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出来高請求のやり方|前払金・部分払・査定率と請求書の書き方を実務解説

出来高請求のやり方|前払金・部分払・査定率と請求書の書き方を実務解説

出来高請求とは、工事の進捗に応じて出来形(施工済み部分)の代金を発注者へ請求する仕組みで、通常の「完成後一括請求」と対比して用いられます。数か月〜数年に及ぶ工事では材料費・外注費・労務費が先行して流出するため、公共工事では公共工事標準請負契約約款、民間工事では個別契約で 前払金・中間前払金・部分払・出来高部分払方式 の4系統が制度化されており、施工管理者はどの方式が適用されるかを契約時点で必ず確認する必要があります。

とはいえ、実務では「出来高調書と請求書の関係」「前払金充当と保留金の扱い」「査定率の考え方」「公共と民間の違い」「元請から下請への1か月以内転支払(建設業法第24条の3)」が混在しやすく、初めて出来高請求を担当する施工管理者ほど請求と入金の関係でつまずきます。

本記事では、出来高請求のやり方を5ステップの実務フローで整理し、公共工事と民間工事の違い・請求書の書き方・査定率と保留金の考え方・建設業法上の支払期限、そしてよくある失敗5パターンとFAQ15問までを網羅します。読了後には、明日から自分の現場で出来高調書と部分払請求書を組み立てられる状態を目指します。

  1. 先に結論
  2. この記事で分かること
  3. 出来高請求とは|通常請求との違いと4つの支払方式
    1. 通常請求(一括請求)との違い
    2. 4つの支払方式(公共工事の場合)
    3. 出来高と工事進行基準・部分完成基準の関係
  4. 出来高請求のやり方|5ステップの実務フロー
    1. Step 1:契約内容の確認(着工前〜着工直後)
    2. Step 2:出来形の測定・数量算出
    3. Step 3:出来高調書の作成
    4. Step 4:検査・査定(監督員/発注者)
    5. Step 5:部分払請求書の提出
  5. 出来高請求書の書き方|必須項目と累計・今回請求
    1. 必須項目
    2. 累計・既請求・今回請求の関係
    3. 書き方のポイント
    4. 元請と下請の役割分担
  6. 出来高査定と査定率の考え方
    1. 査定率とは
    2. 3つの査定方法
    3. 保留金の設定例
    4. 査定率を上げるための実務ポイント
  7. 公共工事と民間工事の違い(対比表)
    1. 公共工事の前払金保証制度
    2. 民間工事における実務差
  8. 前払金・中間前払金の請求と保証事業会社の役割
    1. 前払金の請求フロー
    2. 中間前払金の請求フロー
    3. 前払金の使途制限(分別管理)
  9. 建設業法上の支払期限とルール
    1. 第24条の3(下請代金の支払)
    2. 第24条の6(特定建設業者の下請代金支払期日)
    3. 第三次担い手3法(2025年12月12日全面施行)の影響
    4. 2024年問題との関係
  10. ケース別解説|4つの現場パターン
    1. ケース1|公共土木工事(国直轄・受注者は元請)
    2. ケース2|地方自治体発注の建築工事
    3. ケース3|民間ゼネコン受注の大型建築工事
    4. ケース4|元請から下請への出来高請求(サブコン視点)
  11. よくある失敗と対策|5パターン
    1. 失敗1|前払金相殺の計算漏れ
    2. 失敗2|保留金の未計上
    3. 失敗3|出来形査定と請求書の不整合
    4. 失敗4|部分払回数の上限超過
    5. 失敗5|下請への転支払遅延(建設業法違反)
  12. よくある質問
    1. Q1|出来高請求は必ず月次で行うのですか
    2. Q2|前払金40%は必ず請求できますか
    3. Q3|前払金保証の保証料はいくらですか
    4. Q4|査定率が90%を切ったらどうすべきですか
    5. Q5|出来高請求で消費税はいつ計上しますか
    6. Q6|出来高調書は誰が作成しますか
    7. Q7|出来高請求書と工事完了届の関係は
    8. Q8|前払金の使途違反はどう検知されますか
    9. Q9|出来高請求で下請の労務費はどこまで請求できますか
    10. Q10|出来高請求書に押印は必要ですか
    11. Q11|出来高が契約金額を超えた場合は
    12. Q12|工期延長した場合、部分払回数は増やせますか
    13. Q13|出来高請求と工事進行基準(会計)の関係は
    14. Q14|諸経費(現場管理費・一般管理費)は出来高請求に含めますか
    15. Q15|実行予算と出来高請求は連動しますか
  13. まとめ
    1. 年収・転職でお悩みの方へ

先に結論

  • 出来高請求は、公共工事標準請負契約約款や個別契約に基づき 前払金・中間前払金・部分払・出来高部分払方式 の4系統から適用方式を確定して運用する
  • 公共工事の前払金は請負代金額の40%以内、中間前払金を組み合わせると合計60%以内が実施要領上の目安(各発注者の仕様書で上限は必ず確認)
  • 部分払請求額は「出来形部分の評価額 ×(1 − 前払金相殺率)− 既払部分払額」で算出し、保留金(査定額の一定割合)を差し引いて請求する
  • 建設業法第24条の3で 元請は下請の出来形部分に相当する下請代金を「支払を受けた日から1か月以内でできる限り短い期間内」に支払う 義務があり、特定建設業者はさらに第24条の6で 引渡し申出日から50日以内 の支払期限を負う
  • 2025年12月12日に 第三次担い手3法が全面施行済みで、労務費のしわ寄せ防止と適正な支払サイトの徹底が制度化されている

この記事で分かること

  • 出来高請求と通常請求の違い、4つの支払方式(前払金/中間前払金/部分払/出来高部分払方式)の位置づけ
  • 出来高請求のやり方(5ステップ)と出来高調書の作成手順
  • 出来高請求書の必須項目、累計出来高・既請求額・今回請求額の関係
  • 査定率・保留金の考え方と、公共工事・民間工事の実務差
  • 前払金保証制度と保証事業会社の役割
  • 建設業法第24条の3/第24条の6の支払期限と、下請への転支払ルール
  • 出来高請求で起きやすい失敗5パターンとリカバリ手順
  • 実務でよく質問される15問(FAQ)への回答

出来高請求とは|通常請求との違いと4つの支払方式

出来高請求とは、工事の進捗(出来形)を数量ベースで金額換算し、その一部を工期途中で発注者に請求する仕組みです。工事は完成引渡しまでの期間が長く、材料費・外注費・労務費が先行流出するため、途中の資金繰りを支える手段として制度化されています。

通常請求(一括請求)との違い

一般の商取引では「納品完了→検収→請求→支払」が基本で、代金は納品時点で確定します。一方、建設工事は工期が数か月〜数年に及ぶことが多く、そのままでは 受注者の運転資金が長期に滞留 します。そこで、契約書または公共工事標準請負契約約款に基づき、途中段階で出来高分を請求できる仕組みが用意されています。

比較軸 通常請求(一括) 出来高請求
請求タイミング 完成引渡し後 工期途中の任意時点(契約による)
請求単位 契約金額の総額 出来形部分の評価額
資金繰り 完成まで滞留 進捗に応じて回収
出来形確認 完成検査のみ 部分検査・出来高査定
主な対象 短期工事・物品納入 建設工事(公共・民間)

4つの支払方式(公共工事の場合)

公共工事では、国土交通省「公共工事標準請負契約約款」「出来高部分払方式実施要領」(国土交通省 技術調査課)を軸に、次の4方式が組み合わせて運用されます。

方式 位置づけ 上限の目安
前払金 契約直後の準備費用(資材・機械・人件費)の先払い 請負代金額の 40%以内
中間前払金 工程中盤で追加される先払い 前払金と合わせ 合計60%以内(実施要領上の目安)
部分払 検査に合格した既済部分に対する分割払い 契約で定めた回数以内
出来高部分払方式 月単位で出来高査定→スライドして支払う先進方式 発注者の裁量(実施要領で対象工事を限定)

上限率は各発注者(国・自治体・独立行政法人)の実施要領・特記仕様書で個別に定められます。「必ず40%」ではなく「公共工事の一般的な上限が40%」というレンジで理解してください。

民間工事では、これらは契約書の支払条項として個別に定められます。多くの場合、月次締めで元請から発注者へ出来高請求書を提出し、翌月末または翌々月末に入金される慣行です。

出来高と工事進行基準・部分完成基準の関係

会計上は、工事収益の認識基準として 工事進行基準/原価回収基準/工事完成基準 があります。出来高請求(実務上の資金回収)と会計上の収益認識は別の概念であり、混同しないように注意します。会計側の詳細は、当編集部の工事原価の内訳と管理|4費目と原価管理7ステップで整理しています。

出来高請求のやり方|5ステップの実務フロー

施工管理者が押さえるべき出来高請求の実務は、次の5ステップで整理できます。

Step 1:契約内容の確認(着工前〜着工直後)

  • 適用契約約款(公共工事標準請負契約約款/民間工事標準請負契約約款/個別契約)
  • 前払金・中間前払金・部分払の適用有無と上限率
  • 部分払の回数上限(契約書に「◯回以内」と明記)
  • 保留金・査定率の取り決め
  • 前払金保証契約の要否(保証事業会社への保証委託)

公共工事は約款で標準化されていますが、地方自治体や独立行政法人は特記仕様書で上限率や部分払回数を上書きしていることがあります。契約書と特記仕様書の両方を必ず突合 してください。

Step 2:出来形の測定・数量算出

出来高請求の起点は「出来形をどう測るか」です。出来形は、契約図書に基づき 施工済み数量 ÷ 全体数量 で表現されます。

  • 土木工事:出来形管理基準に基づく実測(延長・面積・体積)
  • 建築工事:躯体工程・仕上げ工程ごとの進捗率
  • 設備工事:機器据付・配管配線の完了率

出来形の裏付けとなる歩掛や積算体系については、歩掛と積算の基本(積算とは)で整理しています。

Step 3:出来高調書の作成

出来高調書は、出来形数量と契約単価を掛け合わせて 出来高金額 を積み上げる表です。実務では以下の項目を含みます。

  • 工種/細別/規格・単位
  • 契約数量・契約単価・契約金額
  • 施工済み数量・施工済み金額
  • 出来高比率(%)
  • 累計出来高金額
  • 既請求出来高(前回までの請求済み額)
  • 今回請求出来高

出来高調書は請求書の裏付け資料 であり、監督員(公共)・監理者(民間)の査定・押印を受けて初めて有効になります。

Step 4:検査・査定(監督員/発注者)

  • 公共工事:部分払請求前の段階検査・出来高査定 を監督員が実施
  • 民間工事:発注者代理人(設計監理者)または発注者担当者が現場確認
  • 査定結果は 出来高査定調書 としてまとめられ、査定率(申請ベースに対する認定比率)が確定

査定率は原則100%ですが、施工不良・数量誤差・仕様不適合があれば減額されます。実際の査定率は 各発注者・工事内容・出来形管理の精度によって差が大きく一律に断定できない ため、契約書と仕様書の査定基準を丁寧に確認したうえで、監督員・監理者との月次摺り合わせで整合を取っていくことが実務上の基本になります。

Step 5:部分払請求書の提出

査定確定後、部分払請求書を作成して発注者に提出します。請求額の算式は次の通りです。

部分払請求額 =(出来高査定額 × 支払対象率)−(前払金相殺額 + 中間前払金相殺額 + 既払部分払額 + 保留金)

  • 支払対象率:契約で定めた出来高に対する支払比率(例:90%)
  • 前払金相殺率:前払金40%を契約金額に対して案分計算
  • 保留金:出来高査定額の一定割合(例:10%)を最終検査後まで留保

計算例は本記事「出来高請求書の書き方」章で示します。

出来高請求書の書き方|必須項目と累計・今回請求

出来高請求書は、通常の請求書に 累計出来高/既請求額/今回請求額 の3系列が加わる点が特徴です。

必須項目

  • 発行日
  • 請求書番号
  • 宛先(発注者名。顧客向けは「御中」で表記
  • 発行者情報(自社名・住所・登録番号など)
  • 工事名・工事番号
  • 契約金額
  • 累計出来高金額
  • 前回までの請求済み額(既請求額)
  • 今回請求額(税抜・消費税・税込)
  • 前払金相殺額・保留金の内訳
  • 振込先

累計・既請求・今回請求の関係

項目 内容 例(契約1億円・出来高40%時点)
契約金額 契約書の請負金額 100,000,000円
累計出来高 施工済み金額の合計 40,000,000円
前払金 契約直後の先払い(40%) 40,000,000円
前払金相殺 出来高比率に応じた相殺 16,000,000円(40%×40%)
既請求出来高 前回までの請求済み額 8,000,000円
保留金 査定額×10% 4,000,000円
今回請求額 上記を差し引いた残額 12,000,000円

上記は概算モデルであり、実際の相殺方式・保留金比率は契約・発注者仕様で異なります。各発注者の前払金及び部分払金の計算方法(関東地方整備局サンプル例)などを参照して精緻化してください。

書き方のポイント

  • 累計と今回請求は別欄 で明記する(累計だけだと二重請求リスク)
  • 税抜/税込/消費税 の3行を必ず分ける
  • 前払金・保留金の 相殺・控除内訳を注記 する
  • 出来高調書(内訳書)を添付 する
  • 民間工事で下請から元請へ請求する場合は、元請の締め日(例:毎月20日締め) と支払サイト(例:翌月末)を契約で確認

元請と下請の役割分担

  • 元請→発注者:工事全体の出来高を集約して請求。設計監理者の検査・査定を受ける
  • 下請→元請:担当工種の出来高を月次で請求。元請の内部査定を受ける
  • 孫請以下:直近上位の元請または下請に対して請求

建設業法上の下請支払期限は後述の「建設業法上の支払期限とルール」章で扱います。

出来高査定と査定率の考え方

査定率は、施工管理者が最も気にすべき数値のひとつです。査定率が下がると請求額が減るため、査定に耐えられる出来形管理が必要です。

査定率とは

査定率は、受注者の出来高申請額に対して発注者(監督員)が認定した金額の比率 です。100%になるのが理想ですが、数量誤差・仕様変更・施工不良があれば減額されます。

3つの査定方法

方法 概要 主な対象
出来形比率査定 実測数量ベースで算定 土木の面積・延長・体積系
工程査定 工程表の進捗率で算定 建築の躯体・仕上げ工程
出来高査定(金額査定) 出来形×単価で金額に置換 全般(請求ベース)

保留金の設定例

保留金は、瑕疵担保や完成検査に備えて 査定額の一定割合を留保 する仕組みです。実務では 査定額の10%前後 を留保するケースが多いとされますが(民間工事の実務慣行ベース)、公共工事では約款上「出来高部分の代金相当額」を上限に部分払されるため、保留金の位置づけは契約書と特記仕様書で必ず確認 してください。

査定率を上げるための実務ポイント

  • 契約単価と施工数量の裏取りを 写真・出来形図・実測記録 で徹底する
  • 変更契約の対象は 変更協議書と協議記録 をセットで保管する
  • 出来高調書は 監督員と月次で摺り合わせ する(月末一発勝負を避ける)
  • 施工不良は 手直し完了後に再申請 する

公共工事と民間工事の違い(対比表)

公共工事と民間工事では、支払スキームの標準化度合いが異なります。

比較軸 公共工事 民間工事
準拠約款 公共工事標準請負契約約款 民間工事標準請負契約約款・個別契約
前払金 請負代金額の40%以内が目安 契約により大きく異なる(0%〜あり)
中間前払金 20%以内追加(合計60%目安) 原則なし(大型案件で個別設定)
部分払 回数を契約で明示 月次出来高請求が慣行
出来高査定 監督員による正式査定 設計監理者・発注者担当者の確認
前払金保証 保証事業会社の保証が原則 契約により付保(免除も一般的)
支払サイト 検査完了後の期日を約款で規定 契約により大きく異なる(翌月末/翌々月末/締め後60日 等)

上記は概観です。金額基準・比率は各発注者の実施要領で必ず確認してください。

公共工事の前払金保証制度

公共工事では、受注者の債務不履行(倒産等で工事続行不能となる事態)に備えて、発注者に前払金の返還を保証する 前払金保証制度 が整備されています。保証を行うのは東日本建設業保証西日本建設業保証北海道建設業信用保証の3社です(公共工事の前払金保証事業に関する法律)。

  • 受注者は保証事業会社と保証契約を結び、保証証書を発注者に提出
  • 発注者は保証証書と引き換えに前払金を支払
  • 前払金は資材購入・下請への前渡し・現場労務費等の 限定用途 に使うこと(分別管理義務)

民間工事における実務差

民間工事は契約書ベースで運用されるため、次のような多様性があります。

  • 大手デベロッパー・ハウスメーカー:出来高査定を精緻に行う独自フォーマット
  • 中小オフィスビル:出来高請求を月次で行うが査定は概算ベース
  • 個人住宅:出来高請求せず、着工時・上棟時・完成時の3分割払いが多い

前払金・中間前払金の請求と保証事業会社の役割

前払金は 契約直後の資金繰り を支える最重要制度です。公共工事における流れは以下の通りです。

前払金の請求フロー

  1. 契約締結
  2. 保証事業会社への保証委託申込
  3. 保証証書の発行(保証料は請負代金比例)
  4. 発注者への保証証書提出+前払金請求書
  5. 前払金の支払(原則、受注者の分別管理口座へ振込)

中間前払金の請求フロー

中間前払金は、工程が一定進捗した段階で追加請求できる制度です。以下の条件を満たす必要があります(各発注者の実施要領で個別条件あり)。

  • 工期の 2分の1を経過 し、既済部分が 契約金額の2分の1以上
  • 工程表と実績の突合で進捗を証明
  • 保証事業会社の中間前払金保証を追加委託

前払金の使途制限(分別管理)

前払金は、次の用途に限定して使用します。

  • 材料費・機械購入費・機械リース料
  • 労務費(給与・社会保険料)
  • 下請契約に基づく前渡し
  • 現場運営費(現場事務所・仮設)

私的流用や本社経費への転用は禁止 されており、監督員・保証事業会社の監査対象です。

建設業法上の支払期限とルール

出来高請求は、元請から下請への 転支払(下請代金支払) と密接に連動します。建設業法は以下の期限を定めています。

第24条の3(下請代金の支払)

元請負人は、注文者から出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、当該支払の対象となった建設工事を施工した下請負人に対して、当該元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から 1月以内で、かつ、できる限り短い期間内に 支払わなければならない。

(出典:e-Gov 建設業法

第24条の6(特定建設業者の下請代金支払期日)

特定建設業者が下請契約の注文者となる場合、下請負人からの 引渡し申出日から起算して50日以内 で、かつ、できる限り短い期間内に下請代金を支払う期日を定める義務があります。

第三次担い手3法(2025年12月12日全面施行)の影響

建設業法・入契法・品確法を一体改正した第三次担い手3法は、2024年6月に公布され、段階的施行を経て 2025年12月12日に全面施行された 制度です。

  • 労務費の基準の作成・公表と、実勢を反映した見積・契約の徹底
  • 資材高騰時の労務費しわ寄せ防止(変更請求の適正化)
  • 働き方改革・生産性向上(2024年問題との連携)

出来高請求実務では、下請代金支払の適正化(第24条の3・第24条の6)に加え、労務費を基準以下に叩き込む契約変更が制限される ため、下請の月次出来高請求における労務費の裏取りがこれまで以上に重要になります。制度の全体像は当編集部の改正建設業法2025のポイントで整理しています。

2024年問題との関係

2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されており、原則 月45時間/年360時間、特別条項付き36協定でも 年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計で 単月100時間未満/複数月平均80時間以内 が上限です。違反企業には 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金 が科されます(出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制」)。なお、災害復旧・復興工事には一部の制限緩和特例があります。

出来高請求実務では、月次締めや検査対応が 時間外労働の集中要因 になりやすいため、締め日の分散・出来高調書の週次更新など、業務設計の見直しが求められます。

ケース別解説|4つの現場パターン

ケース1|公共土木工事(国直轄・受注者は元請)

  • 契約約款:公共工事標準請負契約約款
  • 前払金:40%+中間前払金20%
  • 部分払:契約で3回以内
  • 出来高調書:月次で監督員へ提出、部分払前に正式査定
  • 前払金保証:東日本建設業保証と契約
  • 実務ポイント:出来形管理基準に基づく実測が査定の前提

ケース2|地方自治体発注の建築工事

  • 契約約款:地方自治体版標準約款(公共約款準拠)
  • 前払金:40%
  • 部分払:契約で2〜3回
  • 特記仕様書に「工程査定併用」の記載があるケースあり
  • 実務ポイント:特記仕様書と本文約款の両方を突合 する

ケース3|民間ゼネコン受注の大型建築工事

  • 契約約款:民間工事標準請負契約約款またはデベロッパー独自契約
  • 前払金:0〜20%程度(免除の場合も)
  • 部分払:月次で出来高請求(毎月20日締め・翌月末払等)
  • 保留金:査定額の5〜10%
  • 実務ポイント:発注者の締め日・支払サイトを契約で確定 する

ケース4|元請から下請への出来高請求(サブコン視点)

  • 元請の月次締め日に合わせて出来高請求書を提出
  • 建設業法第24条の3で、元請が発注者から出来高を受け取った日から 1か月以内、できる限り短い期間内 に下請へ転支払される
  • 特定建設業者が元請の場合は、第24条の6の 50日以内 ルールが優先
  • 実務ポイント:締め日と支払サイトの契約明記が最重要

積算職・原価管理職への転向を考える方は、当編集部の施工管理から積算へのキャリア転向も参考にしてください。

よくある失敗と対策|5パターン

失敗1|前払金相殺の計算漏れ

  • 症状:部分払請求で前払金相殺を忘れ、二重請求扱いに
  • 対策:出来高請求書の様式に 前払金相殺欄を必須項目化 /月次の相殺計算シートを別途整備

失敗2|保留金の未計上

  • 症状:保留金を差し引かずに請求し、後日発注者から減額通知
  • 対策:契約書の保留金条項を 請求書の脚注に定型注記 /保留金は完成検査後に別途請求する運用ルール化

失敗3|出来形査定と請求書の不整合

  • 症状:出来高調書の数値と請求書の累計が一致せず、差戻し
  • 対策:出来高調書→請求書の転記は自動計算セル で組む/査定確定後に請求書を作成するフロー化

失敗4|部分払回数の上限超過

  • 症状:契約で定めた部分払回数(例:3回)を超えて4回目を請求してしまう
  • 対策:契約の部分払回数を 工程表と紐づけて計画 /不足しそうな場合は変更協議で回数増を要請

失敗5|下請への転支払遅延(建設業法違反)

  • 症状:元請が発注者から入金後、下請への支払が1か月を超過
  • 対策:元請の経理と現場の入金報告フロー を短縮/特定建設業者は50日ルールを社内規程化

よくある質問

Q1|出来高請求は必ず月次で行うのですか

工事契約と発注者の運用によります。公共工事は契約書で 部分払回数 を定めており、月次固定ではなく「工程節目ごと」の運用も一般的です。民間工事では月次締めが慣行ですが、契約で「四半期ごと」や「工程完了時」と定める場合もあります。

Q2|前払金40%は必ず請求できますか

請求権は約款上ありますが、実務では発注者仕様書で 上限が20%や30%に抑えられる ケース、あるいは 保証事業会社との保証契約締結 が請求の前提となるケースがあります。契約直後に契約書・仕様書を精査してください。

Q3|前払金保証の保証料はいくらですか

保証料は各保証事業会社の料率表に基づき、請負代金額と保証期間に比例 します。詳細は保証会社へ見積依頼するのが確実です(東日本建設業保証ほか)。

Q4|査定率が90%を切ったらどうすべきですか

減額の内訳(数量誤差/仕様不適合/施工不良)を監督員から書面で受領し、原因を 写真・出来形図・出来形管理記録 で反証します。それでも解決しなければ、契約変更・協議書での是正、または追加調査を申請してください。

Q5|出来高請求で消費税はいつ計上しますか

原則、出来高査定確定日または請求書発行日 の税率を適用します。工期をまたぐ工事では、税率改正日(過去の8%→10%等)を意識して、税率区分を請求書内で明示してください。

Q6|出来高調書は誰が作成しますか

元請では 現場管理職(工事担当)が作成→所長→部門長→経理 の順で承認するのが一般的です。下請では担当職長・工務担当が作成し、元請の監督員に査定を受けます。

Q7|出来高請求書と工事完了届の関係は

出来高請求書は 工期途中の請求、工事完了届は 工事完成時に発注者へ提出 する書面です。工事完了届が受理され、完成検査に合格した後に、残額(保留金を含む)を最終請求します。

Q8|前払金の使途違反はどう検知されますか

保証事業会社と発注者が 分別管理口座の入出金明細 をチェックします。私的流用・本社経費への転用が発覚した場合、保証契約解除や指名停止 など重い処分の対象になり得ます。

Q9|出来高請求で下請の労務費はどこまで請求できますか

下請契約に基づき、実際に労務が投入された出来形分 を請求します。労務単価は下請契約で定めた単価を使い、労務投入実績(出面)を裏付け資料として添付するのが基本です。

Q10|出来高請求書に押印は必要ですか

法的義務ではありませんが、実務慣行として 代表者印または担当者印を押印 します。電子帳簿保存法の改正で電子請求書も認められていますが、発注者の受付運用によっては紙原本を求められます。

Q11|出来高が契約金額を超えた場合は

契約変更手続きが先です。変更契約を締結せずに契約金額超の出来高を請求すると、超過分は自己リスク になります。追加工事や設計変更が発生したら、必ず変更協議書を先に締結してください。

Q12|工期延長した場合、部分払回数は増やせますか

原則、契約の部分払回数は変わりません。工期延長協議のタイミングで、部分払回数の変更も併せて協議 することで、追加請求の権利を確保します。

Q13|出来高請求と工事進行基準(会計)の関係は

出来高請求は資金回収の実務、工事進行基準は会計上の収益認識で 別概念 です。ただし、出来高査定額を進捗率の算定資料として活用するケースが多く、経理・工事管理部門で連携して整理する必要があります。詳細は工事原価の内訳と管理を参照してください。

Q14|諸経費(現場管理費・一般管理費)は出来高請求に含めますか

出来高請求は 契約金額(諸経費込みの請負代金) をベースに、出来形比率で案分します。したがって現場管理費・一般管理費・利益も出来高請求に含まれます。積算体系の内訳は建設 諸経費 内訳で整理しています。

Q15|実行予算と出来高請求は連動しますか

実行予算は自社の原価予算(社内管理)、出来高請求は発注者への請求(対外)で、目的が異なります。ただし、出来高請求の進捗と実行予算の消化率を突合することで、現場利益の見込み を月次で把握できます。実行予算の作り方は実行予算の作り方7ステップを参照してください。

まとめ

出来高請求は、公共工事標準請負契約約款・出来高部分払方式実施要領・建設業法(第24条の3・第24条の6)に裏付けられた 建設工事特有の資金回収スキーム です。5ステップの実務フローを順に踏み、契約書・特記仕様書・出来形管理記録を丁寧に整えれば、初任者でも差戻しや保留を減らしやすくなり、査定率と請求精度の底上げにつながります。

要点を再確認します。

  • 出来高請求は 前払金・中間前払金・部分払・出来高部分払方式 の4系統から適用方式を確定する
  • 前払金は請負代金額の 40%以内、中間前払金を合わせると 合計60%以内 が公共工事の目安
  • 出来高請求のやり方は 契約確認→出来形測定→出来高調書→検査査定→部分払請求書提出 の5ステップ
  • 請求額は 出来形評価額 ×(1 − 前払金相殺率)− 既払部分払額 − 保留金 で算出する
  • 建設業法第24条の3(1か月以内・できる限り短期)・第24条の6(特定建設業者50日以内) で下請への転支払期限が定められている
  • 2025年12月12日に第三次担い手3法が全面施行された ため、労務費のしわ寄せ防止と適正な支払サイトが強化されている

より詳細な原価管理・積算体系・改正建設業法との連携は、実行予算の作り方7ステップ工事原価の内訳と管理建設 諸経費 内訳改正建設業法2025のポイントを併せてご覧ください。積算・原価管理を強みにキャリア形成を考える方には、施工管理から積算へのキャリア転向歩掛と積算の基本も役立ちます。

出来高請求の運用は、契約と法令の裏付けを押さえたうえで、監督員・発注者との 月次の摺り合わせ が肝要です。キャリアの方向性や資格取得の判断に迷ったら、タテルートの無料キャリア相談(LINE)という情報整理の場を活用できます。


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