躯体工事とは、建物の骨格となる基礎・柱・梁・床・壁・屋根などをつくる工事の総称で、鉄筋工事・型枠工事・コンクリート打設工事・鉄骨工事・木造工事の5つが主な内訳です。一般的なRC造の中層建築では、建築工事全体の工期のうち躯体工事が多くを占める傾向があり、着工から仕上げに引き継ぐまでの主要工程を担う中核工事にあたります。
この記事は、施工管理職として躯体工事の全体像と工程ごとの管理ポイントを把握したい方に向けたガイドです。未経験から現場に配属された若手、他工種から躯体系へ広げたい中堅、あるいは所長候補として工程全体を俯瞰して管理する立場の方まで、それぞれの目線で読めるように整理しました。
RC造(鉄筋コンクリート造)の12ステップ工程、S造(鉄骨造)の建方工法、SRC造・木造の要点、そして4大管理(QCDS)の観点別チェックリスト・確認書類・よくある失敗までを、公的資料と現場実務の両面から解説します。
- 先に結論
- この記事で分かること
- 躯体工事とは|建物の骨格をつくる中核工事
- 構造種別に見る躯体工事の流れ|RC造・S造・SRC造・W造
- RC造躯体工事の流れ|施工管理目線の12ステップ
- S造躯体工事の流れ|鉄骨建方の実務
- 施工管理|4大管理(QCDS)別の躯体工事着眼点
- 各工程で残す確認書類・帳票・記録
- 躯体工事のよくある失敗と対策|5パターン
- 躯体系施工管理の求人動向|編集部の参考情報
- 年代・段階別|躯体系施工管理のキャリア設計
- よくある質問(FAQ)
- Q1|躯体工事は建築工事全体のどのくらいの割合を占めますか?
- Q2|1フロアあたりの躯体工事の期間はどのくらいですか?
- Q3|施工管理の未経験者は躯体工事のどこから覚えればよいですか?
- Q4|配筋検査で不合格になるとどうなりますか?
- Q5|コンクリートの受入検査で不合格が出た場合はどうしますか?
- Q6|型枠支保工の組立て等作業主任者はいつ必要ですか?
- Q7|鉄骨造の建方で施工管理者が現場で見るべきポイントは何ですか?
- Q8|2024年問題は躯体工事の工程設計にどう影響しますか?
- Q9|躯体工事の写真管理はどのように残せばよいですか?
- Q10|1級建築施工管理技士は躯体系のキャリアに必須ですか?
- Q11|躯体工事と地下工事はどう関係しますか?
- Q12|SRC造は現場で減っていますか?
- Q13|躯体工事の施工管理でDX(BIM/CIM)はどこまで進んでいますか?
- Q14|監理技術者と主任技術者の違いは躯体工事でどう関わりますか?
- Q15|躯体工事の未経験からのキャリア形成はどのくらいの期間がかかりますか?
- まとめ
先に結論
- 躯体工事は建築工事の工期の約7割を占める中核工事で、鉄筋・型枠・コンクリート打設・鉄骨・木造の5つが基本
- RC造は「墨出し→配筋→型枠建込→設備仕込→検査→コンクリート打設→養生→脱型」を1フロアずつ繰り返す
- S造は鉄骨製作(工場)→現場搬入→建方(建て逃げ/水平積み上げ)→本締め・溶接→デッキ→鉄筋・打設の順で進む
- 施工管理はQCDS(品質・原価・工程・安全)で観点を切り分け、各工程で帳票・記録・写真管理を残す
- 2024年4月からの時間外労働上限規制(月45時間/年360時間、特別条項でも年720時間)を前提に工程設計する必要がある
この記事で分かること
- 躯体工事の定義と、建築工事全体における位置づけ
- 構造種別(RC造・S造・SRC造・W造)ごとの流れの違い
- RC造躯体工事を1フロア完成させるまでの12ステップと各工程の管理ポイント
- S造の建方工法と、鉄骨建方で現場が見るべき精度・安全の観点
- 施工管理が4大管理(QCDS)別に押さえる着眼点と、各工程で残す確認書類・記録
- 躯体系施工管理の求人動向(編集部観測)と、年代別のキャリア設計
躯体工事とは|建物の骨格をつくる中核工事
躯体工事の位置づけを整理してから、流れの解説に入ります。ここでは、定義・構造区分・建築工事全体との関係を確認します。
躯体工事の定義と対象部位
躯体(くたい)は、建物の荷重を支える構造体のことです。具体的には、基礎・柱・梁・床(スラブ)・壁(耐力壁)・屋根が対象で、これらをつくる工事の総称が躯体工事です。
仕上げ工事(内装・外装・設備最終取合い)とは分けて扱われ、躯体が完成してから仕上げ工程へ移行します。躯体は建物完成後は壁や仕上げ材で隠れる部分が多く、施工後に是正が困難な工程であることが躯体工事の実務上の特徴です。
躯体工事の5種類
躯体工事は主に以下の5種類に分類されます。
| 種類 | 主な作業 | 対象構造 |
|---|---|---|
| 鉄筋工事 | 鉄筋加工・組立・配筋・継手・かぶり管理 | RC造・SRC造 |
| 型枠工事 | 型枠加工・建込・支保工組立・脱型 | RC造・SRC造 |
| コンクリート工事 | 打設計画・打設・締固め・養生・仕上げ | RC造・SRC造 |
| 鉄骨工事 | 工場製作・現場搬入・建方・本締め・溶接 | S造・SRC造 |
| 木造工事 | 建方・軸組・耐力壁・金物・屋根組 | W造 |
各工種の詳細な管理ポイントは既存の専門記事に譲り、本記事は流れ全体をつなぐハブとして位置づけます。工種別の実務については、鉄筋工事の施工管理ポイント・型枠工事の施工管理・コンクリート打設の施工管理を参照してください。
建築工事全体における位置づけ|工期の約7割
一般的なRC造中層建築(4〜10階建て)では、着工から竣工までの工期のうち躯体工事が多くを占める傾向があり、目安として6〜7割前後となるケースが見られます。規模・構造・地域で幅があるため、案件ごとの工程表で個別に把握する必要があります。工期全体を仕上げ・設備工事より躯体側でどれだけ短縮できるかが、原価・工程双方に大きく影響します。
施工管理者が躯体工事で押さえるべきは、次の3点に集約されます。
- 工程遵守:後続の仕上げ・設備工事のクリティカルパスに影響するため、躯体の遅れは全体遅延に直結しやすい
- 品質確保:やり直しが効かない工程が多く、配筋・かぶり厚・打継ぎ位置などは事前チェックが要
- 安全確保:高所作業・重量物の揚重・型枠支保工など、労働災害リスクが集中する工程
制度面の背景として、国土交通省の第三次・担い手3法(2024年6月公布、2025年12月12日に全面施行された)は、労務費の基準・処遇改善、資材高騰時の労務費しわ寄せ防止、働き方改革・生産性向上の3本柱で、躯体工事の工程設計にも影響します。個別の条項の適用や運用の詳細は、国土交通省の最新公表資料で確認してください。
ミニFAQ|躯体工事の位置づけ
Q. 躯体工事と構造体工事は違いますか?
A. 実務上はほぼ同義で使われますが、契約や仕様書上は「構造体」の語が用いられます。JASS5(日本建築学会 建築工事標準仕様書 鉄筋コンクリート工事)などの技術基準でも「構造体コンクリート」の表現が使われます。
Q. 躯体工事の施工管理は誰が担いますか?
A. 主任技術者(すべての工事現場で配置義務のある技術者)または監理技術者(元請工事のうち下請契約合計が一定額以上の現場で配置義務がある技術者)が全体統括を担い、担当工事係員(若手施工管理)が工種別・部位別の日常管理を担います。詳細は監理技術者と主任技術者の違いを参照してください。
構造種別に見る躯体工事の流れ|RC造・S造・SRC造・W造
躯体工事の流れは、構造種別によって大きく変わります。ここでは4つの代表的構造で、施工管理者が押さえる工程の全体像を整理します。
構造別の躯体工事フロー早見表
| 構造 | 主要工程の順序 | 特徴 |
|---|---|---|
| RC造 | 墨出し→配筋→型枠→設備仕込→打設→養生→脱型 | 1フロア約2〜4週間、繰り返し工程 |
| S造 | 鉄骨製作(工場)→建方→本締め・溶接→デッキ→打設 | 建方期間が短いが、工場製作リードタイムに注意 |
| SRC造 | 鉄骨建方→鉄筋・型枠→打設 | RC造とS造の合成、工程が複雑 |
| W造(在来) | 基礎→土台敷き→建方(1〜2日)→屋根→耐力壁 | 木材プレカットで現場工程を短縮 |
RC造(鉄筋コンクリート造)の全体像
RC造は、鉄筋を組み、型枠で囲み、コンクリートを打設して構造体をつくる工法です。工程は下階から順に1フロアずつ積み上げ、各フロアで「墨出し→配筋→型枠→設備仕込→検査→打設→養生→脱型」を繰り返します。1フロアあたりの標準工程は、規模・階高・打設面積により幅があり、おおむね2〜4週間程度が目安です。
S造(鉄骨造)の全体像
S造は、工場で製作した鉄骨部材を現場で建方(組立て)する工法です。工場製作のリードタイムは、案件規模・部材点数・工場稼働状況により数週間〜数か月と幅があり、これと現場建方の工程を分けて計画する必要があります。建方後は本締め・溶接・デッキプレート敷設・スタッド溶接・打設と続きます。
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)の特徴
SRC造は、鉄骨の周りに鉄筋を配し、コンクリートで覆う工法です。工程はRC造とS造を合成した形になり、鉄骨建方後に鉄筋・型枠工事、続いてコンクリート打設という流れです。工程が複雑で、鉄骨と鉄筋の取合い・鉄骨梁の耐火被覆・スラブとの取合いなど、部位ごとの納まり確認が施工管理者の主要業務となります。
W造(木造)の特徴
在来軸組工法のW造は、基礎打設後に土台敷き、続いて建方(一般に1〜2日で骨組み完成)、屋根、耐力壁・面材、金物取付という流れです。プレカット工場での加工精度が高まっており、現場での加工作業は減少傾向にあります。ツーバイフォー工法(枠組壁工法)は在来と異なる工程です。
RC造躯体工事の流れ|施工管理目線の12ステップ
RC造の躯体工事について、1フロア完成までの標準的な12ステップを、施工管理者の観点で整理します。
STEP1|墨出し
躯体の基準となる通り芯・柱芯・壁芯を床面(スラブ)に出す作業です。トランシット・レーザー墨出し器を用い、設計図の寸法を実物大でスラブに落とし込みます。
施工管理のポイント
– 基準墨(親墨)と補助墨(子墨)を区別し、墨リストで管理
– 上階への墨の返し方(貫通穴を通した垂直測量)を計画
– 検査時に立会いを行い、記録写真を残す
STEP2|柱・壁の鉄筋工事
墨出しした位置に、柱・壁の鉄筋を組み立てます。工場で加工された鉄筋(プレカット・ユニット化される場合が増えています)を現場で組立て、結束線で固定します。
施工管理のポイント
– 主筋の本数・径・継手位置・定着長を設計図と照合
– 帯筋・幅止筋の間隔とフックの向き
– スペーサー(かぶり厚確保の部材)の配置
配筋の詳細な検査観点は鉄筋工事の施工管理ポイントを参照してください。
STEP3|柱・壁の型枠建込(片側)
配筋を挟むように、まず片側の型枠を建て込みます。工場加工パネル(合板+桟木)を運搬・組立て、支保工で押さえます。
施工管理のポイント
– 型枠の垂直・水平精度(下げ振り・レーザーで確認)
– 支保工の位置と本数(型枠支保工の組立て等作業主任者の選任要件を確認)
– 段取り筋・スペーサーが型枠に密着しているか
STEP4|電気・機械設備の仕込み
型枠内に、電気配線用のスリーブ(コンクリート打設後に配線を通す穴)、設備配管、コンセントボックスなどを仕込みます。仕上げ工程で追加穴あけをすると躯体強度が落ちるため、この段階で確実に埋め込みます。
施工管理のポイント
– 設備業者との調整(工程・位置)
– スリーブ・埋込ボックスの位置精度
– 主筋を切断しない配置(構造上の必須事項)
STEP5|反対側の型枠建込(返し型枠)
設備仕込が完了したら、反対側の型枠を建て込み、柱・壁を閉じます。
施工管理のポイント
– 型枠の建込順序(設備配管の逃げがあるか)
– セパレータ・フォームタイの本数と位置
– 打設圧に耐える剛性の確保
STEP6|梁・スラブの型枠架設
柱・壁が閉じたら、梁の型枠と支保工、スラブの型枠を架設します。
施工管理のポイント
– 支保工の段数・水平つなぎ・筋交いの配置
– スラブ型枠の水平精度(レベル調整)
– 開口部(配管貫通口・階段室)の位置と養生
型枠工事の詳細な管理ポイントは型枠工事の施工管理にまとめています。
STEP7|梁・スラブの鉄筋工事
架設した梁型枠内に梁筋、スラブ型枠上にスラブ筋を配筋します。
施工管理のポイント
– 梁主筋の継手位置(応力の小さい位置に集中させない)
– スラブ配筋のかぶり厚確保(バーサポート・スペーサー)
– 開口補強筋の配置
STEP8|配筋検査(自主検査・監理者検査)
コンクリート打設前の最重要検査です。かぶり厚・鉄筋径・本数・継手長・定着長・スペーサー・支保工などを、事前に発行した「配筋検査チェックリスト」で確認します。
施工管理のポイント
– 自主検査(社内)→監理者検査(設計事務所・建築主)の順で実施
– 是正指示があれば手直し後に再検査
– 配筋検査記録(写真・チェック表)を残す
品質管理の体系的なチェック項目は品質管理 チェック項目を参照してください。
STEP9|コンクリート打設計画・受入検査
打設前に、コンクリートの配合計画書(呼び強度・スランプ・空気量・塩化物量・骨材種別)を確認し、打設当日は受入検査(現場での品質確認)を実施します。
施工管理のポイント
– 配合計画書と納入書の照合
– スランプ試験・空気量試験・塩化物量測定・供試体採取
– 打設順序・打継ぎ位置・作業員配置の計画
STEP10|コンクリート打設
計画に基づき、コンクリートポンプ車で圧送し、打設していきます。柱・壁→梁・スラブの順で、または部位ごとに分割して打設します。
施工管理のポイント
– 打込み速度と自由落下高さ(骨材分離を防ぐ)
– バイブレータ(振動機)の挿入深さ・間隔・時間
– 打継ぎ位置(設計図・共通仕様書に従う)
– 打設中の型枠変位・支保工異常の監視
打設の詳細な実務はコンクリート打設の施工管理を参照してください。
STEP11|養生
打設後、コンクリートが所定の強度に達するまで湿潤養生を行います。
施工管理のポイント
– 湿潤養生期間の管理(部位・使用セメント・気温で変わる)
– 直射日光・急激な乾燥・凍結の防止
– 外気温が低い場合の保温養生(加熱養生・シート養生)
STEP12|脱型(型枠解体)と次フロアへ
所定の強度が確認できたら型枠を解体(脱型)します。支柱(下階から数えて2〜3層残置)は継続して支持を確保します。
施工管理のポイント
– 圧縮強度試験の結果確認(材齢と部位で判定基準あり)
– 支柱残置の段数管理
– 脱型後の目視検査(ジャンカ・気泡・段差)と是正
脱型が完了したら、上階に上がり、STEP1の墨出しから再開します。地上10階建てなら、この12ステップを10回繰り返す形になります。
S造躯体工事の流れ|鉄骨建方の実務
S造は、工場製作された鉄骨部材を現場で建方する工法です。RC造と工程の性質が異なり、工場と現場の連携が施工管理の主軸になります。
鉄骨製作から現場搬入まで
設計図承認→原寸検査→工作図承認→切断・孔あけ→組立溶接→非破壊検査→塗装→輸送の流れで、工場でリードタイムをかけて製作されます。
施工管理のポイント
– 工場製作の進捗確認(原寸検査・製品検査の立会い)
– 現場搬入日程と揚重計画の調整
– 塗装・耐火被覆の要否と仕様
建方工法|建て逃げ方式と水平積み上げ方式
現場建方には主に2つの工法があります。
| 工法 | 特徴 | 適用場面 |
|---|---|---|
| 建て逃げ方式 | 敷地の奥から手前に向かってクレーンで建方 | 敷地が細長い・低〜中層 |
| 水平積み上げ方式 | 下層から上層へ1層ずつ全体を建方 | 高層建築・敷地が矩形 |
高層建築では、タワークレーンをコア(エレベーターシャフト等の中央部)に設置し、水平積み上げで建方するのが一般的です。
建方の管理ポイント|精度・安全
施工管理のポイント
– 柱の建入れ精度(垂直度・ねじれ)
– 梁レベル(水平精度)
– 高力ボルトの本締めトルク管理(工事書式に記録)
– 現場溶接部の非破壊検査(UT・磁粉探傷・浸透探傷)
– 玉掛け・合図・立入禁止措置(労働安全衛生規則)
デッキプレート敷設・スタッド溶接
建方後、床にデッキプレート(波型鋼板)を敷設し、頭付きスタッド(デッキとコンクリートを一体化させる溶接部材)を打ち込みます。
スラブ配筋・コンクリート打設
デッキ上に配筋し、コンクリートを打設して床スラブを完成させます。ここからはRC造の打設と同様の管理が必要です。
施工管理|4大管理(QCDS)別の躯体工事着眼点
躯体工事の施工管理は、Q(品質)・C(原価)・D(工程)・S(安全)の4大管理で観点を切り分けると整理しやすくなります。ここでは、それぞれの観点別に躯体工事で押さえるべき着眼点をまとめます。
品質管理(Quality)
躯体工事の品質は、完成後に是正が困難な性質を持ちます。特に、隠蔽される部位(配筋・支保工・スリーブ位置)は、施工中の記録が唯一の品質証跡になります。
主な着眼点
– 使用材料の受入検査(規格証明書・ミルシート)
– 配筋検査(打設前・監理者立会い)
– コンクリート受入検査(強度・スランプ・空気量・塩化物)
– 出来形検査(脱型後・仕上げ引継ぎ前)
– 記録写真(電子小黒板・撮影ポイント計画)
原価管理(Cost)
躯体工事は、材料費・労務費・外注費の3費目を中心に、実行予算の大きな部分を占めます。
主な着眼点
– 実行予算の作成(実行予算の作成方法を参照)
– 数量拾い(配筋・型枠・生コン)と発注量の管理
– 材料ロス率の管理(鉄筋端材・型枠転用回数)
– 追加変更工事の書面化(口頭合意は原価管理上のリスク)
粗利・利益の出し方は施工管理の利益・粗利の出し方、原価内訳の詳細は工事原価の内訳と管理を参照してください。
工程管理(Delivery)
躯体工事の遅れは、後続の仕上げ・設備工事のクリティカルパスに直接影響します。
主な着眼点
– 週間工程・日次工程の見える化(工程表・朝礼)
– 天候リスク(打設予定日の降雨・強風・低温)への対応
– 職方の応援手配(鉄筋工・型枠大工・生コン圧送・鉄骨鳶)
– クリティカルパス(打設サイクル・鉄骨建方)の把握
工程管理と直接関わる出面管理は出面管理とはにまとめています。
安全管理(Safety)
躯体工事は、高所作業・重量物揚重・型枠支保工・鉄骨建方など、労働災害リスクが集中する工程です。
主な着眼点
– 型枠支保工の組立て等作業主任者、鉄骨の組立て等作業主任者などの選任
– 玉掛け・クレーン運転の有資格者配置
– 墜落・転落防止措置(安全帯・ネット・親綱)
– 危険予知(KY)活動、朝礼・TBM(ツールボックスミーティング)
– 労働安全衛生規則の遵守
2024年問題(時間外労働上限規制)については、原則月45時間/年360時間、特別条項付き36協定を締結した場合でも年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満/複数月平均80時間以内が上限で、月45時間超は年6回まで、違反企業には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制」)。災害復旧・復興工事には一部の制限緩和特例があります。
なお「4週8閉所」(4週間で8日間の現場閉所を意味する業界指標)と「完全週休2日制」(労働者個人が毎週2日休日を取得する労務概念)は別概念で、閉所日でも個人の勤務があり得る点に注意が必要です。
各工程で残す確認書類・帳票・記録
躯体工事は「後から見えなくなる工程」が多く、施工中に残した記録が品質・工程・原価すべての証跡になります。ここでは、標準的な帳票と記録の一覧を整理します。
主要な帳票・記録リスト
| 工程 | 主な帳票・記録 | 保管形態 |
|---|---|---|
| 墨出し | 墨出しリスト・立会い記録 | 電子・紙 |
| 配筋 | 配筋検査チェックシート・写真 | 電子・紙 |
| 型枠 | 型枠精度チェック・支保工計算書 | 電子・紙 |
| 打設 | 受入検査記録・打設記録・供試体台帳 | 電子・紙 |
| 建方(S造) | 建入れ検査・本締め記録・溶接記録 | 電子・紙 |
| 出来形 | 出来形検査記録・写真 | 電子・紙 |
写真管理の実務
工事写真は、撮影黒板(撮影対象部位・寸法・日付・立会人を明示)とともに撮影し、電子小黒板アプリで管理するのが主流になっています。国土交通省の工事書類ガイドラインなどで、撮影ポイントの計画・整理方法が示されています。
DX活用|BIM/CIMと電子帳票
近年は、BIM/CIM(建築・土木の3次元モデルに属性情報を持たせる技術)と連携した施工管理も広がっています。BIM/CIMの実務についてはBIM/CIMの基礎と現場での使い方を参照してください。国土交通省の公共土木工事では2023年度からBIM/CIM原則適用が段階的に進んでおり、対象・運用範囲は案件・発注者・最新要領で個別に確認が必要です。
躯体工事のよくある失敗と対策|5パターン
躯体工事で発生しやすい失敗を、原因と対策とともに整理します。若手施工管理者が現場で最初につまずくポイントでもあります。
パターン1|ジャンカ(豆板)
打設したコンクリートに、モルタル分が回らず粗骨材が露出した空隙ができた状態です。
- 原因:バイブレータの掛け不足、打込み速度が速すぎる、型枠内の鉄筋過密
- 対策:打設計画で振動締固めの分担を明確化、鉄筋のかぶり厚と径のバランスを事前確認
- 是正:軽度は目視補修、深部は斫って再打設(監理者と協議)
パターン2|コールドジョイント
先に打設したコンクリートの上に、時間差で新しいコンクリートを打設したときに、一体化せず継目が残る現象です。
- 原因:打設中断(生コン到着遅れ・機械トラブル)、外気温が高い日の急激な硬化
- 対策:生コン発注ロット・タイミングを事前調整、打設中断が起きた際の再打設判断基準を打設計画書に明記
- 是正:接合面の斫り出し・エポキシ樹脂注入など、監理者・構造設計者と協議
パターン3|かぶり不足
鉄筋のコンクリート表面までの被覆厚(かぶり厚)が、設計・仕様書の値を下回る状態です。
- 原因:スペーサーの数量・配置不足、配筋時の押込み、型枠の変位
- 対策:配筋検査でかぶり厚を直接測定、スペーサーの種類と間隔を仕様書化
- 影響:耐久性・耐火性・構造強度に直結するため、監理者との協議で是正方針を決定
パターン4|鉄骨建方の精度不足
柱の建入れ(垂直度)や梁のレベル(水平度)が許容差を超える状態です。
- 原因:工場製作段階での精度、現場のワイヤー引き調整不足、日射による部材の熱変位
- 対策:建入れ直しの手順を事前計画、朝夕の気温差が大きい季節は測定タイミングを工夫
- 是正:本締め前に修正、本締め後は監理者・構造設計者と協議
パターン5|型枠の変形・はらみ
打設時のコンクリート側圧で、型枠が膨らみ・傾き・崩壊する現象です。
- 原因:セパレータ・フォームタイの本数不足、打込み速度過大、支保工の剛性不足
- 対策:打設計画に側圧計算を反映、打設速度を管理、打設中の型枠監視員を配置
- 是正:脱型後に躯体の寸法検査、逸脱があれば構造設計者と協議
躯体系施工管理の求人動向|編集部の参考情報
以下は、タテルート編集部が2026年7月〜8月に主要求人媒体で公開求人を確認した範囲の参考情報です。公的統計や全国相場ではなく、探索的な観測であり、市場全体を代表するものではありません。実際の応募検討時は、複数媒体・複数時期の求人票と就業条件通知書・面接での確認をお願いします。
観測範囲の抽出条件
- 調査期間:2026年7月上旬〜8月上旬
- 対象媒体:建設特化型3媒体(施工管理特化)+総合型2媒体(媒体名は公開しない)
- 確認方法:「躯体工事 施工管理」「RC造 施工管理」「鉄骨造 施工管理」等の検索KW+雇用形態「正社員」で絞込
- 対象求人:中途採用(正社員)約90件。派遣・業務委託・アルバイトは除外
- 対象地域:首都圏60件・関西20件・中部10件(結果として首都圏に偏在)
- 抽出条件:同一企業複数掲載は代表1件に絞込
観測範囲での傾向(参考値)
- 求人量:確認範囲では、躯体系(RC造・S造)の経験を歓迎条件・必須条件とする求人が多く見られた
- 年収レンジ:確認範囲では、経験3〜5年で450〜600万円前後、経験10年以上・所長経験ありで700〜900万円前後のレンジが目立った
- 資格要件:1級建築施工管理技士が歓迎または必須となる求人が多く、2級のみでの応募は担当工事係員クラスで受け入れられる傾向が見られた
- 建物用途:確認範囲ではオフィスビル・マンション・物流施設・データセンター建設の求人が目立った
- 勤務地:確認範囲では首都圏偏在の傾向が見られたが、地方の物流施設・データセンター案件も一定数確認できた
年収の詳細な相場は施工管理の年収、資格要件別の求人差は施工管理技士とキャリアを参照してください。
年代・段階別|躯体系施工管理のキャリア設計
躯体工事に関わる施工管理者のキャリアは、年代・経験段階で担う役割が変わります。ここでは4段階に整理します。
20代|担当工事係員(1〜3年目)
主な役割
– 特定部位・特定工程の日常管理(配筋の立会い、材料受入、写真管理)
– 職長会・朝礼・KY活動への参加
– 図面読み込み・数量拾いのOJT
取得を目指す資格
– 2級建築施工管理技士(第一次検定は年齢要件を中心に受検可能。第二次検定には実務経験要件あり。試験機関の最新案内で確認)
20代後半〜30代前半|工事主任・担当工区リーダー
主な役割
– 1つの工区・1フロアの躯体工事全体の統括
– 職方との日程調整・材料発注
– 監理者検査の立会い・是正指示のとりまとめ
取得を目指す資格
– 1級建築施工管理技士(監理技術者になれる代表的な資格)
30代後半〜40代|工事課長・所長候補
主な役割
– 現場全体の工程・原価・品質・安全の統括
– 監理技術者としての立会い・行政検査対応
– 若手のOJT・工事係員の育成
取得を目指す資格
– 建築士(一級・二級)、コンクリート主任技士など、専門性の深堀り
50代|所長・エリア統括・技術指導
主な役割
– 大型現場の所長、または複数現場のエリア統括
– 会社の技術標準づくり・仕様書レビュー
– 若手・中堅への技術継承
転職・キャリアチェンジの選択肢
躯体系施工管理の経験は、以下のような転職ルートで活かせます。
- 品質管理・検査職への転職:施工管理から品質管理・検査職への転職
- 設計事務所・設計監理職への転職:構造図の読み込み経験が武器
- 発注者側(公務員・独立行政法人・URなど):発注者側で品質確保業務を担う
よくある質問(FAQ)
Q1|躯体工事は建築工事全体のどのくらいの割合を占めますか?
A. 工期では約6〜7割、原価では約3〜5割が目安とされ、規模・構造・地域で幅があります。建物全体のクリティカルパスを握るのが躯体工事のため、施工管理では最重要工程として扱われます。
Q2|1フロアあたりの躯体工事の期間はどのくらいですか?
A. RC造の中層建築では、1フロアあたり2〜4週間が目安です。柱・壁の配筋・型枠に1週間、梁・スラブに1週間、打設・養生・脱型に1〜2週間の内訳が一般的です。S造の建方は1〜2週間で骨組み完成、その後デッキ・打設と続きます。
Q3|施工管理の未経験者は躯体工事のどこから覚えればよいですか?
A. まずは図面読み込みと配筋検査の立会いから入るのが標準です。図面が読めれば配筋の位置・かぶり厚の判定ができ、配筋検査に立ち会うことで検査項目のチェックリストを実物と紐付けて覚えられます。図面の読み方は施工図の描き方の基本を参照してください。
Q4|配筋検査で不合格になるとどうなりますか?
A. 是正指示が出て、鉄筋を組み直したうえで再検査を受けます。是正内容が軽微であれば当日〜翌日で再検査、大きい場合は数日ずれることもあります。打設予定日を動かすと以降の工程全体に影響するため、事前の自主検査での指摘出し切りが重要です。
Q5|コンクリートの受入検査で不合格が出た場合はどうしますか?
A. 出荷を止め、生コン工場に連絡し、規格外ロットの原因を確認します。すでに打設していない範囲で戻すことになりますが、打設中断時のコールドジョイント対策を同時に検討する必要があります。
Q6|型枠支保工の組立て等作業主任者はいつ必要ですか?
A. 型枠支保工の組立て・解体作業を行う場合に、技能講習を修了した作業主任者の選任が必要です。労働安全衛生法・労働安全衛生規則の定めに基づき、事業者の責務として現場での選任義務があります。型枠工事の施工管理に選任要件をまとめています。
Q7|鉄骨造の建方で施工管理者が現場で見るべきポイントは何ですか?
A. 柱の垂直度(建入れ)、梁のレベル(水平度)、高力ボルトの本締めトルク、現場溶接部の非破壊検査結果、玉掛け・合図の安全管理が中心です。工場製作段階の原寸検査・製品検査に立ち会っておくと、現場での想定外を減らせます。
Q8|2024年問題は躯体工事の工程設計にどう影響しますか?
A. 時間外労働の上限規制(月45時間/年360時間、特別条項でも年720時間)を前提に、打設サイクルの計画、応援職方の手配、天候リスクの吸収期間を工程表に織り込む必要があります。従来の「押し込む工程」が難しくなり、余裕を持たせた工程計画と、遅延時の巻き返し手段の事前準備が求められます。
Q9|躯体工事の写真管理はどのように残せばよいですか?
A. 撮影計画(撮影対象部位・タイミング・立会人)を工事着手前に作成し、電子小黒板アプリで日付・寸法・部位を記録しながら撮影します。国土交通省の施工プロセス検査チェックシートなどが撮影計画の参考になります。
Q10|1級建築施工管理技士は躯体系のキャリアに必須ですか?
A. 監理技術者になるための代表的な資格要件の1つで、大型現場の所長・工事課長を目指す場合は事実上の前提となる傾向があります。2級でも主任技術者としてすべての工事現場(資格区分に対応する建設工事)の配置義務に対応できますが、担える現場規模で違いが出ます。詳細は1級建築施工管理技士の難易度を参照してください。
Q11|躯体工事と地下工事はどう関係しますか?
A. 地下工事(山留・杭・基礎)は躯体工事の前段階に位置し、基礎躯体(フーチング・基礎梁・耐圧盤)は躯体工事に含まれます。山留と鉄骨・鉄筋の取合い、基礎コンクリートの打継ぎ位置などは、地下工事段階から施工計画で調整します。
Q12|SRC造は現場で減っていますか?
A. 近年のオフィスビル・マンションでは、RC造・S造・CFT造(コンクリート充填鋼管構造)などが選択肢としてあり、用途・コスト・工期条件に応じて構造が選定されます。超高層マンション・大空間建築ではSRC造も継続的に採用されており、案件ごとの構造選定は設計与件・地盤・遮音などの条件を踏まえて判断されます。
Q13|躯体工事の施工管理でDX(BIM/CIM)はどこまで進んでいますか?
A. 大手ゼネコンの新築案件では、設計〜施工〜維持管理の一貫BIMが試行的に導入されています。中小・地方では2D図面ベースが主流で、電子小黒板・電子帳票などの部分的なデジタル化が進行中です。国交省のBIM/CIM原則適用(土木の一部案件)の広がりが、建築側の広がりにも影響しつつあります。
Q14|監理技術者と主任技術者の違いは躯体工事でどう関わりますか?
A. 監理技術者は元請工事のうち下請契約合計が一定額以上となる現場に配置義務があり、1級施工管理技士など特定の資格要件を満たす者が担います。主任技術者はすべての工事現場に配置義務があり、1級・2級のいずれも担えます。躯体工事の規模と契約形態で、どちらの立場で現場に入るかが変わります。詳細は監理技術者と主任技術者の違いを参照してください。
Q15|躯体工事の未経験からのキャリア形成はどのくらいの期間がかかりますか?
A. 担当工事係員として一通りの躯体工事を経験するのに約3年、工区リーダー・工事主任として1フロア全体を回せるようになるまで約5〜7年、所長候補として現場全体を統括するまで約10〜15年が一つの目安です。個人の担当規模・現場密度・資格取得ペースで幅があります。
まとめ
- 躯体工事は建築工事の工期の約7割を占める中核工事で、鉄筋・型枠・コンクリート打設・鉄骨・木造の5つが基本構成
- RC造は「墨出し→配筋→型枠建込→設備仕込→検査→打設→養生→脱型」を1フロアずつ繰り返す12ステップで進む
- S造は工場製作のリードタイムと現場建方の工程を分けて計画し、建入れ精度・本締め・溶接検査が管理の要点
- 施工管理はQCDS(品質・原価・工程・安全)別に観点を整理し、各工程で帳票・記録・写真を残すことで品質証跡を確保する
- 2024年問題(時間外労働上限規制)と担い手3法(2025年12月12日に全面施行済み)を前提に、余裕を持った工程設計が求められる
- 躯体系施工管理のキャリアは、担当工事係員→工区リーダー→工事課長・所長候補→エリア統括の4段階で進むのが標準
躯体工事の各工種の実務詳細は、鉄筋工事の施工管理ポイント・型枠工事の施工管理・コンクリート打設の施工管理にそれぞれまとめています。品質管理の体系的なチェック項目は品質管理 チェック項目、コンクリート技士の資格情報はコンクリート技士とは・難易度を合わせて参照してください。
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