玉掛け技能講習とは、労働安全衛生法施行令第20条第16号に基づく 就業制限業務 の国家資格で、つり上げ荷重1トン以上のクレーン・移動式クレーン・デリック・揚貨装置による玉掛作業に従事するために必要な講習修了資格です。学科12時間+実技7時間(計19時間)を3日間で受講し、修了試験に合格すると全国どこでも通用する修了証が交付されます。無資格で1トン以上の玉掛作業に就かせた事業者は6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります(労働安全衛生法第119条)。
現場で「1トン未満なら特別教育でよい/1トン以上は技能講習が必須」と言われる区分は、玉掛けする 荷 の重さではなく、玉掛けに使用する クレーン等のつり上げ荷重 で判定します。ここを誤解すると現場配置ミスや是正指導につながるため、施工管理者が最初に押さえるべき論点です。
本記事では、玉掛け技能講習の全体像・学科/実技の内訳・費用相場・受講資格と科目免除・特別教育との違い・施工管理者としての現場配置実務までを、公的な一次情報を根拠に整理します。全体の技能講習・特別教育の一覧は建設現場で必要な技能講習・特別教育一覧で解説しているため、本記事では玉掛け1点を深掘りします。
- 先に結論
- この記事で分かること
- 玉掛け技能講習の法的位置づけと必要性
- 講習内容|学科12時間・実技7時間の科目内訳
- 受講資格と科目免除|短縮コースの条件
- 費用相場と会社負担の切り分け
- 玉掛け特別教育との違い|1t区分の判定
- 施工管理者の実務|作業計画・配置・記録
- 関連資格との組み合わせ|クレーン運転士との違い
- 労働災害の実態と2024年問題との接続
- キャリアアップと転職での位置づけ
- ケース別解説|4パターン
- よくある失敗と対策
- よくある質問
- Q1|玉掛け技能講習は誰でも受講できますか?
- Q2|取得までにかかる日数は?
- Q3|合格率はどのくらいですか?
- Q4|不合格の場合はどうなりますか?
- Q5|修了証を紛失した場合は?
- Q6|クレーン運転士免許を持っていれば玉掛けもできますか?
- Q7|特別教育を受けた後に技能講習を受け直せますか?
- Q8|地方と都市部で費用は違いますか?
- Q9|会社に受講料を負担してもらうにはどうすればよいですか?
- Q10|教育訓練給付金は使えますか?
- Q11|経営事項審査(経審)で加点されますか?
- Q12|女性でも取得できますか?
- Q13|面接で「玉掛けを持っています」と伝えるのは有効ですか?
- Q14|フルハーネス型墜落制止用器具の特別教育とセットで受講できますか?
- Q15|有効期限や更新はありますか?
- まとめ
先に結論
- 玉掛け技能講習は労働安全衛生法施行令第20条第16号に基づく 就業制限業務 の国家資格で、つり上げ荷重1トン以上のクレーン等の玉掛作業に就くために必要
- 講習時間は 学科12時間+実技7時間=計19時間、3日間 が原則。修了試験(学科・実技)両方の合格で修了証が交付される
- 費用は税込 22,000〜24,000円 が相場(教材費込みで24,000円前後、免許保有者は22,000円前後)
- クレーン運転士免許・床上操作式クレーン運転技能講習・小型移動式クレーン運転技能講習の修了者は 科目免除 があり、短縮コース(15時間程度)で受講可能
- 1トン未満対象の 玉掛け特別教育(学科・実技計10時間) とは対象範囲・所要時間・実施主体が異なる。「荷の重さ」ではなく「クレーン等のつり上げ荷重」で判定する
この記事で分かること
- 玉掛け技能講習の法的位置づけと就業制限業務の意味
- 学科12時間・実技7時間の具体的な科目内訳と修了試験の内容
- 費用相場(22,000〜24,000円)と会社負担・個人負担の考え方
- 免除規定を使った短縮コース(15時間程度)の適用条件
- 玉掛け特別教育(1トン未満)との違いと現場での区分判定
- 施工管理者としての作業計画・有資格者確認・配置実務のポイント
- クレーン運転士・小型移動式クレーンなど関連資格との組み合わせ方
- キャリアアップ・転職での位置づけと年収レンジへの影響
玉掛け技能講習の法的位置づけと必要性
玉掛け技能講習は、労働安全衛生法第61条第1項および同法施行令第20条第16号に基づく 就業制限業務 の資格です。就業制限業務 とは、危険または有害な業務のうち、都道府県労働局長の免許・技能講習修了・特別教育など一定の資格を有する者でなければ就かせてはならないと定められた業務を指します(厚生労働省 職場のあんぜんサイト「就業制限業務」)。
就業制限業務の3階層|免許・技能講習・特別教育
労働安全衛生法上の資格は、危険度の高さに応じて 免許(国家試験)/技能講習/特別教育 の3階層に分かれます。玉掛けは中段の技能講習に該当します。
| 階層 | 資格の性格 | 実施主体 | 玉掛けでの位置づけ |
|---|---|---|---|
| 免許 | 国家試験。都道府県労働局長が交付 | 安全衛生技術試験協会 | 該当なし(クレーン運転士免許は別区分) |
| 技能講習 | 登録教習機関の講習修了。修了証は全国有効 | 登録教習機関 | 1トン以上の玉掛作業に必須 |
| 特別教育 | 事業者が実施(社内・外部委託可) | 事業者または外部機関 | 1トン未満の玉掛作業に必要 |
対象業務の範囲
労働安全衛生法施行令第20条第16号は、対象業務を「制限荷重が1トン以上の揚貨装置または つり上げ荷重 が1トン以上のクレーン、移動式クレーンもしくはデリックの玉掛けの業務」と定めています。
- クレーン:天井クレーン、ジブクレーン、橋形クレーンなど固定設置型
- 移動式クレーン:ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーン、クローラクレーン、トラッククレーン等
- デリック:起重機の一種。近年は減少
- 揚貨装置:船舶に設備されたクレーン類
現場で誤解が多いのは「1トン」の判定基準です。荷 の重さではなく、玉掛けに使う クレーン等のつり上げ荷重(そのクレーンが吊り上げられる最大能力) で判定します。100kgの荷を吊る場合でも、使用するクレーンのつり上げ荷重が1トン以上なら技能講習修了者でなければ玉掛けできません。
無資格作業の罰則
無資格者に1トン以上の玉掛作業を行わせた事業者は、労働安全衛生法第119条により 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金 の対象になります。作業者本人(無資格で作業に従事した者)にも同法第120条により 50万円以下の罰金 が科される可能性があります。是正指導や送検事例は各労働局・厚生労働省 労働災害発生状況で公表されており、施工管理者は現場配置時に必ず修了証を確認する必要があります。
講習内容|学科12時間・実技7時間の科目内訳
玉掛け技能講習規程(昭和47年労働省告示第119号)により、学科・実技の科目と時間が定められています。原則は 学科12時間+実技7時間=計19時間 です(厚生労働省 玉掛け技能講習規程)。
学科講習の科目内訳(原則12時間)
| 科目 | 時間 | 主な内容 |
|---|---|---|
| クレーン、移動式クレーン、デリック及び揚貨装置に関する知識 | 1時間 | 各機械の構造・機能・種類 |
| クレーン等の玉掛けに必要な力学に関する知識 | 3時間 | 質量・重心・張力・つり角度による荷重変化 |
| クレーン等の玉掛けの方法 | 7時間 | 玉掛用具の選定・使用法・合図・安全確認 |
| 関係法令 | 1時間 | 労働安全衛生法・クレーン等安全規則 |
実技講習の科目内訳(原則7時間)
| 科目 | 時間 | 主な内容 |
|---|---|---|
| クレーン等の玉掛け | 6時間 | 実物のワイヤロープ・シャックル・玉掛用具を使った玉掛作業 |
| クレーン等の運転のための合図 | 1時間 | 手・声・笛による合図の実技 |
修了試験
学科・実技それぞれに修了試験があります。学科は選択式・記述式の筆記試験、実技は玉掛用具の選定と実際の玉掛作業を評価します。合格率は各教習機関の公表値で 90%以上 が目安とされており、比較的取得しやすい資格に分類されます。ただし合格率は教習機関により差があり、業界団体の集計値ではないため参考値として扱ってください。
不合格の場合、多くの登録教習機関では 補講・再試験 の制度があり、当日中または後日改めての受験が可能です。詳細は受講する教習機関の案内で確認してください。
受講資格と科目免除|短縮コースの条件
受講資格
玉掛け技能講習は 受講資格に年齢・学歴・実務経験の制限はありません(一部の教習機関で18歳以上の内規を設けている場合あり)。ただし、修了しても18歳未満は労働基準法により就業できない業務があるため、実務就業は18歳以降が基本です。
科目免除による短縮コース
以下の資格・修了歴を持つ場合、玉掛け技能講習の一部科目が免除されます。免除対象は登録教習機関ごとに整理されており、代表的な例は以下のとおりです。
| 保有資格・修了歴 | 免除される科目 | 短縮後の講習時間 |
|---|---|---|
| クレーン・デリック運転士免許(限定なし)、移動式クレーン運転士免許 | 学科の「クレーン等に関する知識」および「関係法令」 | 15時間程度(例) |
| 床上操作式クレーン運転技能講習修了 | 学科の一部および実技の一部 | 15時間程度(例) |
| 小型移動式クレーン運転技能講習修了 | 学科の一部および実技の一部 | 15時間程度(例) |
免除の適用範囲・短縮後の時間・費用は登録教習機関ごとに異なり、告示改正で見直される場合があります。詳細は受講予定の教習機関の最新案内で必ず確認してください。
受講申込に必要な書類
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)
- 免除申請の場合:クレーン運転士免許証・技能講習修了証の写し
- 顔写真(縦3cm×横2.4cm、6ヶ月以内撮影)
- 受講料の振込控えまたは現金
書類・写真規格は教習機関ごとに異なるため、申込時の案内で確認してください。
費用相場と会社負担の切り分け
費用の内訳
税込 22,000〜24,000円 が全国的な相場です(2026年8月時点で主要教習機関の公表値を確認)。内訳は次のとおりです。
| 項目 | 金額目安 |
|---|---|
| 受講料(学科・実技) | 20,000〜22,000円 |
| テキスト代 | 1,600〜2,000円 |
| 修了証交付料 | 受講料に含まれる場合が多い |
免除適用者(クレーン運転士免許・関連技能講習修了者)は22,000円前後、免除なしのフルコース受講者は24,000円前後が目安です。地域・教習機関により差があり、都市部で高め、地方で低めの傾向があります。
会社負担と個人負担の考え方
建設業界では、業務命令で受講させる場合は 会社が受講料・交通費・受講日の賃金 を負担するのが一般的です。労働安全衛生法第59条は事業者に安全衛生教育を実施する義務を課しており、就業制限業務に必要な資格の取得費用も業務命令の範囲で会社負担とする運用が広く行われています。
一方、転職・キャリアアップ目的で個人が先取り取得する場合は自己負担が原則です。教育訓練給付金の対象講座は限定的で、玉掛け技能講習は多くの場合対象外のため、厚生労働省 教育訓練給付制度 検索システムで受講予定の教習機関・講座名を確認してください。
助成金の活用
事業者は 人材開発支援助成金 の建設労働者認定訓練コース等を活用できる場合があります。要件・支給額は改正で変わるため、厚生労働省 人材開発支援助成金で最新の詳細を確認してください。
玉掛け特別教育との違い|1t区分の判定
対象範囲の違い
| 項目 | 玉掛け技能講習 | 玉掛け特別教育 |
|---|---|---|
| 対象業務 | つり上げ荷重1トン以上のクレーン等の玉掛け | つり上げ荷重1トン未満のクレーン等の玉掛け |
| 法的根拠 | 労働安全衛生法施行令第20条第16号 | 労働安全衛生規則第36条第19号/クレーン等安全規則第222条 |
| 実施主体 | 登録教習機関 | 事業者または外部機関 |
| 講習時間 | 学科12時間+実技7時間=計19時間(3日間) | 学科5時間+実技4時間=計9時間(1〜2日間) |
| 修了証の効力 | 全国どこでも有効 | 実施事業所での作業に限定される運用が多い |
| 費用相場 | 22,000〜24,000円 | 12,000〜18,000円 |
「1トン」の判定基準
繰り返しになりますが、1トンの判定は 荷の重さではなく、玉掛けに使用するクレーン等のつり上げ荷重 で行います。
- 500kgの荷を、つり上げ荷重2トンのラフテレーンクレーンで吊る → 技能講習修了者 が玉掛け
- 1.5トンの荷を、つり上げ荷重0.9トンの小型クレーンで吊る → そもそもクレーンの能力を超えており作業不可
- 200kgの荷を、つり上げ荷重500kgの小型クレーンで吊る → 特別教育修了者で可
つり上げ荷重はクレーン等の銘板・仕様書に記載されています。作業計画時にクレーン仕様と作業員の資格を必ず突合してください。
併存の考え方
現場に技能講習修了者と特別教育修了者が混在する場合、区分を明確化するために、多くの元請では 技能講習修了者に統一する運用 を採用しています。特別教育は社内訓練の性格が強く、複数事業所を跨いだ通用性が弱いためです。
施工管理者の実務|作業計画・配置・記録
作業計画作成時のチェックポイント
施工管理者は、クレーン等作業計画書の作成時に以下を確認します。
- 使用クレーン等のつり上げ荷重(銘板・年次点検記録で確認)
- 玉掛け作業員の資格区分(技能講習修了 or 特別教育修了)
- 作業員数と配置(合図者・玉掛者・運転者の分離)
- 玉掛用具の選定と点検記録(ワイヤロープ・シャックル・繊維スリング)
- 地切り・つり角度・共吊りの禁止事項
有資格者の確認方法
- 修了証原本またはカラーコピーを新規入場時に確認
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録されている場合は資格情報が可視化される
- 元請・上位下請の安全担当が記録し、労働基準監督署の是正指導時に提示できるようにする
CCUSの活用については建設キャリアアップシステム CCUS|レベル判定と登録方法で解説しています。
記録と保存
事業者は労働安全衛生法第103条により、安全衛生教育の実施記録の作成・保存が義務付けられています。玉掛け特別教育を社内実施する場合は、教育記録(実施日・時間・科目・受講者・講師)を作成し、労働基準監督署の求めに応じて提示できるようにしてください。技能講習の修了証は本人保管が原則ですが、写しを事業所で保管する運用が一般的です。
玉掛作業の安全ルール(現場配布資料の要点)
- 地切り30cm一時停止:荷を地面から30cm程度浮かせて一時停止し、荷の安定・玉掛用具の状態・重心を確認する
- つり角度60度以内:ワイヤロープの2点吊り時は、つり角度が広がるほど張力が増加。60度以内が基準
- 立入禁止措置:吊り荷の下および旋回範囲内は立入禁止
- 合図の統一:手・声・笛による合図をJIS規格に沿って統一
関連資格との組み合わせ|クレーン運転士との違い
玉掛けとクレーン運転は別業務で、それぞれ別の資格が必要です。
| 資格 | 対象業務 | 資格の性格 |
|---|---|---|
| 玉掛け技能講習 | 荷を吊り具に掛ける・外す作業 | 技能講習修了 |
| クレーン・デリック運転士免許 | つり上げ荷重5トン以上のクレーンの運転 | 国家試験(免許) |
| 移動式クレーン運転士免許 | つり上げ荷重5トン以上の移動式クレーンの運転 | 国家試験(免許) |
| 床上操作式クレーン運転技能講習 | つり上げ荷重5トン以上の床上操作式クレーンの運転 | 技能講習 |
| 小型移動式クレーン運転技能講習 | つり上げ荷重1トン以上5トン未満の移動式クレーンの運転 | 技能講習 |
| クレーン運転特別教育 | つり上げ荷重5トン未満のクレーンの運転 | 特別教育 |
現場では 玉掛者と運転者は別々に配置 することが原則で、1人で兼務する場合は両方の資格が必要です。単独作業(オペレーターが自ら玉掛けし運転する)は共吊り事故等の危険性が高く、多くの現場で禁止または制限されています。
キャリアアップの標準セット
建設現場でよく組み合わせられる資格セットは以下のとおりです。
- 鉄骨・鍛冶工の入口セット:玉掛け技能講習+アーク溶接特別教育+足場組立て等特別教育
- 土木・掘削の入口セット:玉掛け技能講習+小型移動式クレーン運転技能講習+車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習
- 建築鉄骨の入口セット:玉掛け技能講習+高所作業車運転技能講習+足場の組立て等作業主任者技能講習
各技能講習の全体像は建設現場で必要な技能講習・特別教育一覧で整理しています。作業主任者資格については型枠支保工の組立て等作業主任者、地山掘削作業主任者で個別に解説しています。
労働災害の実態と2024年問題との接続
建設業における労働災害の全体像
厚生労働省の令和6年 労働災害発生状況(2025年5月30日公表)によると、2024年(令和6年)の労働災害による死亡者数は 747人、休業4日以上の死傷者数は 150,914人 です。死亡災害は建設業・製造業・陸上貨物運送事業の3業種で全体の6割強を占めています。
玉掛作業に直接起因する災害は「はさまれ・巻き込まれ」「飛来・落下」に分類され、業種別集計では建設業・製造業で発生件数が多い傾向があります。具体的な玉掛関連災害の件数は業種横断集計のため、厚生労働省職場のあんぜんサイト 労働災害統計で最新の集計を参照してください。
2024年問題と作業計画
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています。原則は 月45時間/年360時間、特別条項付き36協定がある場合でも 年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計で 単月100時間未満/複数月平均80時間以内 が上限です。違反企業には 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 が科されます(出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制」)。なお、災害復旧・復興工事には一部の制限緩和特例があります。
玉掛作業を含む揚重作業は工程の律速になりやすく、有資格者不足が工期遅延・時間外労働増加の主要因になります。作業計画時点で 有資格者の頭数を確保しておくことが2024年問題への対応でも重要です。
第三次・担い手3法の全面施行
建設業法・入契法・品確法の改正である第三次・担い手3法は、2025年12月12日に全面施行された 制度です(国土交通省 第三次・担い手3法)。労務費の基準・処遇改善、資材高騰時の労務費しわ寄せ防止、働き方改革・生産性向上の3本柱で構成され、有資格者の処遇改善につながる制度改正が進んでいます。玉掛け技能講習を含む現場資格の保有は、CCUSレベル判定・経営事項審査(社会保険加入や技術者評価)を通じて事業者の受注機会にも間接的に影響します。
キャリアアップと転職での位置づけ
玉掛け単体での市場価値
玉掛け技能講習は 建設現場の入口資格 の性格が強く、これ単体で年収が大きく上がる資格ではありません。ただし、無資格者と比較して現場でのアサインの幅が広がり、他資格との組み合わせでキャリアパスが開けます。
資格手当のレンジ
タテルート編集部が2026年7月〜8月に建設特化3媒体+総合2媒体の公開求人(首都圏中心・約80件・玉掛け技能講習を条件または歓迎条件に含む職種)を確認した範囲では、玉掛け技能講習単体の資格手当は 月額2,000〜5,000円 のレンジが多く、複数の技能講習を組み合わせた場合の合計手当は月額10,000〜30,000円のレンジで求人票に記載される例が見られました。ただし公開求人ベースの参考値であり、企業・地域・雇用形態(正社員/契約社員/派遣)で大きく変動します。
年収レンジの参考値
参考として、厚生労働省賃金構造基本統計調査の建設業関連職種の平均賃金は年収 400〜550万円 のレンジに収まる傾向がありますが、これは全社員平均・全職種横断のため、玉掛け技能講習保有者単独の年収を示すものではありません。施工管理職単独の年収レンジは施工管理の平均年収は?年代・業種別データ徹底解説で別途整理しています。
施工管理職・現場監督との関係
施工管理職・現場監督が玉掛け技能講習を保有していると、有資格者不足時の代打・作業指示の実感・KY活動の質向上に寄与します。1級・2級施工管理技士試験の直接的な受験要件ではありませんが、実務経験の幅を広げる補助的な資格として位置づけられます。
施工管理技士制度は、2024年度から施工管理技術検定の受検資格が改正 されており、第一次検定は年齢要件を中心に受検しやすくなっています。第二次検定の実務経験要件など詳細は試験機関の最新案内(建設業振興基金・全国建設研修センター)で確認してください。
ケース別解説|4パターン
ケース1|20代未経験で入社直後
多くの建設会社では入社後1〜3ヶ月以内に玉掛け技能講習と足場組立て等特別教育を受講させる運用です。受講料・交通費・受講日の賃金はすべて会社負担が一般的で、教習機関の紹介から申込書類の作成まで会社が手配するのが標準です。この時期に取得した資格は転職時にも履歴書に記載可能で、次のキャリアの入口として活きます。
ケース2|30代で異業種から建設業へ転職
異業種からの転職者は、内定後・入社前の期間に自費で先取り取得すると入社時の即戦力性がアピールできます。ただし、多くの建設会社では入社後に会社負担で取得させる運用のため、内定先の人事担当に取得タイミングを事前確認するのが安全です。異業種からの転職ルートは施工管理 未経験から転職する方法で整理しています。
ケース3|40代で1級施工管理技士取得後の実務補強
すでに1級施工管理技士を保有している40代の施工管理職が、現場感覚を補強するために取得するケースがあります。有資格者が急遽不足した際の代打・作業指示の説得力向上・KY活動での具体的指摘に活用でき、現場所長候補として評価される傾向があります。この年代の転職事情は施工管理 40代 転職の実態と成功パターンを参照してください。
ケース4|中小地場ゼネコン・専門工事会社での取得
中小地場ゼネコン・専門工事会社では、社員1人が複数の技能講習・特別教育を組み合わせて保有することが一般的です。玉掛け+小型移動式クレーン+高所作業車+足場作業主任者、といったマルチスキル型の人材が現場運営の中核となります。中小企業の企業選びは建設業界の企業選び|大手・準大手・中堅・地場の違いで整理しています。
よくある失敗と対策
失敗1|「荷の重さ」で1トン判定してしまう
失敗内容:500kgの荷を吊るからと特別教育修了者に玉掛けさせたが、使用クレーンのつり上げ荷重が2トンで是正指導を受けた。
対策:作業計画書に「使用クレーン等のつり上げ荷重」を必ず記載し、有資格者の資格区分と突合するチェック欄を設ける。
失敗2|修了証の携行・提示ができない
失敗内容:新規入場時の書類確認で修了証原本・写しの提示ができず、当日作業に就けなかった。
対策:修了証はコピーを財布・現場携行袋に入れ、原本は自宅保管。CCUS登録者は資格情報がシステム上で確認できるため活用する。
失敗3|特別教育修了で他社現場に異動
失敗内容:A社で玉掛け特別教育を受講後、B社の現場に応援に行った際に「特別教育は事業者実施のため他社では通用しない」と指摘された。
対策:他社現場・元請直属現場での作業予定がある場合は、技能講習修了を取得しておく。特別教育は社内訓練の性格が強い。
失敗4|つり角度を意識しない2点吊り
失敗内容:2点吊りでつり角度が90度を超える玉掛けを行い、ワイヤロープが破断した。
対策:つり角度60度以内を基準とし、荷の幅とワイヤロープの長さを事前に計算する。学科講習の「力学」で学んだ張力計算を実務で活用する。
失敗5|共吊り(2台のクレーンでの吊り)の運用ミス
失敗内容:共吊り作業で合図者・玉掛者の分担が曖昧になり、荷の傾きから玉掛用具が外れた。
対策:共吊りはクレーン等安全規則で厳格な要件があり、原則として避けるべき作業。やむを得ず実施する場合は作業計画書・KY活動を厳格化し、経験豊富な玉掛者を配置する。
よくある質問
Q1|玉掛け技能講習は誰でも受講できますか?
原則として受講資格に年齢・学歴・実務経験の制限はありません。ただし18歳未満は労働基準法により玉掛作業に就業できないため、実務従事は18歳以降が基本です。一部の教習機関で18歳以上の内規を設けている場合があるため、申込前に確認してください。
Q2|取得までにかかる日数は?
原則3日間で修了します。免除適用者は2〜3日間、免除なしのフルコースは3日間が標準です。教習機関により平日3日連続コース・週末分割コースなど選択できます。
Q3|合格率はどのくらいですか?
各教習機関の公表値で90%以上が目安とされています。ただし公表値は教習機関ごとの実績で、業界団体の集計値ではありません。学科・実技それぞれの試験に真面目に取り組めば合格しやすい部類に入ります。
Q4|不合格の場合はどうなりますか?
多くの登録教習機関では補講・再試験の制度があります。当日中の再試験・後日の再試験など対応は教習機関により異なります。詳細は受講する教習機関の案内で確認してください。
Q5|修了証を紛失した場合は?
修了証を交付した登録教習機関に再交付を申請します。手数料は2,000〜3,000円程度、交付には1〜2週間かかることが多いです。転職先で提示が必要な場合を想定し、早めに手配してください。
Q6|クレーン運転士免許を持っていれば玉掛けもできますか?
いいえ。クレーン運転士免許と玉掛けは別資格です。クレーンを運転できても、玉掛作業(荷を吊り具に掛ける・外す作業)には別途、玉掛け技能講習の修了が必要です。ただし科目免除の対象になります。
Q7|特別教育を受けた後に技能講習を受け直せますか?
はい。特別教育修了者が改めて技能講習を受講することは可能です。既に玉掛けの基本を理解しているため、学科の理解が早く実技もスムーズに進む傾向があります。特別教育の受講歴による科目免除はありません。
Q8|地方と都市部で費用は違いますか?
税込 22,000〜24,000円 の相場に大きな地域差はありませんが、都市部の一部教習機関では受講料がやや高い傾向、地方の労働基準協会は低めの傾向があります。交通費・宿泊費を含めた総額で比較してください。
Q9|会社に受講料を負担してもらうにはどうすればよいですか?
労働安全衛生法第59条により、事業者は就業制限業務に必要な安全衛生教育を実施する義務があります。業務命令で受講させる場合は受講料・交通費・受講日の賃金を会社が負担するのが一般的な運用です。就業規則・労働協約の教育訓練条項を確認し、上長・人事担当に相談してください。
Q10|教育訓練給付金は使えますか?
玉掛け技能講習は多くの場合、教育訓練給付制度の対象外です。厚生労働省 教育訓練給付制度 検索システムで受講予定の教習機関・講座名を検索し、対象講座に該当するかを事前に確認してください。事業者側は人材開発支援助成金を活用できる場合があります。
Q11|経営事項審査(経審)で加点されますか?
経審(国土交通省 経営事項審査制度)の技術職員数評価では、1級・2級施工管理技士や監理技術者は加点対象ですが、玉掛け技能講習は直接の加点項目ではありません。ただし、CCUSレベル判定を通じて技能者の技能・経験が可視化され、間接的に評価される制度改正が進んでいます。
Q12|女性でも取得できますか?
はい。年齢・性別・学歴による受講制限はなく、女性の受講者も増えています。実技は玉掛用具(ワイヤロープ・シャックル)の取扱いが中心で、力仕事というよりは手順と安全確認が問われます。女性の建設業キャリアは女性施工管理の実態|働き方・キャリア・現場対応で整理しています。
Q13|面接で「玉掛けを持っています」と伝えるのは有効ですか?
有効です。ただし単独でのアピール力は限定的で、他の技能講習・特別教育とセットで「現場で複数工程を担える」ストーリーを伝えると効果的です。面接での資格アピールは面接対策|施工管理の志望動機と資格アピールの伝え方を参照してください。
Q14|フルハーネス型墜落制止用器具の特別教育とセットで受講できますか?
多くの教習機関でフルハーネス特別教育・アーク溶接特別教育などとセットの日程が組まれています。連続日程で複数資格をまとめて取得できるため、時間効率が良い運用です。フルハーネスは墜落制止用器具 特別教育|対象作業と受講方法(一覧記事内で解説)を参照してください。
Q15|有効期限や更新はありますか?
玉掛け技能講習の修了証に有効期限はありません。ただし、労働安全衛生法第60条の2に基づく 玉掛け業務従事者安全衛生教育(再教育) を概ね5年ごとに受講することが推奨されています。教育内容は「関係法令の改正動向」「新型玉掛用具」「災害事例」等で、6時間程度の講習が多く、事業者が実施主体となります。
まとめ
玉掛け技能講習は、労働安全衛生法施行令第20条第16号に基づく就業制限業務の国家資格で、つり上げ荷重1トン以上のクレーン等の玉掛作業に就くために必要です。学科12時間+実技7時間の計19時間・3日間・費用22,000〜24,000円が原則で、クレーン運転士免許等の保有者は科目免除で短縮コースが利用できます。
- 玉掛け技能講習は 就業制限業務 の資格。無資格作業は労働安全衛生法第119条により6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金
- 学科12時間+実技7時間=計19時間、3日間。修了試験は学科・実技それぞれ実施
- 費用は税込 22,000〜24,000円 が相場。会社負担が一般的で、事業者は人材開発支援助成金を活用できる場合あり
- クレーン運転士免許・床上操作式クレーン・小型移動式クレーン の修了者は科目免除で短縮コース(15時間程度)
- 1トン未満対象の特別教育 とは対象範囲・所要時間・実施主体が異なる。判定は 荷の重さではなくクレーン等のつり上げ荷重 で行う
- 施工管理者は、作業計画時に「使用クレーンのつり上げ荷重」と「作業員の資格区分」を突合し、修了証原本・写しで確認する
現場で有資格者が急に必要になった際の即戦力配置、キャリアの初期段階での資格ポートフォリオ整備、施工管理者としての現場感覚の補強と、玉掛け技能講習は建設業のキャリアの土台となる資格です。関連する技能講習・特別教育の全体像は建設現場で必要な技能講習・特別教育一覧で整理しています。キャリア設計の相談は、タテルートの無料キャリア相談(LINE)という選択肢があります。
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