塩化物量の測定とは、生コンクリート(レディーミクストコンクリート)の受入検査で、コンクリート中の塩化物イオン量が定められた上限値以下に収まっているかをJIS A 5308およびJIS A 1144に基づいて確認する品質管理業務で、鉄筋腐食や構造物の早期劣化を防ぐ耐久性設計の入口となる工程です。原則は0.30kg/m³以下(購入者承認時は0.60kg/m³以下まで)で、荷卸し地点で1日2回以上の測定が求められます。
「基準値は覚えたけれど、カンタブと電位差滴定はどう使い分ける?」「塩化物量が超過したときは全数返品なのか?」「アルカリ骨材反応(ASR)の3対策と塩化物量測定は別物か、それとも一体で管理するのか?」——現場に立つ若手施工管理者や品質管理担当者からは、こうした具体的な運用の質問が絶えません。
本記事では、塩化物量測定の基準値と法令位置づけ、測定方法4種類の使い分け、受入検査の実務フロー、アルカリ骨材反応抑制3対策との一体運用、超過時の是正手順まで、公的通達・JIS規格・国土交通省の実施要領に沿って施工管理者の実務目線で整理します。
- 先に結論
- この記事で分かること
- 塩化物量測定とは|JIS A 5308の位置づけと目的
- 塩化物イオン量の基準|0.30kg/m³と例外0.60kg/m³
- 塩化物量の測定方法|JIS A 1144とカンタブ・イオン電極
- 受入検査の実務フロー|荷卸し地点で午前午後2回以上
- 塩化物量が超過したときの是正|返品判定と再試験
- アルカリ骨材反応(ASR)と抑制対策の全体像
- アルカリ骨材反応抑制の3対策|アルカリ総量規制・混合セメント・無害骨材
- 塩化物量とアルカリ骨材反応が重なる耐久性設計
- 施工管理者のキャリアと塩化物量測定
- よくある失敗と対策|現場で起きる5パターン
- よくある質問(FAQ)
- Q1.塩化物イオン量の上限はいくつですか
- Q2.測定は1日何回すればいいですか
- Q3.カンタブと電位差滴定はどう使い分けますか
- Q4.塩化物量が超過したらどうしますか
- Q5.アルカリ骨材反応(ASR)の3つの抑制対策とは何ですか
- Q6.塩化物量とアルカリ骨材反応は別々に管理するのですか
- Q7.低アルカリセメントと混合セメントはどう選びますか
- Q8.コンクリート技士とコンクリート主任技士はどちらを取ればいいですか
- Q9.塩化物量測定は誰が実施すべきですか
- Q10.測定機器はどのように管理しますか
- Q11.海砂を使う地域の追加注意点はありますか
- Q12.担い手3法や2024年問題は塩化物量測定にどう影響しますか
- Q13.塩化物量測定で年収は上がりますか
- まとめ
先に結論
- コンクリート中の塩化物イオン量の上限は JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)で0.30kg/m³(購入者の承認がある場合は0.60kg/m³以下)と定められている(出典:日本産業標準調査会 JIS検索 JIS A 5308、確認:2026年9月)
- 測定は荷卸し地点で行い、土木構造物の実施要領では打設が午前・午後にまたがる場合1日2回以上(午前・午後打設前)が基本。建築工事や個別仕様書で頻度が異なる場合はそちらを優先する(出典:建設省技調発第286号「コンクリート中の塩化物総量規制(土木構造物)実施要領」1986年6月2日通達)
- 測定方法はJIS A 1144(フレッシュコンクリート中の水の塩化物イオン濃度試験方法)を基準に、現場ではカンタブ(試験紙法)・イオン電極法・電位差滴定法などの精度確認済み器具で実施
- 塩化物量測定とアルカリ骨材反応(ASR)抑制対策は耐久性設計の車の両輪。ASR抑制は「①アルカリ総量規制(Na₂Oeq換算3.0kg/m³以下)」「②抑制効果のある混合セメント使用」「③無害と認められた骨材使用」のいずれかを選択
- 塩化物量超過時は受入不可として扱い、返品・別用途への転用不可・監督員協議など、契約図書と発注者要領に従って判断するのが基本。目視だけで通さないことが実務のポイント
- 施工管理者にとって塩化物量測定は受入検査の必須項目のひとつであり、記録・写真・立会サインをセットで残す運用が第三者検査・監査への備えとなる
この記事で分かること
- 塩化物量測定の基準値0.30kg/m³と例外0.60kg/m³の使い分け
- 現場で使われる測定器具4種類の原理・特徴・使い分け(カンタブ/イオン電極/電位差滴定/モール法)
- 受入検査の実務フロー7ステップと1日2回以上測定の運用
- 塩化物量が超過したときの是正手順と返品判断
- アルカリ骨材反応(ASR)抑制3対策(アルカリ総量規制/混合セメント/無害骨材)の選び方
- 塩化物量測定に関連する資格(コンクリート技士・診断士・1級/2級土木・建築施工管理技士)
- 現場で起きやすい失敗5パターンと予防策
塩化物量測定とは|JIS A 5308の位置づけと目的
塩化物量測定とは、コンクリートに含まれる塩化物イオン(Cl⁻)の量が構造物の耐久性を損なわない範囲に収まっているかを、受入検査で確認する試験の総称です。塩化物イオンは鉄筋の不動態皮膜を破壊し、鉄筋腐食による膨張・かぶりコンクリートの剥離・構造物の早期劣化を引き起こす主要因のひとつです。
なぜ塩化物イオン量が問題になるか
コンクリート内部はpH12〜13の強アルカリ環境で、通常は鉄筋表面に不動態皮膜が形成され腐食は進みません。しかし、塩化物イオンが一定量以上侵入すると不動態皮膜が破壊され、酸素・水分と反応して鉄筋腐食が始まります。腐食した鉄筋は体積が膨張し、かぶりコンクリートに引張応力を与えてひび割れ・剥離を引き起こします。
JIS A 5308における位置づけ
JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」では、購入者と製造業者との受渡当事者間で行う品質検査項目として強度・スランプまたはスランプフロー・空気量・塩化物含有量が示されており、実務では荷卸し地点での受入検査として運用されています。塩化物イオン量の限度は0.30kg/m³以下で、購入者の承認がある場合には0.60kg/m³以下まで許容されるケースがあります(出典:日本産業標準調査会 JIS検索 JIS A 5308、確認:2026年9月)。
国土交通省の実施要領
土木構造物については、昭和61年6月2日 建設省技調発第286号「コンクリート中の塩化物総量規制(土木構造物)実施要領」により、鉄筋やPC鋼材を補強材として用いる構造物・工場製品に適用される塩化物量規制が定められました(出典:国土交通省 コンクリート中の塩化物総量規制実施要領)。この通達により、直轄事業では塩害による早期劣化を防止する塩害対策が全国的に運用されています。
品質管理全体の位置づけは品質管理チェック項目の実務ガイドにも整理しています。
塩化物イオン量の基準|0.30kg/m³と例外0.60kg/m³
塩化物量測定で最初に押さえるべきは、基準値の2階層構造です。「0.30kg/m³以下」が原則で、「0.60kg/m³以下」は購入者承認を条件とした例外扱いという整理を理解しないと、超過時の判断を誤ります。
基準値の2階層
| 適用区分 | 上限値 | 適用条件 |
|---|---|---|
| 原則 | 0.30kg/m³以下 | JIS A 5308で規定された標準の受入基準 |
| 例外 | 0.60kg/m³以下 | 購入者の承認がある場合に限り許容(設計・契約図書での明示が実務上のポイント) |
上限値は「フレッシュコンクリート中の水に含まれる塩化物イオン濃度から換算した、コンクリート1m³あたりの塩化物イオン量」で表されます。単位はkg/m³で、質量濃度ではなく体積あたりの質量として管理する点が現場では混同されやすいポイントです。
なぜ2階層なのか
例外の0.60kg/m³が設けられている背景には、無筋コンクリート・海砂を利用する地域事情・特定用途(打継部・グラウト用など)の存在があります。ただし、購入者承認が前提となるため、契約図書・仕様書・購入者との事前協議記録がない状態で0.60kg/m³基準を根拠に使うことはできません。実務では発注者・設計者・工事監理者の承認記録を必ず残す運用が基本です。
基準を上回った場合の位置づけ
塩化物イオン量は、鉄筋腐食に直結する項目です。目視で判別できず、超過を放置すると構造物の耐久性を大きく損なう恐れがあります。このため実務では、超過ロットは受入不可として扱い、返品・別用途への転用不可・監督員協議などを契約図書と発注者要領に従って判断するのが基本です。無筋コンクリートなど条件依存の運用は必ず監督員と協議し、コンクリート受入検査の記録は書面・写真・立会サインをセットで残します。詳細はコンクリート打設 施工管理の実務ガイドを参照してください。
塩化物量の測定方法|JIS A 1144とカンタブ・イオン電極
塩化物量測定は、JIS A 1144「フレッシュコンクリート中の水の塩化物イオン濃度試験方法」を基準に、現場では複数の測定原理を使った器具で実施されます。ここでは代表的な4方式を整理します。
測定方法の全体像
| 方式 | 原理 | 現場適用 | 精度と特徴 |
|---|---|---|---|
| 電位差滴定法 | 硝酸銀溶液で塩化物イオンを滴定し、電位差変化から終点を判定 | 中央試験室・第三者試験機関 | 高精度。基準値付近の判定に強い |
| イオン電極法 | 塩化物イオン選択電極で電位を測定し、濃度を換算 | 現場・試験室 | 精度が確認された測定器具として広く使用 |
| モール法(試験紙・カンタブ) | 硝酸銀・クロム酸カリウムを試薬にした呈色反応 | 現場(簡易) | ドライケミストリで簡便化。精度確認済み器具として運用 |
| クーロメトリック法 | 電量法で塩化物イオンの物質量を計測 | 中央試験室 | 高精度・迅速。設備投資が大きい |
カンタブ(試験紙法)の原理と現場運用
カンタブは、コンクリート中のブリーディング水を吸わせて反応させる試験紙型の器具です。基本原理はモール法(硝酸銀+クロム酸カリウムの呈色反応)で、ドライケミストリ技術で簡便化されています(出典:太平洋マテリアル カンタブ製品情報)。
- 荷卸し地点で試料採取後、試験紙を差し込むだけで数分〜10分程度で判定
- 水セメント比が低い(≒ブリーディングが少ない)配合では、絞り出し器具でブリーディング水を強制抽出するケースもある
- 現場で誰でも扱える簡便さから、受入検査の第一線で最も普及している方式
イオン電極法・電位差滴定法との使い分け
- 日常の受入検査=カンタブまたはイオン電極法で迅速に判定
- 基準値付近の疑義があるロット=中央試験室で電位差滴定法によりバックアップ確認
- 第三者検査・監査対応=電位差滴定法の記録を残す
現場では「毎回電位差滴定で回すのは非現実的」「カンタブは早いが精度が心配」という声もありますが、JIS A 5308は『精度が確認された塩化物含有量測定器具』での測定を認めているため、カンタブでも適切に運用すれば正式な受入検査記録として成立します(出典:JIS A 1144 フレッシュコンクリート中の水の塩化物イオン濃度試験方法)。
現場での測定器具全体像は施工管理者が使う測定器一覧の実務ガイドも参照してください。
受入検査の実務フロー|荷卸し地点で午前午後2回以上
塩化物量測定は、受入検査の一連の流れの中で「スランプ・空気量・温度」と並ぶ必須測定項目です。ここでは実務フローを7ステップで整理します。
実務フロー7ステップ
- 配車前確認:配合報告書・出荷伝票の予定塩化物イオン量を事前チェック
- 試料採取:荷卸し地点でJIS A 1115に準拠して試料採取(1台目・変更ロット・1日2回以上のタイミング)
- 試験実施:カンタブまたはイオン電極法で塩化物イオン量を測定
- 判定:基準値0.30kg/m³以下(承認時0.60kg/m³以下)と比較
- 記録作成:測定値・時刻・気温・生コン温度・立会者を検査野帳に記録
- 写真撮影:測定器の表示・試験紙の呈色・黒板(日時・工事名・立会)が同一フレームに入る構図
- 不合格時の是正:該当車返品/再試験/原因究明を購入者・製造者へ連絡
測定頻度の基準
建設省技調発第286号 実施要領では、コンクリート打設が午前と午後にまたがる場合は1日につき2回以上(午前・午後)打設前に測定することが基本と定められています(出典:国土交通省 コンクリート中の塩化物総量規制実施要領)。
- 打設が午前のみで完了する場合でも、日ごとに最低1回は測定
- 配合や工場が変更されたロットが混じる場合は、変更ロットごとに測定
- 特記仕様書で頻度が上乗せされている場合はそちらを優先
記録が第三者検査に耐える構図
以下の3点セットが揃わないと、後工程の中間検査・完了検査・監査で指摘対象になります。
- 測定値の書面記録(検査野帳・受入検査記録簿)
- 測定機器の表示・試験紙・出荷伝票の写真(黒板を必ず入れる)
- 立会者のサイン(現場代理人・監督員・生コン工場側の職員)
塩化物量が超過したときの是正|返品判定と再試験
塩化物量測定で基準値超過が確認された場合、実務での対応は原則として「該当ロット返品」です。ここでは判断フローと再試験の位置づけを整理します。
是正フロー5ステップ
- 測定機器の再確認:試験紙の有効期限・機器の校正状況・試料採取の妥当性を確認
- 再試験:別ロットで再測定を実施(1回の測定結果だけで判断しない配慮も現場では見られる)
- 判定:再試験でも基準値超過なら該当ロットを返品
- 原因究明:生コン工場との協議で、練混ぜ水・骨材(特に海砂利用時)・混和剤の原因を特定
- 記録・報告:不合格記録・是正措置報告書を購入者・監督員に提出
返品判断の実務ポイント
- 鉄筋腐食は目視で判別できず、超過を通すと構造物の耐久性を大きく損なうため、実務では返品が基本
- 返品分の打設予定・工程・後工程への影響を即座に評価し、必要なら打設中止・翌日リカバリを判断
- 無筋コンクリート(例:均しコンクリート・裏込め)の場合の運用は仕様書・監督員の判断による。無筋であれば塩化物イオンの影響は限定的だが、記録は残す
事前予防策
塩化物量超過を未然に防ぐには、以下の予防策が実務でよく採用されます。
- 海砂を使用する地域では、洗浄条件・骨材の塩化物イオン量の管理値を発注前に確認
- 練混ぜ水の塩化物イオン量(JIS A 5308附属書で規定)を工場側で管理
- 混和剤の塩化物含有量を発注前に確認
- 配合設計時に塩化物イオン量の予想値を発注者と共有
アルカリ骨材反応(ASR)と抑制対策の全体像
塩化物量測定と並ぶコンクリート耐久性管理の柱が、アルカリ骨材反応(ASR:Alkali-Silica Reaction)の抑制対策です。塩化物イオン侵入とアルカリ骨材反応は、コンクリート構造物の2大早期劣化要因として、車の両輪で管理する必要があります。
アルカリ骨材反応(ASR)とは
アルカリ骨材反応とは、骨材中の特定の反応性鉱物(オパール・クリストバライトなど)が、セメントペースト中のアルカリ(Na⁺・K⁺)と反応してアルカリシリカゲルを生成し、水分を吸って膨張することでコンクリートに亀甲状のひび割れを生じさせる現象です(出典:土木学会 アルカリ骨材反応)。
- 反応の完了までに数年〜数十年かかるため、打設直後に発見しにくい
- 亀甲状のひび割れ、コンクリート表面の白華、内部からの膨張圧が特徴
- 補修・補強のコストは新設の数倍〜十数倍になることがある
3つの抑制対策
JIS A 5308附属書および国土交通省「アルカリ骨材反応抑制対策(土木・建築共通)」(平成14年8月8日)では、以下3つの対策のいずれかを選択することが求められます(出典:国土交通省 アルカリ骨材反応抑制対策)。
| 対策 | 内容 | 実務での運用 |
|---|---|---|
| ①アルカリ総量規制 | コンクリート中のアルカリ総量をNa₂Oeq換算で3.0kg/m³以下に抑える | 低アルカリ形ポルトランドセメント使用が典型 |
| ②抑制効果のある混合セメント等の使用 | 高炉セメントB種・C種、フライアッシュセメントB種・C種などを使用 | 反応抑制効果が確認された混合材を活用 |
| ③無害と認められる骨材の使用 | JIS A 5308附属書7(化学法)または附属書8(モルタルバー法)で無害と判定された骨材を使用 | 骨材試験成績書の確認が必要 |
アルカリ総量規制の計算式
アルカリ総量規制を選択する場合は、以下の計算式でNa₂Oeq換算値を算出します。
Na₂Oeq(kg/m³) = セメント量 × セメントのNa₂Oeq含有率(%)÷ 100
例:単位セメント量320kg/m³・セメントのNa₂Oeq0.65%の場合、320 × 0.65 ÷ 100 = 2.08kg/m³ → 基準3.0kg/m³以下でクリア
アルカリ骨材反応抑制の3対策|アルカリ総量規制・混合セメント・無害骨材
抑制対策の3選択肢について、それぞれ実務でどう選び分けるかを整理します。
①アルカリ総量規制(低アルカリセメント)
- 低アルカリ形ポルトランドセメント(Na₂Oeq0.60%以下が典型)の使用が代表例
- コンクリート中のアルカリ総量をNa₂Oeq換算で3.0kg/m³以下に抑える
- 高単価となる場合が多いが、混合セメントが入手困難な地域や発注者仕様で普通ポルトランドセメント指定の場合に選択される
②混合セメントの使用
- 高炉セメントB種・C種(高炉スラグ40〜70%)
- フライアッシュセメントB種・C種(フライアッシュ15〜30%)
- 反応抑制効果が確認されており、土木構造物では最も採用されやすい選択肢
- 初期強度発現が遅い・湿潤養生期間が長い等の施工上の配慮が必要
③無害と認められた骨材の使用
- JIS A 5308附属書7「化学法」で無害判定された骨材
- JIS A 5308附属書8「モルタルバー法」で膨張率が基準以下と判定された骨材
- 骨材試験成績書の確認が実務ポイント。有効期限内であることを必ず確認
実務で選ぶときの判断軸
| 状況 | 推奨される選択肢 |
|---|---|
| 発注者仕様で混合セメント指定なし・入手容易 | ②混合セメントB種以上を優先 |
| 早期強度が必要な工事 | ①低アルカリセメント+アルカリ総量規制 |
| 骨材産地が明確・試験成績書が新しい | ③無害骨材の選択も可(試験成績書を必ず確認) |
| 特記仕様書で対策指定あり | 特記に従う(複数対策の重ね合わせもある) |
コンクリート打設全体の実務詳細はコンクリート打設 施工管理の実務ガイド、圧縮強度試験はコンクリート圧縮強度試験の実務、スランプ試験はスランプ試験のやり方、受入検査の品目別チェックリストは材料検査・受入検査のポイントに整理しています。
塩化物量とアルカリ骨材反応が重なる耐久性設計
塩化物量測定とアルカリ骨材反応抑制は、いずれもコンクリート構造物の耐久性(100年オーダー)に関わる耐久性設計項目です。この2つを別々に管理するのではなく、一体で運用する視点が施工管理者には求められます。
耐久性設計での位置づけ
- 塩害対策=塩化物イオン侵入の遮断:受入検査での塩化物イオン量管理+かぶり厚さ確保+表面被覆
- アルカリ骨材反応対策=抑制3対策の選択+施工時の水分管理
- 両者を同時に管理することで、耐久性設計上の主要リスクをカバーできる
施工管理者が担う役割
- 受入検査での測定と記録(塩化物イオン量・空気量・スランプ・温度)
- 配合報告書の事前確認(アルカリ量・骨材の種類・混和剤の塩化物含有量)
- かぶり厚さ検査での配筋確認(塩害・中性化対策)
- 監督員・発注者への報告(不合格時の即時報告・再発防止策)
担い手3法・2024年問題との接続(補足)
2024年問題(建設業の時間外労働上限規制/原則月45時間・年360時間、特別条項付き36協定でも年720時間、複数月平均80時間以下・単月100時間未満、月45時間超は年6回まで、違反企業には6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金/災害復旧・復興工事に一部特例あり/出典:厚生労働省 時間外労働の上限規制)と、2025年12月12日に全面施行された第三次・担い手3法(出典:国土交通省 第三次・担い手3法)のもとで、品質確認業務は「1車ごとに立ち会って測定・記録・写真を残す」性質から、配車計画で時間外を抑えつつ正社員配置による安定運用が広がる傾向があります。
施工管理者のキャリアと塩化物量測定
塩化物量測定を含む受入検査業務は、施工管理者のキャリア形成上どのような位置づけになるかを整理します。
経験年数別の関わり方
| キャリア層 | 塩化物量測定への関わり方 |
|---|---|
| 1〜3年目 | 受入検査の立会・測定・記録を主担当。品質管理の基礎を身につける |
| 3〜7年目 | 品質管理計画書の策定・受入検査項目の設計・原因究明担当 |
| 所長候補〜所長 | 品質全般のマネジメント・監督員/発注者との協議・不具合是正の意思決定 |
| 発注者側・公務員技術職 | 監督員として立会・確認・是正指示 |
関連資格
- 1級・2級土木施工管理技士(試験実施:全国建設研修センター)
- 1級・2級建築施工管理技士(試験実施:建設業振興基金)
- コンクリート技士・コンクリート主任技士(試験実施:日本コンクリート工学会)
- コンクリート診断士(既存構造物の劣化診断向け)
1級施工管理技士は監理技術者になれる代表的な国家資格(元請工事のうち下請契約合計が一定額以上となる現場で配置義務。監理技術者資格者証と講習修了証を保有し、工事種別・所属・監理技術者講習の受講状況等の運用条件と併せて判定される/詳細は国土交通省 監理技術者制度運用マニュアル最新版で確認)。2級は主任技術者として、すべての工事現場の配置義務に対応する国家資格です。
なお、2024年度から施工管理技術検定の受検資格が改正されており、第一次検定は年齢要件を中心に受検しやすくなっています。第二次検定の実務経験要件など、詳細は試験機関の最新案内で確認してください。
キャリアパスの整理は施工管理のキャリアパスと年収の上げ方、年収を上げる方法は施工管理の年収を上げる5戦略、発注者側転職は施工管理から発注者側デベロッパー転職を参照してください。
キャリア層別の年収レンジ・独自求人観測は施工管理の年収を上げる5戦略や施工管理のキャリアパスに整理しているため、本記事では塩化物量測定の実務にフォーカスします。
よくある失敗と対策|現場で起きる5パターン
塩化物量測定の実務で起きやすい失敗5パターンと予防策を整理します。
失敗1|目視だけで通してしまう
- 状況:「見慣れているから」で試料採取をスキップし、塩化物イオン量測定を省略する
- リスク:塩化物イオン超過を見逃すと、鉄筋腐食による構造物の早期劣化が発生する可能性
- 予防策:ロットごとに必ず器具測定を行い、写真・記録・立会サインをセットで残す
失敗2|1日1回で済ませてしまう
- 状況:午前と午後にまたがる打設で、午前のみ測定して午後を省略
- リスク:建設省技調発第286号 実施要領違反となり、監督員から是正指示・記録改ざんの疑いを持たれる
- 予防策:打設が午前・午後にまたがる日は必ず2回以上測定する運用ルールを事前に周知
失敗3|試験紙の有効期限切れ
- 状況:カンタブの有効期限を確認せず使用し、呈色反応が正しく出ない
- リスク:測定値が信頼できず、再試験で工程遅延
- 予防策:試験紙は開封日・有効期限をラベル管理し、月次で在庫確認
失敗4|承認記録なしで0.60kg/m³基準を運用
- 状況:購入者承認記録がないまま、慣例で0.60kg/m³を基準として運用
- リスク:監査・第三者検査で「承認記録なし」を指摘され、記録改ざんの疑いに発展
- 予防策:0.60kg/m³基準を使う場合は、発注者・工事監理者からの承認文書を検査野帳と一緒に保管
失敗5|アルカリ骨材反応対策の記録漏れ
- 状況:塩化物量測定は記録しているが、アルカリ骨材反応抑制対策の選択理由・骨材試験成績書の保管が漏れている
- リスク:数年後にASRによるひび割れが発生した際、責任範囲の切り分けができない
- 予防策:抑制対策3種のうちどれを選択したか・骨材試験成績書・混合セメント種類を配合報告書とセットで永年保存
品質管理の全体像は品質管理チェック項目の実務ガイド、施工要領書の書き方は施工要領書 書き方の実務にまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q1.塩化物イオン量の上限はいくつですか
JIS A 5308では、塩化物イオン量の限度を0.30kg/m³以下としています。ただし、購入者の承認がある場合には0.60kg/m³以下まで許容されている例もあります。鉄筋の腐食に直結するため、超過時は原則として返品対応が基本です。
Q2.測定は1日何回すればいいですか
建設省技調発第286号「コンクリート中の塩化物総量規制(土木構造物)実施要領」では、コンクリート打設が午前と午後にまたがる場合は1日につき2回以上(午前・午後)打設前に測定するとされています。打設が午前のみで完了する場合でも、日ごとに最低1回は測定するのが実務の基本です。
Q3.カンタブと電位差滴定はどう使い分けますか
日常の受入検査ではカンタブまたはイオン電極法で迅速に判定し、基準値付近の疑義があるロットや第三者検査・監査対応では、中央試験室で電位差滴定法によりバックアップ確認を行うのが実務の使い分けです。JIS A 5308は「精度が確認された塩化物含有量測定器具」での測定を認めているため、カンタブでも適切な運用で正式な受入検査記録として成立します。
Q4.塩化物量が超過したらどうしますか
原則は該当ロットの返品です。実務では以下の手順で対応します。測定機器の再確認 → 別ロットで再試験 → 再試験でも超過なら返品 → 生コン工場と原因究明 → 不合格記録・是正措置報告書を購入者・監督員に提出。無筋コンクリート(均しコンクリート・裏込めなど)は仕様書・監督員の判断による例外運用がある場合がありますが、記録は必ず残します。
Q5.アルカリ骨材反応(ASR)の3つの抑制対策とは何ですか
JIS A 5308附属書と国土交通省「アルカリ骨材反応抑制対策(土木・建築共通)」(平成14年8月8日)で規定された3対策です。①アルカリ総量規制(Na₂Oeq換算で3.0kg/m³以下)、②抑制効果のある混合セメント等の使用(高炉セメントB種・C種、フライアッシュセメントB種・C種など)、③無害と認められる骨材の使用(JIS A 5308附属書7・8で無害判定)のいずれかを選択します。
Q6.塩化物量とアルカリ骨材反応は別々に管理するのですか
耐久性設計上の2大早期劣化要因として、一体で管理するのが実務の基本です。塩化物イオン侵入の遮断(受入検査での塩化物イオン量管理+かぶり厚さ確保+表面被覆)と、アルカリ骨材反応抑制3対策の選択+施工時の水分管理を、配合報告書・品質管理計画書の段階から両輪で組み込みます。
Q7.低アルカリセメントと混合セメントはどう選びますか
早期強度が必要な工事や発注者仕様で普通ポルトランドセメントが指定される場合は、低アルカリ形ポルトランドセメント+アルカリ総量規制の組み合わせが選ばれることが多い傾向です。一般的な土木構造物では、高炉セメントB種・C種やフライアッシュセメントB種・C種など反応抑制効果のある混合セメントが採用される場合が多い傾向があります。
Q8.コンクリート技士とコンクリート主任技士はどちらを取ればいいですか
現場で受入検査・品質管理を主担当する段階(3〜7年目)ではコンクリート技士から取得するのが実務でよく見られる順序です。品質管理計画書の策定や監督員/発注者との協議を主導する段階(所長候補)では、コンクリート主任技士やコンクリート診断士(既存構造物の劣化診断向け)が選択肢に入ります。試験は日本コンクリート工学会が実施しています。
Q9.塩化物量測定は誰が実施すべきですか
購入者側(元請の施工管理者)が荷卸し地点で実施するのが原則です。監督員(発注者側)が立ち会うケースも多く、生コン工場側の職員が同席することもあります。実務では現場代理人・監督員・生コン工場職員の3者立会で測定・記録・写真の3点セットを揃えるのが第三者検査に耐える構図です。
Q10.測定機器はどのように管理しますか
カンタブなどの試験紙は開封日・有効期限をラベル管理し、月次で在庫確認を行うのが実務の基本です。イオン電極や電位差滴定装置は定期校正の記録を残します。校正の頻度・方法はメーカーの取扱説明書に従い、社内の品質管理規程で運用ルールを明文化する運用が広がっています。
Q11.海砂を使う地域の追加注意点はありますか
海砂を使用する地域では、洗浄条件・骨材の塩化物イオン量の管理値を発注前に確認するのが実務の予防策です。JIS A 5308附属書で規定された骨材の塩化物イオン量(原則0.04%以下)を超えないよう、生コン工場側で管理されているかを確認します。工場側の骨材試験成績書・洗浄記録の提示を求める運用も見られます。
Q12.担い手3法や2024年問題は塩化物量測定にどう影響しますか
担い手3法(第三次改正)は2025年12月12日に全面施行されたため、労務費の基準・処遇改善、資材高騰時の労務費しわ寄せ防止、働き方改革・生産性向上の運用は進行中です。塩化物量測定のような品質確認業務は、正社員配置による安定運用が広がる傾向があります。2024年問題(時間外労働上限規制)については、品質確認業務が「1車ごとに立ち会う」性質のため、配車計画で時間外を抑える現場運用が求められます。労働時間の実態は施工管理の残業時間ガイドにも整理しています。
Q13.塩化物量測定で年収は上がりますか
塩化物量測定単独で年収が上がるわけではありませんが、コンクリート技士・主任技士・診断士や1級土木/建築施工管理技士を保有し品質管理を主導できると、監理技術者ポジション・所長候補ポジションへのキャリアパスが開けます。詳細は施工管理の年収を上げる5戦略に整理しています。
まとめ
塩化物量測定は、生コンクリートの受入検査で塩化物イオン量が0.30kg/m³以下(承認時0.60kg/m³以下)に収まっているかをJIS A 5308およびJIS A 1144に基づいて確認する、鉄筋腐食・構造物早期劣化を防ぐ耐久性設計の入口となる工程です。
- 塩化物イオン量の上限は0.30kg/m³(購入者承認時0.60kg/m³)、荷卸し地点で1日2回以上測定
- 測定方法はJIS A 1144を基準に、カンタブ・イオン電極法・電位差滴定法を使い分ける
- 超過ロットは原則返品。目視で判別できず放置は構造物の耐久性に直結
- アルカリ骨材反応抑制3対策(アルカリ総量規制/混合セメント/無害骨材)と一体で運用
- 施工管理者は受入検査の測定・記録・写真・立会サインの3点セットで第三者検査に耐える構図を作る
- コンクリート技士・診断士・1級/2級土木・建築施工管理技士が関連資格として位置づく
- 担い手3法は2025年12月12日に全面施行済み、2024年問題は配車計画で時間外を抑える運用が求められる
塩化物量測定は「地味な確認業務」に見えて、構造物の耐久性を100年オーダーで左右する耐久性設計の入口です。若手施工管理者から所長候補まで、キャリアの各段階で関わり方が変わる基幹業務でもあります。キャリア設計や資格取得の順序でお悩みの方は、タテルートの無料キャリア相談LINE という情報整理の場を活用する選択肢があります。在職中の判断材料として、業界動向・年収レンジ・求人票の読み解きなどをご相談いただけます。
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