図面理解のズレ・段取りの詰まり・技能不足・設計変更・検査基準の差まで幅広く、工種(建築・土木・設備・内装)によっても対応の重さが変わります。「無料で直すのか・費用請求するのか」という元請と下請の線引きも、建設業法と民法の契約不適合責任で判断する場面が出てきます。
本記事では、是正と手直しの違いという定義から、指摘リスト7項目・是正プロセス6ステップ・完了記録の残し方・法令と費用負担・工程と並走する締切管理・工種別の対応差・よくある失敗5パターン・FAQ12問までを、実務記録に落とせる粒度で解説します。
- 先に結論
- この記事で分かること
- 是正と手直しの違い|建設現場での定義
- 是正・手直しが発生する5つの原因
- 指摘リスト(ダメ出しリスト)の運用7項目
- 是正・手直しの対応プロセス6ステップ
- 完了記録の残し方|写真・書類・保存期間
- 法令と費用負担|建設業法・民法との関係
- 工程と並走する是正管理|締切と見切りの判断
- 工種別の対応差|建築・土木・設備・内装
- よくある失敗5パターンと再発防止
- よくある質問(FAQ)
- Q1|「是正」と「手直し」はどう使い分ければよいですか?
- Q2|指摘リストはエクセルとアプリ、どちらがよいですか?
- Q3|是正指示を受けたら、下請は無料で対応しなければならないですか?
- Q4|写真が後から見返せる形で残っていないとどうなりますか?
- Q5|竣工検査前の是正ラッシュを避けるにはどうすればよいですか?
- Q6|是正の完了確認を発注者がしてくれない場合はどうしますか?
- Q7|改修・修繕工事で既存の不良と新規是正が区別できない場合は?
- Q8|設計変更による是正と、設計者の個人的な指摘を区別する基準は?
- Q9|是正の再発防止データはどう活用しますか?
- Q10|是正記録はどのくらいの期間保存すればよいですか?
- Q11|是正・手直し管理のスキルは評価につながりますか?
- Q12|是正・手直しの実務経験は転職でどう伝えればよいですか?
- まとめ
先に結論
- 是正・手直し管理の軸は「指摘リストの一元化」「是正プロセスの6ステップ」「完了記録の写真・書類」の3つに集約される
- 指摘リストに最低限載せる項目は 発生場所/工種/指摘内容/写真/期限/担当/ステータス の7列。これだけあれば是正漏れの9割は防げる
- 「是正」は不合格・契約不適合の是正を指す重い表現、「手直し」はダメ出し補修を含む幅広い補修行為。社内で定義を一致させておく
- 元請と下請の費用負担は、民法第562条〜564条(契約不適合責任)と建設業法第19条の3・4(不当な特約の禁止)を踏まえ、原因が下請側か設計側かで切り分ける
- 完了記録は「Before/中間/After」の3点セット写真と、黒板・位置図・測定値を残し、契約書・特記仕様書・社内規程で定めた保存年数で保管する運用が実務の起点
この記事で分かること
- 是正・手直し・ダメ出し・不具合是正・やり直しの違い(現場での定義と重さ)
- 是正・手直しが発生する5つの原因と、工種別(建築・土木・設備・内装)の頻発箇所
- 指摘リスト(ダメ出しリスト)に載せる7項目と、エクセル・紙・アプリの運用形
- 是正・手直しの対応プロセス6ステップ(受領→現地確認→原因究明→方針決定→実施→完了確認)
- 完了記録の残し方(写真の撮り方・書類の保存期間・公共と民間の運用差)
- 費用負担の線引き(建設業法・民法の契約不適合責任・下請への無償対応の判断)
- 工程と並走する是正管理(竣工検査前のラッシュ・見切り判断・協議事項)
- よくある失敗5パターンと再発防止策、FAQ12問
是正と手直しの違い|建設現場での定義
是正・手直し・ダメ出し・不具合是正・やり直しは、現場では混同されがちですが、重さと法的な位置づけが違います。社内で定義を揃えておかないと、下請とのやり取り・費用請求・工程計画でブレが出ます。
用語の重さと使い分け
| 用語 | 意味・重さ | 使う場面 |
|---|---|---|
| 是正 | 不合格・契約不適合・法令違反を正しい状態に戻す(重い) | 発注者検査・社内検査・行政指導で「不合格」判定が出たとき |
| 手直し | 補修・ダメ出し対応を含む幅広い補修行為(中程度) | 竣工検査前の指摘対応、内装仕上げの微調整 |
| ダメ出し(ダメ工事) | 工事がおおむね終わった段階で見つかった汚れ・傷・未完成部分の補修 | 竣工検査・内覧の指摘対応 |
| 不具合是正 | 設備機器・仕上げの不具合(動作不良・漏れ・剥がれ)の是正 | 設備試運転・引渡し前の最終確認 |
| やり直し | 一度施工した部分を撤去・解体して再施工(最も重い) | 構造・躯体・配管の重大不良 |
実務では、発注者が「是正」と書面で指示してきた場合は、建設業法上の契約(請負契約書・特記仕様書)に適合しない状態=契約不適合に近いという前提で動くのが安全です。「手直し」が指示書に書かれているときは、契約仕様の範囲内の軽微な補修として扱うのが通例ですが、社内の指示書様式を分けておくと、下請とのやり取りで混乱が起きにくくなります。
法令上の位置づけ
是正・手直しは、以下の法令・契約文書で位置づけられます。
- 建設業法第19条で定める契約記載事項:工事内容・請負代金・工期・契約不適合責任(改正前民法では「瑕疵担保責任」)に関する定め等を書面に残す義務。是正の範囲・費用負担はここに書かれた仕様が起点になる(原典確認:e-Gov 建設業法)
- 民法第562条〜第564条の契約不適合責任(2020年4月施行済み):引渡し後に見つかった契約不適合は、追完請求・代金減額・損害賠償・解除の対象になる(出典:e-Gov 民法)
- 公共建築工事標準仕様書(国交省大臣官房官庁営繕部):公共建築の是正は本仕様書と特記仕様書の記載が優先。確認は発注者ごとの最新版で(出典:国土交通省 営繕工事関係資料)
- 公共建築改修工事標準仕様書:改修・修繕系の是正はこちらを参照
社内で「是正指示書」「手直し指示書」などの様式を使い分ける場合、どちらを使うかで次工程の費用負担が変わるため、現場代理人・工事主任のレベルで定義を揃えておきます。
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是正・手直しが発生する5つの原因
是正工事の発生原因は、kentem.jp「是正工事とは?発生原因や対応手順、対策を解説」 や uconnect.jp「是正工事とは?発生原因と対応手順、無償対応の判断基準を解説」 等の建設DX系メディアの整理と、現場での実務感覚を突き合わせると、5つに大別できます。
原因1|図面・仕様の理解ズレ
設計図書と特記仕様書・現場説明書の読み合わせが浅く、下請側が旧版図面で施工するケース。改訂履歴(第◯版)の管理が甘いと起きやすい。
原因2|工程と段取りの詰まり
後工程に迫られて検査を省略、材料手配の遅れで代替品を使う、職長への指示変更が口頭だけで残らない等。工程遅延挽回の過程で品質が下がる典型です(参考:工程遅延の挽回手順)。
原因3|技能・施工不良
職人の技能差・新人の未経験・慣れない工種での施工。genbago.com「是正工事とは?原因や流れ、再発防止策を建設業向けにわかりやすく解説」 でも「施工品質のばらつき・社内情報共有不足・現場管理の属人化」が是正の背景にあると整理されています。
原因4|発注者・設計者からの変更
着工後に設計変更・仕様変更の口頭依頼が入り、変更承認書面を取らずに進めてしまうケース。後で「頼んでいない」「指示していない」の言った言わない論争に発展します(参考:発注者との打合せの進め方)。
原因5|検査基準の違い(社内と発注者)
社内の品質管理基準と発注者の検査基準(JASS、JIS、公共建築工事標準仕様書、特記仕様書)がズレ、社内合格・発注者検査で指摘というパターン。公共工事と民間工事の両方を受ける会社で発生しやすい。
工種別の頻発箇所
工種で見ると、是正・手直しの頻発箇所は、国土交通省の各地方整備局が公表する工事検査関連資料(例:中部地方整備局 土木工事書類作成の手引き(令和2年10月)、直方市 工事検査指摘事項から見る「施工管理の留意点」(令和2年))で指摘件数の多い項目として整理されているものを、工種別に実務目線でまとめると次のようになります(各発注者ごとに重さは異なるため、個別契約で確認してください)。
| 工種 | 頻発する是正・手直し |
|---|---|
| 建築 | クロス・塗装の汚れ・継ぎ目、建具の調整、タイル目地、シーリング切れ、床の不陸 |
| 土木 | 出来形寸法のズレ、法面の不陸、舗装の縦断・横断勾配、構造物の表面仕上げ |
| 設備(電気・管・空調) | 試運転時の作動不良、配管ルートの干渉、器具高さ、吊り金物の位置、天井内の露出配管 |
| 内装・改修 | 既存部との取り合い、見切り材の位置、段差解消、既存不良との線引き |
指摘リスト(ダメ出しリスト)の運用7項目
是正・手直し管理の中心にあるのが指摘リスト(ダメ出しリスト、Punch List とも呼ばれます)です。punchlistapp.net「建設現場の指摘管理アプリ」 の整理では、「指摘リストは元請・発注者・設計者・現場代理人が合同で作成し、下請がそれぞれの担当分を是正する」のが標準運用とされます。
最低限の7項目
| # | 列(項目) | 内容 | 例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 発生場所 | 棟・階・部屋番号・位置 | 本館3階 302号室 窓際 |
| 2 | 工種 | 建築/土木/電気/管/空調/内装/外構 等 | 内装(クロス) |
| 3 | 指摘内容 | 具体的な事象・測定値 | クロス継ぎ目のめくれ 15cm |
| 4 | 写真 | 指摘時の現況写真(最低1枚) | (リンク or 画像ID) |
| 5 | 期限 | 是正完了期限(竣工検査日・引渡し日から逆算) | 2026-11-10まで |
| 6 | 担当 | 元請内の担当者と下請の施工担当 | 元請:○○主任/下請:△△(内装) |
| 7 | ステータス | 未着手/着手中/是正完了/再指摘/完了確認済み | 着手中 |
これに加えて、指摘元(発注者/設計者/社内検査/第三者検査)、原因区分(施工ミス/変更対応/他社起因/設計起因)、費用負担(元請/下請/発注者)を加えると、後述の費用請求・再発防止データの集計に使えます。
運用形(エクセル/紙/アプリ)
- エクセル・スプレッドシート:中小規模の現場で最も普及。棟・階ごとにシートを分け、ステータスでフィルタ。弱点は写真の添付と同時編集
- 紙のダメ出しリスト:内覧立会で発注者と一緒に書き込む用途。後でエクセル・アプリに転記する運用が標準
- 指摘管理アプリ(SPIDER+、目視録、punchlistapp、Lefixea 等):図面上に指摘ピンを打ち、写真・ステータス・担当を紐付け。中〜大規模で導入が広がる
spider-plus.com「指摘管理機能」 や mokusiroku.com「指摘事項の是正までのスピードアップと是正漏れの削減に成功」 等の各社事例では、紙・エクセル運用から指摘管理アプリに移行することで是正漏れ・是正までの日数が短縮したと報告されています(各社事例であり業界平均ではありません)。
指摘リストが機能するコツ
- 1指摘1行:複数指摘を1行にまとめない(ステータスがバラける)
- 位置図とペア運用:指摘リストは発生場所の文字列だけでなく、図面上の位置図(PDFまたは紙)と対応させる
- 立会での即時記入:発注者立会時に、その場でリストに書き込む/アプリで入力する。後日まとめ入力は漏れが出る
- 週次でのステータス棚卸し:週1回、全指摘を棚卸しし、未着手・期限超過を抽出。工程会議(参考:工程会議の進め方)の議題に乗せる
是正・手直しの対応プロセス6ステップ
是正・手直しは、場当たり対応ではなく、プロセスを決めておくと再発防止データが取れます。uconnect.jp・kanna4u.com「是正工事とは?対応の流れや注意点、防止するための方法を解説」 の整理と、現場実務を踏まえると、6ステップに分解できます。
ステップ1|指摘の受領
発注者・設計者・社内検査・第三者検査から指摘を受け、指摘リストに登録。受領時に以下を確認します。
- 指摘の重さ(是正/手直し/ダメ出し)
- 指摘元の立場(契約上の指示権限があるか)
- 書面で残っているか(口頭だけの場合はその場で指示メモ化)
ステップ2|現地確認
指摘内容を現地で確認し、現況写真を撮ります。この時点の写真が「Before写真」として後の完了記録の起点になります。発注者立会の指摘はその場で現地確認して登録、社内検査は検査者と現場代理人が合同で確認する流れが一般的です。
ステップ3|原因究明
なぜ発生したかを究明します。原因区分は5分類(施工ミス/変更対応/他社起因/設計起因/検査基準差)で記録し、再発防止データとして蓄積。属人判断にせず、1〜2週間に1度は職長・工事主任で原因傾向を振り返ります。
ステップ4|是正方針の決定
是正方法・費用負担・工程影響を決定します。方針決定には以下の確認が必要です。
- 是正方法が設計図書・特記仕様書・JASS等の基準に適合するか
- 発注者・設計者の承認が必要か(契約上)
- 下請の工事量が増える場合、費用負担をどちらが持つか
- 他工種への影響(例:天井内配管の是正は内装仕上げ後だと再撤去が必要)
費用負担の判断フローは後述します。
ステップ5|是正の実施
決めた方針で是正工事を実施。実施中にも中間写真を1〜2枚残します。安全管理(高所作業・既存設備への養生等)を怠らないよう、作業手順書(参考:作業手順書の作り方)を更新して朝礼で共有します。
ステップ6|完了確認と記録
是正完了後、以下を実施します。
- 是正後の After写真 を撮影
- 指摘リストのステータスを「是正完了」→ 発注者・設計者の確認で「完了確認済み」
- 完了報告書(必要に応じて)を発行
- 原因・対応を再発防止データとして蓄積
chord.or.jp「内覧時に指摘したダメ工事が直っていない」(住まいるダイヤル) の整理でも「すべての指摘事項が是正または正式に合意されてはじめて引渡しが認められる」とされます。契約仕様・安全・使用上の支障がある重大指摘や、発注者と未合意の指摘が残ると、引渡しに影響する可能性があるため、「完了確認済み」ステータスまで到達させるか、見切り判断を書面合意するかのいずれかを選びます。
完了記録の残し方|写真・書類・保存期間
是正・手直しの完了記録は、「是正したことを後で証明できる状態」で残すことが本質です。発注者からの契約不適合責任追及、瑕疵担保期間中の問い合わせ、監査対応で参照されます。
写真の3点セット
- Before:指摘時の現況写真(指摘内容が分かる構図)
- 中間:是正作業中の写真(原因となった不具合が除去できたことが分かる構図。隠蔽部分は必ず撮影)
- After:是正完了後の写真(Beforeと同じアングルで撮影)
kuraemon.com「施工管理における工事写真とは?役割と活用ポイント」 によると、修繕工事や改修工事では工事前と工事後の写真を比較できる形で残すのが基本とされます。黒板(工事名・工種・是正内容・日付・撮影者)と、位置図(図面上のどこか)を一緒に写すのが実務の標準です。
書類の構成
| 書類 | 主な記載内容 | 保存の起点 |
|---|---|---|
| 指摘リスト(最終版) | 7項目+費用負担・原因区分 | 竣工時 |
| 是正完了報告書 | 指摘1件〜複数件まとめ、是正日・担当・写真 | 是正完了時 |
| 発注者・設計者の確認書面 | 完了確認日・サイン・押印 | 完了確認時 |
| Before/中間/After 写真台帳 | 写真+黒板+位置図 | 是正完了時 |
| 設計変更書面 | 変更指示書・変更図面・費用変更 | 変更指示時 |
保存期間
工事書類の保存期間は、根拠法と発注者ごとの契約条件・書類種別で異なるため、個別に確認が必要です。実務で参照される考え方の例を以下に示します(具体の年数は必ず契約書・特記仕様書・発注者要領で確定させてください)。
- 公共工事:発注者ごとの契約条件・特記仕様書に沿って保存年数が指定される。中央官庁の直轄工事と地方自治体では運用が異なるため、工事ごとに発注者要領で確認する
- 民間建築工事:契約書(請負契約書・工事約款)で定めた保証期間を踏まえ、法令上の責任期間と契約条件を照らして個別に設定する。住宅については住宅品質確保促進法(品確法)の瑕疵担保責任(構造耐力上主要な部分・雨水の浸入を防止する部分)の規定が参考になる(出典:国土交通省 住宅瑕疵担保履行法に関する情報)
- 電子保存:電子帳簿保存法の保存要件(真実性・可視性・検索性)に対応した保管方式を選び、改ざん防止・検索可能性を担保する(詳細は国税庁 電子帳簿保存法Q&A)
いずれにしても、保存年限は社内の工事書類保存規程で書類種別ごとに決めておくのが基本です。
公共と民間の運用差
- 公共工事:工事検査(中間・竣工)が形式として重く、指摘リスト・是正記録の様式も発注者側で定められていることが多い。中部地方整備局 土木工事書類作成の手引き(PDF) 等が参考になる
- 民間工事:発注者ごとの運用差が大きく、オーナー・設計監理者の要求水準で記録精度が変わる。設計監理者が常駐しない工事では、元請側で記録様式を提示する
法令と費用負担|建設業法・民法との関係
是正・手直しで最も揉めやすいのが「誰が費用を持つのか」です。感覚で決めず、建設業法と民法の該当条文で切り分けます。
契約不適合責任(民法第562条〜564条)
2020年4月に施行された改正民法では、「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に改められ、契約の内容に適合しないときの対応が整理されました。
| 法的手段 | 内容 | 主な使用場面 |
|---|---|---|
| 追完請求 | 修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しを求める | 是正・手直しの請求 |
| 代金減額請求 | 追完が合理的期間内に行われない等の場合、減額 | 追完困難時 |
| 損害賠償請求 | 契約不適合による損害を賠償請求 | 工期延長・使用不能等の損害 |
| 契約解除 | 重大な契約不適合で契約を解除 | 構造・用途に関わる重大な不適合 |
通知期間は、原則として買主が不適合を知った時から 1年以内 に通知する必要がある(民法第566条)等、期間制限があります(詳細はe-Gov 民法を参照)。元請・下請の間でも、下請契約で定めた仕様に適合しない場合は同じ構造で対応します。
建設業法第19条の3・4(不当な特約の禁止)
建設業法第19条の3では、元請が下請に対して不当に低い請負代金を定めることを禁止、第19条の4では 不当な原材料・使用機械器具等の購入強制を禁止 しています。是正工事の無償強要が「不当に低い請負代金」に該当する余地があるため、原因が明らかに下請側にない是正を無償で押し付けることはできません(原典:e-Gov 建設業法)。
beagle-construction.com「是正工事の指示を受けたら無料で対応しないといけない?」 の弁護士解説でも、「下請起因でない是正を無償対応させるのは建設業法上問題になりうる」との整理が示されています。
無償対応の判断フロー
実務での費用負担判断は、以下のフローが基本です。
- 契約書・特記仕様書・発注時の仕様書で、是正内容が仕様の範囲内か確認
- 範囲内なら、原因を5分類(施工ミス/変更対応/他社起因/設計起因/検査基準差)に区分
- 施工ミス → 下請負担が原則。ただし元請の管理責任(指示・確認)も検討
- 変更対応 → 発注者負担(追加変更契約が必要)
- 他社起因(別工種の施工ミスで是正が必要) → 原因となった工種の負担
- 設計起因(設計図書の矛盾・不備) → 発注者・設計者負担
- 検査基準差(社内合格・発注者検査で不合格) → 契約仕様に沿って判断。発注者仕様が優先なら元請・下請の管理責任を検討
揉めそうな案件は、早い段階で建設業の弁護士に相談するのが安全です(参考:弁護士法人長瀬総合法律事務所 建設業法務)。
工程と並走する是正管理|締切と見切りの判断
是正・手直しは、工程の最後に集中するほど現場が苦しくなります。竣工検査前の最終是正ラッシュで徹夜・休日出勤に突入する現場は少なくありません。
竣工検査前のラッシュを避ける
- 中間検査を工程に組み込む:躯体完了時・設備試運転前・内装仕上げ前など、節目ごとに社内検査を実施。竣工検査に指摘を残さない
- 先行指摘対応:発注者が現場巡回で挙げた指摘は、まとめ対応ではなくその週のうちに着手。放置するほどラッシュに積み上がる
- 下請への情報共有:是正内容を朝礼・工程会議で共有し、下請側が是正を次回施工に活かせる状態にする(参考:工程会議の進め方)
見切り判断の基準
工程・予算の制約で、全指摘を是正しきれない場合、発注者と協議して見切り判断を行います。
- 引渡し前の是正:契約仕様・安全・使用上の支障がある指摘は是正必須
- 引渡し後の是正:瑕疵担保責任期間内に是正する前提で、引渡し後に対応する方針を発注者と合意
- 協議事項:契約仕様の範囲外の指摘・設計者の個人的な指摘は、追加契約の対象になるか協議
見切り判断は、必ず書面で合意します。「口頭でOKをもらった」は後の契約不適合請求で覆るリスクがあります。打合せ簿・議事録の運用は議事録の書き方 を参照してください。
2024年問題との両立
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています。原則は月45時間/年360時間、特別条項付き36協定でも年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満/複数月平均80時間以内が上限です(出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制」)。竣工検査前の是正ラッシュで労働時間が上限に迫る場合、下請・応援業者の増員・工期調整を発注者と協議する選択肢を早めに持ちます。
工種別の対応差|建築・土木・設備・内装
是正・手直しの対応は工種で性質が変わります。
建築(RC造・鉄骨造・木造)
- 躯体系の是正:かぶり厚さ不足・鉄筋の継手不良などは、構造性能に関わるため撤去・再施工になることが多い。発生時点で設計者・構造設計者と協議必須
- 仕上げ系の是正:クロス・塗装・タイル・床仕上げの指摘は、工種別に下請を再配置して対応。他工種への養生が重要
- 建具・金物:建具の調整・金物の取り付け位置の是正は、竣工検査直前に集中。先行確認で前倒し
土木(道路・橋梁・河川・造成)
- 出来形管理:寸法・勾配・高さの出来形が規格値外になった場合、再施工か承認範囲での修正かを発注者と協議
- 構造物の表面仕上げ:型枠不良によるジャンカ・豆板は、国交省の 土木工事共通仕様書 等に沿った補修方法で対応
- 検査書類:工事検査書類は中部・東北等の地方整備局が様式を定めている(例:中部地方整備局 土木工事書類作成の手引き)
設備(電気・管・空調)
- 試運転時の是正:設備工事は試運転・調整段階で不具合が顕在化する。配管ルート・ダクト干渉・器具高さの指摘が集中
- 天井内の露出配管:天井仕上げ後に是正となると天井の再撤去が必要。試運転前に発注者・設計者を交えた隠蔽前検査を実施
内装・改修
- 既存部との取り合い:既存躯体の歪み・下地不良との線引きを事前に文書化。改修工事では「既存不良との区分」が揉めやすい
- 見切り材の位置:発注者の嗜好に左右される指摘が出やすい。モックアップ・サンプル承認で前倒し
- 工事区分:リノベーション・改修・修繕工事では、見積時点の工事区分の明確化が是正発生時の費用交渉に効く(参考:改修・修繕工事の求人 で各社の工事区分を確認できます)
よくある失敗5パターンと再発防止
失敗1|指摘リストが複数存在する
発注者側リスト・社内リスト・下請側リストが別々に走り、ステータスが揃わない。一元化(1つのマスターリストに全員が追記)が原則です。
失敗2|写真が記録されていない
是正はしたが、Before・中間・After写真が揃っていない。後の契約不適合請求や社内監査で証明不能に。撮影ルールを現場開始時に全員に周知します。
失敗3|口頭での完了確認
発注者・設計者から「OKです」と口頭で言われたが、書面サインを取っていない。後日「それは本是正ではなく仮対応と理解していた」と覆るリスク。完了確認書面を1件単位で残す。
失敗4|原因究明せず対応だけ繰り返す
同じ指摘が別の部屋・別の階で繰り返し出る。原因究明をスキップして是正だけ回していると、工種別・下請別に再発します。週次棚卸しで再発パターンを拾う。
失敗5|費用負担を感覚で決める
元請が「下請の施工ミスだから無償で」と押し付ける、下請が「全部変更対応」と主張する。契約書・特記仕様書・民法・建設業法に沿って判断し、揉める案件は専門家に相談。
よくある質問(FAQ)
Q1|「是正」と「手直し」はどう使い分ければよいですか?
是正は不合格・契約不適合・法令違反の是正という重い意味で使い、手直しはダメ出し補修を含む幅広い補修行為で使います。発注者が「是正」と書面で指示してきた場合は、契約不適合に近いという前提で対応するのが安全です。社内では、是正指示書と手直し指示書を別様式にし、費用負担・工程扱いを分けておく運用が実務的です。
Q2|指摘リストはエクセルとアプリ、どちらがよいですか?
現場規模と関係者数で選びます。1〜2名の小規模改修ならエクセルで十分ですが、関係者が10名を超える新築現場・改修現場では指摘管理アプリ(SPIDER+・目視録・punchlistapp・Lefixea 等)の導入で是正漏れが減ったという各社事例が報告されています(業界平均ではありません)。アプリの初期コスト・教育コストと、是正漏れによる引渡し遅延リスクを比較して判断します。
Q3|是正指示を受けたら、下請は無料で対応しなければならないですか?
原因によります。下請の施工ミスが原因であれば下請負担が原則ですが、発注者からの設計変更・他社起因・設計図書の不備が原因の場合は発注者または原因者の負担です。建設業法第19条の3は不当に低い請負代金を禁止しているため、下請起因でない是正を無償強要することには法的リスクがあります。揉めそうな案件は、建設業の弁護士に早めに相談してください。
Q4|写真が後から見返せる形で残っていないとどうなりますか?
発注者からの契約不適合責任追及、瑕疵担保期間中の問い合わせ、社内監査で「本当に是正したのか」を証明できなくなります。民法第562条の追完請求・566条の通知期間(原則1年)内に請求されたとき、Before/After写真がなければ再是正の負担が発生する可能性があります。写真は撮影時点で黒板・位置図とセットにし、電帳法対応の電子保存要件を満たした形で保管します。
Q5|竣工検査前の是正ラッシュを避けるにはどうすればよいですか?
節目ごとの中間検査を工程に組み込み、発注者の現場巡回指摘はその週のうちに着手するのが基本です。竣工検査の2〜4週間前に「社内先行検査」を実施し、是正を分散する運用が有効です。それでも間に合わない場合は、見切り判断(引渡し後の是正に回す指摘)を発注者と書面合意します。
Q6|是正の完了確認を発注者がしてくれない場合はどうしますか?
まず書面で完了報告書と写真を提出し、確認依頼の記録を残します。それでも反応がない場合は、設計監理者・工事監督員を通じて協議し、必要に応じて建設業の弁護士に相談します。引渡し期限が迫っている場合は、未完了確認の指摘を発注者と書面で合意し、引渡し後の対応に切り替える選択肢もあります。
Q7|改修・修繕工事で既存の不良と新規是正が区別できない場合は?
工事着手前に、既存部の現況調査写真(既存不良のBefore写真)を発注者立会で撮影し、「既存不良との区分表」を作成しておきます。この区分表があれば、工事中に発見された不良が既存由来か新規施工由来かを客観的に判断できます。既存不良の是正範囲は、見積時点で明確化しておくのが基本です。
Q8|設計変更による是正と、設計者の個人的な指摘を区別する基準は?
契約書・特記仕様書・発注時仕様書の記載が基準です。記載範囲内で発注者側の都合(嗜好・運用変更)による是正は、追加変更契約の対象となりえます。記載が曖昧な場合は、設計監理者と協議し、変更図面・変更指示書・変更見積の書面化を進めます。「言った言わない」を避けるため、打合せ簿の運用(参考:議事録の書き方)を徹底します。
Q9|是正の再発防止データはどう活用しますか?
工種別・下請別・原因区分別に是正件数を集計し、月次または四半期の品質管理会議で振り返ります。再発が多い工種・下請には、作業手順書の見直し・事前協議の強化・サンプル承認の前倒しを実施。再発防止データは、QC工程表(参考:QC工程表の作り方)や品質管理チェックリスト(参考:品質管理 チェック項目)の改訂に反映します。
Q10|是正記録はどのくらいの期間保存すればよいですか?
書類種別と契約条件で異なるため、個別に確認が必要です。公共工事は発注者ごとの特記仕様書・契約条件で保存年数が指定されます。民間工事は契約書・工事約款で定めた保証期間と、法令上の責任期間(民法の契約不適合責任、住宅については品確法の瑕疵担保責任等)を踏まえて、社内の工事書類保存規程で書類種別ごとに決めるのが基本です。電子保存の場合は、電子帳簿保存法の真実性・可視性・検索性の要件を満たす方式で保管します。
Q11|是正・手直し管理のスキルは評価につながりますか?
是正・手直し管理は、現場監督の品質管理力・コミュニケーション力・法令知識が可視化される領域です。元請の工事主任・現場代理人への昇格、所長候補への評価、転職市場での1級施工管理技士の価値向上に結びつく場面があります。経営事項審査(経審)の技術力評点でも、1級施工管理技士は監理技術者として加点されるため、是正対応で設計者・発注者と協議できる技術力は中長期のキャリアに効きます。
Q12|是正・手直しの実務経験は転職でどう伝えればよいですか?
職務経歴書では「指摘リストの運用」「是正プロセスの管理」「完了記録の整備」の3つを具体的な数字(件数・期間・工事規模)で記載するのが基本です。例として「新築マンション現場(約50戸・工期18ヶ月)で、発注者立会検査250件の指摘を90日で全件完了確認まで到達」等。工種別の是正経験は、面接で「どう改善したか」の問いにつながるため、再発防止の取り組みをストーリーで用意しておきます。企業ごとに求められる是正対応の経験や工事区分は、求人情報からも参考にできます。
まとめ
是正・手直し管理は、指摘リスト・是正プロセス・完了記録の3点を軸に、工程と並走させて完結させる実務です。
- 指摘リスト7項目:発生場所・工種・指摘内容・写真・期限・担当・ステータスを一元化
- 是正プロセス6ステップ:受領→現地確認→原因究明→方針決定→実施→完了確認
- 完了記録:Before/中間/After写真の3点セットと、書類の電子保存要件(真実性・可視性・検索性)を満たす形で保管。保存年数は契約書・特記仕様書・社内規程で書類種別ごとに個別に設定
- 費用負担:契約書・特記仕様書・民法契約不適合責任・建設業法第19条の3・4で切り分け
- 工程との両立:中間検査の組み込みと見切り判断の書面合意で、竣工検査前のラッシュを分散
- 工種別対応:建築・土木・設備・内装で頻発箇所と対応の重さが異なる
是正・手直しの対応力は、1級施工管理技士の技術力評価・経営事項審査の加点・工事主任や所長候補への昇格・転職市場での評価にも波及する領域です。関連する施工管理の求人はタテルートの施工管理・建設業の求人一覧 で確認できます。
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