スランプ試験とは、生コンクリート(フレッシュコンクリート)の軟らかさ(ワーカビリティの指標)をスランプ値として数値化する試験で、コンクリートの受入検査の中核項目に位置づけられています。試験方法は日本産業規格「JIS A 1101 コンクリートのスランプ試験方法」に定められており、施工管理者は打設現場での立会・記録・不合格時の判断まで責任を負います。
現場でよくある悩みは「手順書はあるが呼び強度ごとの許容差が曖昧」「スランプフロー試験との使い分けが分からない」「不合格になったときの再試験ルールを説明できない」の3つです。本記事は、施工管理職・現場代理人・品質管理担当・生コン受入担当を対象に、規格(JIS A 1101・JIS A 1150・JIS A 5308)の一次情報に沿って手順・許容差・受入検査の実務まで整理します。
読了後には、スランプコーンへの3層詰め・突き数・3分ルール・引き上げの垂直度といった作業上の勘所と、呼び強度別の許容差、スランプフロー試験の適用範囲、受入検査の頻度基準(150m³ルール)まで、その日から使える形で持ち帰れます。
先に結論
- スランプ試験のやり方は JIS A 1101 に手順・器具・寸法が規定されており、スランプコーン(上端内径100mm・下端内径200mm・高さ300mm)にコンクリートを3層に詰め、各層25回突いてコーンを鉛直に引き上げ、頂部からの下がり量(スランプ値)を 0.5cm単位 で読み取ります。
- スランプコーンにコンクリートを詰め始めてから上面をならし終わるまでは 3分以内 に完了する必要があります(JIS A 1101)。
- スランプの許容差は JIS A 5308 レディーミクストコンクリート(2019年版)で規定され、代表例としてスランプ2.5cmは±1cm、5〜6.5cmは±1.5cm、8〜18cmは±2.5cm、21cmは±1.5cmです(本記事執筆時点の規格値。実際の適用は最新版と特記仕様書で必ず確認)。
- 高強度コンクリート・高流動コンクリート等でスランプが大きく成立しない場合は JIS A 1150 コンクリートのスランプフロー試験方法 に切り替え、直交2方向の直径を1mm単位で測定します。
- 受入検査の頻度は「1日の打設量150m³ごとに1回」または「発注者・特記仕様書の定め」に従うのが一般的で、スランプ・空気量・塩化物含有量・コンクリート温度の4項目を組み合わせて実施します(詳細は現場の特記仕様書と各発注者の共通仕様書で確認)。
この記事で分かること
- スランプ試験の定義と、施工管理者にとっての役割(受入検査の位置づけ)
- JIS A 1101に規定されたスランプコーンの寸法・突き棒仕様・試験手順
- スランプの許容差(JIS A 5308)とスランプフロー試験の許容差(JIS A 1150)の違い
- 現場での受入検査の頻度・タイミング・記録の基本ルール
- よくある失敗(3分ルール超過・突き数の過不足・スランプ板の水平ズレ)と対策
- 土木・建築・工種別の運用ポイントと、施工管理技士のキャリアとの接続
スランプ試験とは|目的とワーカビリティの位置づけ
スランプ試験とは、フレッシュコンクリートの軟らかさ・変形しやすさを、スランプコーンから抜いたときの下がり量(スランプ値・単位cm)で数値化する試験です。ワーカビリティ(打設・締固め・仕上げのしやすさを含む総合的な作業性)を定量化する代表的な指標で、レディーミクストコンクリート(生コン)の受入検査に必ず含まれます。
現場での用途は3つに整理できます。1つ目は 配合設計どおりのコンクリートが搬入されたか の受入確認、2つ目は 打設面の充填性・締固めやすさ の判断材料、3つ目は 不合格時の返品・再試験 の根拠となる客観データとしての活用です。
スランプ値の定義とワーカビリティ
スランプ値は、スランプコーン(高さ300mm)にコンクリートを詰めて引き上げた後、頂部が元位置からどれだけ下がったかを測る値です。値が大きいほど軟らかく流動性が高く、値が小さいほど硬く(硬練り)締固めに大きなエネルギーが必要になります。
スランプ値だけでワーカビリティのすべてを把握することはできず、材料分離抵抗性・保水性・仕上げやすさは目視観察を組み合わせて評価します。監督員・現場代理人は、スランプ値の数値管理と目視評価をセットで運用するのが実務の基本です。
スランプ試験とスランプフロー試験の使い分け
一般的な普通コンクリート・軽量コンクリートは JIS A 1101 のスランプ試験で管理します。一方、スランプ試験ではコーンを抜いた瞬間に流れ広がってしまう 高強度コンクリート・高流動コンクリート・水中不分離性コンクリート などは、コーンを抜いた後の広がり(フロー直径)を測る JIS A 1150 のスランプフロー試験で管理します。
判別の目安は「呼び強度」と「配合の特殊性」の2軸です。配合計画書・特記仕様書に「スランプフロー管理」と明記されている場合は、JIS A 1150に従います。
関連規格の全体像
スランプ試験・スランプフロー試験・受入検査に関わる主要規格は以下のとおりです。
| 規格番号 | 規格名 | 役割 |
|---|---|---|
| JIS A 1101 | コンクリートのスランプ試験方法 | スランプ試験の手順・器具・許容差 |
| JIS A 1150 | コンクリートのスランプフロー試験方法 | 高強度・高流動コンクリートのフロー測定 |
| JIS A 5308 | レディーミクストコンクリート | 呼び強度・配合・スランプ許容差の規定 |
| JIS A 1115 | フレッシュコンクリートの試料採取方法 | 試験に用いる試料の代表性確保 |
| JIS A 1116 | フレッシュコンクリートの単位容積質量試験方法 | 空気量計算などの補助試験 |
| JIS A 1128 | フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法 | 受入検査の空気量測定 |
規格番号は本記事執筆時点で有効なものを示していますが、規格は定期的に改正されるため、実務では 最新版(現行版) を日本規格協会(JSA)やkikakurui.comで必ず確認してください。
スランプ試験の使用器具と準備
JIS A 1101では、試験に用いる器具の材質・寸法・精度を細かく規定しています。器具が仕様を満たさないと測定値そのものが不正確になり、後工程での再試験・返品の根拠にも使えなくなるため、器具管理は品質管理の起点になります。
スランプコーン(寸法・材質)
スランプコーンは以下の仕様で規定されています(出典:JIS A 1101:2020)。
| 項目 | 規定値 |
|---|---|
| 上端内径 | 100mm |
| 下端内径 | 200mm |
| 高さ | 300mm |
| 板厚 | 5mm以上の金属製 |
| 内面 | なめらか(コンクリートが付着しにくい状態) |
コーンの内面が摩耗・変形していると、コンクリートの流れ方に偏りが出て測定値が変わります。受入検査の直前に、内面・上下端の平面度・突起の有無を目視点検 するのが実務のルーティンです。
突き棒・スランプ板・その他の器具
- 突き棒:直径16mm・長さ500〜600mmの鋼または金属製丸棒で、先端は半球状(JIS A 1101)
- スランプ板:金属製の平面板で、コーンを載せた状態で水平を保てるサイズが必要
- ノギスまたはメジャー:スランプ値を 0.5cm単位 で読み取れるもの
- ストップウォッチ:3分ルールの管理用
スランプ板は現場で使用するうちに歪みが出ることがあります。前日または当日の始業前に 水平器で板の水平を確認 し、必要に応じて水平を復元してから使うのが基本です。
試料の採取方法(JIS A 1115準拠)
試験の入口となる試料採取は JIS A 1115 に規定があります。ミキサー車のシュートから排出される中間段階の生コンを、はじめの1/4・最後の1/4を除いて採取するのが原則です。同一運搬車から採取した試料をよく混ぜ合わせて代表試料 としてから試験に用います。
シュートの最初の排出は水セメント比が高くなりがちで、最後の排出は骨材が偏りがちなため、中間の均質な部分から採るのが「代表性の確保」の要点です。
スランプ試験のやり方(手順を分解して解説)
JIS A 1101のスランプ試験の手順を分解すると、以下の7ステップに整理できます。
手順の全体像(7ステップ)
- スランプ板を水平な位置に据え、内面を清潔にする
- スランプコーンを スランプ板の中央 に置き、コーンが動かないよう脚踏み等で固定する
- 試料を 3層 に詰め、各層の高さは底面から順に 約65mm・約155mm・上端(300mm) を目安とする
- 各層を突き棒で 25回 ずつ均等に突く(突き棒の先端が下の層に達しないようにする)
- 最上層を突いた後、コンクリートを上端で こて等でならす
- スランプコーンを 鉛直に、静かに、途中で止めずに一気に引き上げる(引き上げに要する時間は概ね2〜3秒)
- 下がった頂部の中心と、元のコーン頂部(300mm位置)との 差をノギスまたはメジャーで0.5cm単位 で読み取る
一連の作業は コンクリートを詰め始めてから上面をならし終わるまで3分以内 で完了させることが規格で定められています。3分を超えるとコンクリート内部の状態が試料採取時と乖離し、測定値が実配合を代表しなくなります。
3層詰めの詳細と突き数
3層に詰めるときの各層の高さは、コンクリートを詰めたあとの押し込み前の状態で 底面から順に約65mm・約155mm・上端まで です。突き棒での突き数は各層 25回 が原則で、突き棒の先端は その層より下の層に到達させない のが規格の趣旨です。
スランプが大きくて突きすぎによる材料分離のおそれがある場合は、規格上、突き数を減らすことができる と定められています。ただし、突き数を減らす判断は現場代理人または品質管理担当の合意のうえで行い、記録に残す運用が実務では望まれます。
スランプ値の読み取り
スランプコーンを引き上げた後、下がったコンクリート頂部の 中央 を基準に、元のコーン頂部(300mm位置)との差を測ります。読み取り単位は 0.5cm です。斜めに崩れた場合(せん断崩壊・崩壊崩壊)は再試験、崩れの形状は記録欄に残します。
スランプ試験の許容差と判定基準(JIS A 5308)
スランプ試験の合否判定は、JIS A 1101ではなく JIS A 5308 レディーミクストコンクリート の許容差に照らして行います。呼び強度・スランプ区分ごとに許容差が異なる点が実務での注意点です。
呼びのスランプ別・許容差
代表的な許容差は以下のとおりです(出典:JIS A 5308:2019。実際の適用値は最新版と特記仕様書で必ず確認)。
| 呼びのスランプ(cm) | 許容差(cm) |
|---|---|
| 2.5 | ±1.0 |
| 5・6.5 | ±1.5 |
| 8以上18以下 | ±2.5 |
| 21 | ±1.5 |
たとえば呼び強度24-18-20N(スランプ18cm)の生コンなら、測定値が 15.5〜20.5cm の範囲に収まれば合格。呼び強度36-21-20N(スランプ21cm)なら 19.5〜22.5cm の範囲が合格となります。
呼び強度・スランプ・粗骨材の最大寸法の3要素の組み合わせ次第で許容差が変わるため、呼び強度と許容差の一覧を検査シートに事前に印字 しておくのが現場での定着策です。
不合格時の再試験と判定の考え方
スランプ試験で許容差を超えた場合、JIS A 5308では原則として 同一運搬車から再試料を採り、再試験を実施 する運用です。再試験でも許容差を超えた場合は不合格となり、荷降ろしを行わずに返品するのが一般的な扱いです。
判定は現場代理人・監督員・生コン工場・レディーミクストコンクリート製造業者の合意のもとで進めます。発注者の共通仕様書・特記仕様書に「1度でも超えたら再試験なし」等の特別ルール がある場合はそちらが優先されるため、着工前の受入検査要領で判定フローを確定しておくことが重要です。
スランプ試験の限界と補助試験
スランプ値だけでは、材料分離抵抗性・保水性・仕上げ性の判断ができません。以下の補助的な観察・試験をセットで運用します。
- 目視観察:ブリーディング(余剰水の浮き上がり)の有無、粗骨材の分離、モルタルのまとまり
- 空気量:JIS A 1128の圧力法で測定(許容差は±1.5%が代表例。詳細はJIS A 5308最新版で確認)
- 塩化物含有量:JIS A 5308で 0.30kg/m³以下 が原則(購入者の承認がある場合は0.60kg/m³以下まで可)
- コンクリート温度:現場・特記仕様書の温度管理範囲(例:暑中コンクリートで35℃以下等)
品質管理全般の実務フレームは品質管理チェック項目の実務ガイドにも整理しています。
スランプフロー試験のやり方(JIS A 1150)
スランプ試験で流れ広がってしまう高流動コンクリート・高強度コンクリート・水中不分離性コンクリート等は、JIS A 1150 コンクリートのスランプフロー試験方法 で管理します。試験の目的は「広がったコンクリートの直径」を測ることで、単位はcmです。
スランプフロー試験の対象と条件
JIS A 1150は、粗骨材の最大寸法が 40mm以下 のフレッシュコンクリートを対象とし、以下の配合で採用されるのが代表的です。
- 高強度コンクリート(呼び強度が高く、スランプフロー管理が指定されるもの)
- 高流動コンクリート(自己充填性を要求する構造物・複雑形状の型枠)
- 水中不分離性コンクリート(水中打設用の特殊配合)
配合計画書または特記仕様書に「スランプフロー」と管理項目が明示されている場合は、JIS A 1150を採用します。
手順のポイント
スランプコーンにコンクリートを詰め、上面を コーン上端に合わせてならしたのち、直ちに鉛直方向に連続してコーンを引き上げます。高強度・高流動コンクリートは締固めをしない 一層詰め または 3層各5回突き の運用が規格に規定されています。
コーンを引き上げた後、広がったコンクリートの 直交する2方向の直径を1mm単位 で測り、その平均値をスランプフロー値とします。50cmフロー到達時間(T50)や、目視での骨材分離の有無も併せて記録するのが実務です。
許容差と管理値
スランプフローの許容差はJIS A 5308の高流動配合区分・特記仕様書等で規定されます。代表的な運用として、指定値50cm・55cm・60cmに対して ±7.5cm前後 の許容差を採る現場が多く見られますが、指定値・許容差は必ず配合計画書と特記仕様書で確認 します。管理値と規格値を混同すると受入検査の判定を誤るため注意が必要です。
構造体としての強度確認は別工程で、コンクリート圧縮強度試験の解説で扱う圧縮強度試験(JIS A 1108)と組み合わせて品質を担保します。
現場での受入検査の実務
スランプ試験は、レディーミクストコンクリートの受入検査における中核項目として位置づけられ、他の3項目(空気量・塩化物含有量・コンクリート温度)と組み合わせて実施します。実務では 頻度・タイミング・記録 の3点を仕組み化することが、監査対応と再発防止の両方に効いてきます。
受入検査の4項目と検査タイミング
一般的な受入検査は以下の4項目を1セットとして扱います(各項目の詳細は材料検査・受入検査ポイントを参照)。
| 項目 | 準拠規格 | 代表的な管理値 |
|---|---|---|
| スランプ | JIS A 1101 | 呼び値±1.0〜±2.5cm(JIS A 5308) |
| 空気量 | JIS A 1128(圧力法)ほか | 呼び値±1.5%(JIS A 5308代表例) |
| 塩化物含有量 | JIS A 1144 等 | 0.30kg/m³以下(承認時0.60kg/m³以下) |
| コンクリート温度 | 現場計測 | 特記仕様書・暑中/寒中コンクリート指針 |
タイミングは 打設開始前 に第1回、以降は打設の進行に合わせて実施します。荷降ろし直前の運搬車から試料を採るのが原則で、シュートの中間排出から代表試料を確保する運用です。
検査頻度(150m³ルールほか)
代表的な頻度基準は以下のとおりです。ただし 発注者の共通仕様書・特記仕様書 で頻度が上書きされる場合が多いため、着工前に受入検査要領を確定させてから運用します。
- 1日の打設量が 150m³以下:1回以上
- 1日の打設量が 150m³を超える:おおむね 午前1回・午後1回 の2回以上
- 打設箇所・使用配合が変わるつど 追加で実施
- 異常が疑われた運搬車:都度追加
土木工事共通仕様書(国土交通省や各地方整備局の共通仕様書)や、日本建築学会 建築工事標準仕様書・同解説(JASS 5)でも、受入検査の頻度・記録・不合格時の対応が定められています。JASS 5は建築、共通仕様書は土木 と使い分けます。
記録・写真管理と検査シート
検査結果は「レディーミクストコンクリート納入書」「受入検査記録」「写真台帳」の3点セットで残します。写真は スランプ値の読み取り・器具の状態・運搬車ナンバー・ミキサー車到着時刻 が読み取れるように撮影するのが基本です。
近年は電子小黒板・タブレット計測・AI画像解析を活用した記録DXが普及し、受入検査の負荷軽減と改ざん抑止の両方に効果が出始めています。運用は現場ごとに違いが大きいため、社内標準を整えたうえで導入するとよいでしょう。
よくある失敗と対策(施工管理者向け)
現場での失敗パターンを、原因と対策のセットで整理します。1本のミスが1台の運搬車の返品に直結するため、初任者向けのOJT資料として活用してください。
失敗1|3分ルールの超過
原因:コーンを設置してから写真撮影・帳票記入に時間をかけすぎる、複数の運搬車を並行して試験する。
対策:先に検査シートの帳票欄を書ける範囲まで埋めておき、ストップウォッチをスタートしてから3分以内にならし終わるまでを終わらせる。写真・記録は3分ルールの外側で行う。
失敗2|突き数の過不足
原因:初任者が「多く突いたほうが良い」と思い込む/逆にコンクリートが硬く感じて途中でやめる。
対策:25回を必ず数える運用(読み上げ担当を別に置く)。スランプが大きく材料分離のおそれがある場合は、規格で 突き数を減らす 判断が可能なため、事前に「減らす場合の判断基準」を工事写真・記録に残すルールにする。
失敗3|スランプ板の水平が確保できない
原因:足場・鉄板の上・傾斜地でスランプ板がわずかに傾く。
対策:水平器を常備 し、必要に応じて平坦な床材(合板等)を敷いて水平を確保。水平ズレは測定値の再現性を大きく崩す。
失敗4|呼び強度と許容差の取り違え
原因:呼び強度・スランプ・粗骨材最大寸法の組み合わせを見て許容差を選ぶ運用が徹底されていない。
対策:呼び強度別の許容差一覧を検査シートに事前印字。生コン工場から届いた納入書と現場の判定表を突き合わせるチェック手順を追加。
失敗5|スランプ試験の判定と構造体品質の混同
原因:受入検査のスランプ判定を、構造体としてのコンクリート強度品質と混同する。
対策:スランプ試験は 受入時のフレッシュコンクリート品質 の指標であり、構造体としての最終的な品質は圧縮強度試験(JIS A 1108)で確認する。コンクリート圧縮強度試験の記事で全体像を確認し、役割分担を頭に入れておくとよい。
ケース別|工種・規模別の運用ポイント
同じスランプ試験でも、工種・規模・元請の管理方針によって運用の勘所が変わります。ここでは代表的な4パターンを整理します。
土木(構造物・道路・河川)
- 土木工事共通仕様書に沿って 公共工事 としての管理値・頻度を採用
- 護岸・築堤・橋脚のマスコンクリートでは、暑中コンクリート指針・寒中コンクリート指針の温度管理と併用
- 河川工事の水中打設では、水中不分離性コンクリートとしてJIS A 1150のスランプフロー試験を採用するケースがある
建築(RC造・S造の耐火被覆・PC・超高層)
- JASS 5に沿って 受入検査要領・不合格時の判定フロー を運用
- 超高層RC造では、高強度コンクリート(呼び強度40〜60N級)でスランプフロー管理を採用
- 圧送距離が長い現場では、圧送前・圧送後のスランプの経時変化にも留意(サンプリング位置の設定を要検討)
中小規模の現場・地方部
- 生コン工場が近隣に限られ、運搬時間の管理が品質に直結
- 品質管理担当が現場代理人と兼務するケースが多く、チェックシート・写真台帳の運用の型 を先に決めておくと効率的
- 少人数体制での記録DX(電子小黒板・現場管理アプリ)は費用対効果が高いことが多い
大規模プロジェクト・スーパーゼネコン案件
- 発注者・元請の管理基準がJIS・JASS 5を 超えて上乗せ で規定されるケースが一般的
- 受入検査の頻度も 1台ごと に近い運用が求められる場合がある
- 品質記録は電子化が必須の水準まで進展し、施工管理者は品質DXツールの運用スキルが評価対象になる
制度・キャリアの接続|施工管理者としての位置づけ
スランプ試験は「作業員がやる試験」に見えて、実務では 施工管理職・現場代理人の責任範囲 に位置づけられます。品質記録の証拠力・監査対応・不合格時の判断責任は、いずれも施工管理職の職務です。
施工管理技士の資格との接続
土木施工管理技士・建築施工管理技士の技術検定では、コンクリートの受入検査・スランプ試験・許容差は 頻出論点 です。1級技術検定の第二次検定では、記述問題としてスランプ・空気量・塩化物含有量・温度の受入検査手順と不合格時の対応が出題されることがあります(試験機関の最新問題・解答例を確認)。
資格の詳細と受検資格の最新情報はコンクリート技士の解説記事や、試験機関の公式サイトで確認してください。
- 土木・建設機械:一般財団法人全国建設研修センター
- 建築・電気・管・電気通信・造園:一般財団法人建設業振興基金
2024年度から施工管理技術検定の受検資格が改正されており、第一次検定は年齢要件を中心に受検しやすくなっています。第二次検定には実務経験要件が引き続きあります。詳細は上記試験機関の最新案内で確認してください。
2024年問題と品質管理DXの現在地
建設業には2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されており、原則 月45時間・年360時間、特別条項付き36協定でも 年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計で 単月100時間未満・複数月平均80時間以内 が上限です。違反企業には 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 が科されます(出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制」)。災害復旧・復興工事には一部の制限緩和特例があります。
品質管理業務の負荷軽減が経営課題として鮮明になり、受入検査の記録DX・AI画像解析による判定支援・電子小黒板の運用が広がっています。品質管理を武器にキャリアを設計したい方は、施工管理から品質管理への転職事情もあわせて確認するとよいでしょう。
第三次・担い手3法とスランプ試験の位置づけ
建設業法・入契法・品確法を一体改正した 第三次・担い手3法 は、2024年6月に公布され、2025年12月12日に全面施行されました(施行済み)。労務費の基準・処遇改善、資材高騰時の労務費しわ寄せ防止、働き方改革・生産性向上の3本柱で、建設現場の品質管理・受入検査の適正化 も生産性向上の一環として位置づけられています(出典:国土交通省「第三次・担い手3法」)。
受入検査を短時間で正確に実施し、記録の証拠力を確保する運用は、担い手3法の趣旨に沿った現場運営そのものです。打設全体のフローはコンクリート打設と施工管理の実務、受入検査の設計は材料検査・受入検査のポイントを参照してください。
よくある質問(FAQ)
Q1|スランプ試験は誰が実施しますか?
現場での実施は施工者側(施工管理職・作業員)が主体になるケースと、生コン工場(レディーミクストコンクリート製造業者)の品質担当者が立会・実施するケースがあります。発注者の共通仕様書・特記仕様書で「元請・下請・生コン工場のどこが試験主体か」 が定められているのが通例で、着工前の受入検査要領で役割を確定させます。
Q2|スランプ試験は打設のたびに毎回やるべきですか?
原則として 毎回 ではなく、受入検査の頻度基準(150m³ルール、打設場所・使用配合の変更時など)に沿って実施します。発注者の共通仕様書・特記仕様書で頻度が上書きされる場合が多いため、着工前に必ず確認します。ただし、異常が疑われる運搬車が到着したときは、頻度基準を超えて追加試験を行うのが実務の対応です。
Q3|スランプ試験で不合格になったら必ず返品ですか?
原則は再試験を実施し、再試験でも許容差を超える場合は返品扱いです。ただし、発注者・元請・生コン工場・特記仕様書の合意で対応が変わることがあります。現場で独断せず、受入検査要領に沿って判定し、写真と記録を必ず残す のが最優先です。
Q4|スランプ試験とスランプフロー試験、どちらを使うかは誰が決めますか?
配合計画書・特記仕様書 で管理項目(スランプかスランプフローか)が事前に決められています。高強度コンクリート・高流動コンクリート・水中不分離性コンクリートは原則としてスランプフロー管理です。
Q5|スランプ試験の測定単位はcmですか、mmですか?
JIS A 1101では 0.5cm単位 で読み取ります。スランプフロー試験(JIS A 1150)では、直交2方向の直径を 1mm単位 で読み取ります。両者で単位が違うのは実務でも取り違えやすい点です。
Q6|スランプが大きく出すぎた場合、水を減らせばよいですか?
現場で 水を追加・減量する(加水/減水) のは、原則として認められていません。加水は配合を変えてしまい、強度・耐久性を大きく損なうため、生コン工場の品質保証を無効化してしまいます。スランプが規格を外れた場合は返品・再配合が原則です。
Q7|スランプ試験の写真は何を撮ればよいですか?
代表的には、①スランプ板・コーンの設置状態、②突き作業中、③引き上げ後のコンクリート形状、④スランプ値の読み取り、⑤運搬車ナンバー・到着時刻がわかる納入書、の5点です。電子小黒板 で試験日時・打設箇所・呼び強度・スランプ・空気量を写し込むと管理が楽になります。
Q8|暑中コンクリート・寒中コンクリートで手順は変わりますか?
試験の基本手順は同じですが、温度管理項目 が加わります。暑中は上限温度(例:35℃以下等・特記仕様書による)、寒中は下限温度と保温養生の計画がセットになります。試料採取から測定完了までの時間管理も、温度で凝結が早まる暑中はよりシビアに運用します。
Q9|スランプフロー試験の目標値は何cmですか?
呼び強度・配合種別・特記仕様書で個別に指定されます。代表的な指定値は50cm・55cm・60cmで、許容差は指定値ごとに定められます。配合計画書と特記仕様書の指定値・許容差を必ず確認 してから受入検査に臨みます。
Q10|スランプ試験の結果は、施工管理技士の実務経験として書けますか?
受入検査への立会・判定・記録・不合格時の対応は、施工管理職の実務経験に相当します。技術検定の第二次検定の経験記述で使う場合は、担当した工事概要・自分の立場・実施した検査項目・不合格時の対応・改善策 を工事写真・記録と紐づけて整理しておくとよいでしょう。詳細は各試験機関の最新の受検案内・記述指針で確認してください。
まとめ
スランプ試験は、生コンクリートの軟らかさをスランプ値として数値化し、レディーミクストコンクリートの受入検査を成立させるための基幹試験です。手順・器具・許容差はJIS A 1101・JIS A 1150・JIS A 5308に規定され、実際の運用は特記仕様書・共通仕様書で上書きされます。
要点を再掲します。
- スランプ試験のやり方はJIS A 1101に規定され、スランプコーンにコンクリートを3層に詰め、各層25回突き、コーンを鉛直に引き上げ、頂部からの下がり量を0.5cm単位で読み取る
- 詰め始めから上面をならし終わるまでは3分以内で完了する
- 許容差はJIS A 5308で、代表例としてスランプ8〜18cmで±2.5cm、5〜6.5cmで±1.5cm、21cmで±1.5cm(詳細は最新版と特記仕様書で必ず確認)
- 高強度・高流動コンクリート等はJIS A 1150のスランプフロー試験に切り替える
- 受入検査の頻度基準はおおむね「1日150m³以下で1回・150m³超で2回」だが、発注者の共通仕様書・特記仕様書が優先
品質管理は施工管理職のキャリアを左右する専門領域です。関連の実務ガイドとして、コンクリート打設と施工管理・材料検査と受入検査のポイント・コンクリート圧縮強度試験・品質管理チェック項目もあわせてご参照ください。
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