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安全衛生管理計画書の作り方|建設業の記載8項目と作成8ステップ解説

安全衛生管理計画書の作り方|建設業の記載8項目と作成8ステップ解説

安全衛生管理計画書とは、建設現場での労働災害を未然に防ぐため、その工事における安全衛生方針・目標・管理体制・実施事項・リスクアセスメントの結果をまとめた計画書です。労働安全衛生法に基づく安全衛生管理の骨格ドキュメントで、多くの元請ゼネコンや公共工事案件では下請にも提出が求められることが多く、施工管理の実務上重要な書類として扱われます。

一方で、いざ書こうとすると「施工計画書との違いが分からない」「全建統一様式のどこを埋めればいいか迷う」「元請提出用と自社用でどこまで書き分ければいいのか判然としない」といった悩みが現場では絶えません。

本記事は、施工管理として初めて安全衛生管理計画書を作る若手から、所長候補として全体設計を任される中堅までを対象に、記載する8つの項目・作成の8ステップ・全建統一様式第6号との対応・元請下請の役割分担・2024年問題や担い手3法との整合を、実務ベースで整理します。読了後には、雛形を埋めるだけの計画書から、現場で回るPDCAの土台になる計画書へ書き方を切り替えられる構成にしています。

  1. 先に結論
  2. この記事で分かること
  3. 安全衛生管理計画書とは
    1. 定義と全体像
    2. 施工計画書との関係
    3. 3層で整理する意味
  4. 法的根拠と作成義務
    1. 労働安全衛生法とリスクアセスメント
    2. 労働者数による管理体制の分岐
    3. 元請と下請の責任分界
    4. 経審・入札・公共工事での位置づけ
  5. 記載する8項目
    1. 8つの基本骨格
    2. 各項目の実務ポイント
    3. 弱くなりやすい項目
  6. 作成の8ステップ
    1. 8ステップ早見表
    2. 各ステップの詳細
  7. リスクアセスメントの進め方
    1. 4段階の実施フロー
    2. 見積もりのシンプル例
    3. 工種別の代表リスクと低減措置例
  8. 実施事項とスケジュール設計
    1. 日常安全衛生活動6種
    2. 月次・週次・日次への落とし込み
    3. 2024年問題と作業時間管理の両立
    4. 熱中症対策の織り込み
  9. 元請と下請の役割分担
    1. 元請の役割
    2. 下請の役割
    3. 提出フロー(標準例)
  10. よくある失敗5パターン
  11. ケース別の書き方
    1. 1年目:初めて安全衛生管理計画書に触れる若手の場合
    2. 中堅:所長補佐として作成主担当を任された場合
    3. 所長候補:現場所長として全体設計を担う場合
    4. 地場・中小の場合
  12. 制度と法令の押さえどころ
    1. 施工管理技士制度と作成者の資格
    2. 第三次・担い手3法との整合
    3. 経審での位置づけ
    4. 記録保存の年限
    5. 改訂履歴とデジタル化
  13. よくある質問(FAQ)
    1. Q1. 安全衛生管理計画書と工事安全衛生計画書は同じものですか
    2. Q2. 安全衛生管理計画書の作成は法的に義務ですか
    3. Q3. 全建統一様式第6号は必ず使わなければいけませんか
    4. Q4. 計画書の作成期間の目安はありますか
    5. Q5. リスクアセスメントの結果はどこまで細かく書くべきですか
    6. Q6. 労働者数の数え方(10人・50人)は同じ場所の全就労者ですか
    7. Q7. 統括安全衛生責任者と元方安全衛生管理者はどう違いますか
    8. Q8. 下請の安全衛生管理計画書は自社の年間計画書とどう関係しますか
    9. Q9. 計画書の周知はどうすればいいですか
    10. Q10. 計画書は完成させたら終わりですか
    11. Q11. 熱中症対策はどこまで書くべきですか
    12. Q12. 労働災害の連絡フローはどこまで詳しく書くべきですか
    13. Q13. 経審や公共工事入札で計画書が加点対象になりますか
    14. Q14. 監理技術者・主任技術者は計画書の作成主体ですか
    15. Q15. デジタル化・BIM/CIMとの連動はどう進めればいいですか
  14. まとめ
    1. 年収・転職でお悩みの方へ

先に結論

  • 安全衛生管理計画書は 労働安全衛生法 を骨格に、方針・目標・体制・実施事項・リスクアセスメント・緊急時対応を1本にまとめた計画書で、法定義務が直接明記されているわけではないが、元請・発注者仕様書・COHSMS運用で 実質的に必須 の書類として運用されている
  • 記載する項目は ①基本情報 ②方針・目標 ③管理体制と組織図 ④重点実施事項 ⑤日常安全衛生活動 ⑥リスクアセスメント結果 ⑦緊急時対応 ⑧使用機械・資材・資格 の8つが基本骨格になる
  • 作成は ①現場条件の棚卸し→②法令・元請ルールの突合→③方針・目標→④体制と役割→⑤リスクアセスメント→⑥実施事項とスケジュール→⑦周知と承認→⑧PDCA・見直し の8ステップで進めると、雛形埋めではなく運用できる計画書になる
  • 元請と下請では役割が分かれ、元請は統括的な計画(統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者を核とする体制)下請は自社作業員に対する自主管理計画を作り、両者が 工事安全衛生計画書(全建統一様式第6号) で接続される構図が実務の骨格になる
  • 2024年問題(時間外労働の上限規制)第三次・担い手3法(2025年12月12日全面施行) の両方が定着した現在、安全衛生管理計画書は「働き方と安全の両立」まで書けることが求められる。休日・作業時間・体制の3点を計画書内で整合させる書き方に切り替える段階に入っている

この記事で分かること

  • 安全衛生管理計画書と施工計画書・工事安全衛生計画書・年間安全衛生計画書の違いと、3層構造での位置づけ
  • 建設業で押さえるべき労働安全衛生法上の要点(統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者・リスクアセスメント義務)
  • 記載すべき8項目と、全建統一様式第6号との対応マップ
  • 実務で回る作成8ステップと、各ステップで詰まりやすいポイント
  • 元請・下請それぞれの計画書のスコープと提出フロー
  • 2024年問題・担い手3法・熱中症対策強化などの制度動向を計画書にどう織り込むか
  • 若手から所長候補までのキャリア段階別の書き方の重心の置き方

安全衛生管理計画書とは

定義と全体像

安全衛生管理計画書は、「この工事(またはこの事業場)で、いつ・誰が・どんな安全衛生活動を、どの目標に向けて・どう記録して回すか」を1冊にまとめた計画書です。労働災害を未然に防ぐことが目的で、方針・目標・体制・実施事項・リスクアセスメント・緊急時対応をワンセットで束ねます。

似た名称の書類が複数あるため、まず全体像を早見表で把握しておくと迷いにくくなります。

書類名 スコープ 主な作成者 期間 位置づけ
年間安全衛生管理計画書 会社・事業場全体 事業場(本社/支店) 1年(会計年度) 会社全体の方針・目標・年間行事
工事安全衛生計画書(全建統一様式第6号) 個別工事現場 元請または下請 工期全期間 現場ごとの安全衛生活動の実行計画
安全衛生管理計画書(現場版) 個別工事現場 元請中心 工期全期間 上記2つを束ねた現場運営マニュアル的な計画書

日常的に「安全衛生管理計画書」と呼ばれるものは、現場版(工期単位) を指すケースが最も多く、実務では 工事安全衛生計画書とほぼ同義 で使われることも珍しくありません。本記事では、この現場版を中心に整理します。

施工計画書との関係

安全衛生管理計画書は、より大きな 施工計画書 の一部として整理されるケースが多い書類です。施工計画書は「工事全体をどう進めるか」を扱う総論であり、その中の安全衛生パートを厚めに独立させたものが安全衛生管理計画書だと理解すると位置関係がつかめます。

施工計画書全体の作り方は 施工計画書の書き方|必要な14項目とサンプル で整理しています。本記事はその中の安全衛生パートを深掘りする位置づけです。

3層で整理する意味

会社全体の方針(年間安全衛生管理計画書)、事業場・支店単位の方針、現場単位の実行計画(工事安全衛生計画書)は、それぞれ抽象度と対象が異なります。3層で整理する意味は次の3点にあります。

  • 抽象度の階段:会社方針を工事現場向けに翻訳する層が必要
  • 責任範囲の階段:本社の安全衛生管理者、事業場の統括、現場の元方安全衛生管理者や職長で管理者が変わる
  • PDCAの回し方の階段:年間・四半期・月次・日次で確認の頻度と粒度を変える

法的根拠と作成義務

労働安全衛生法とリスクアセスメント

安全衛生管理計画書は、労働安全衛生法にダイレクトに「作成せよ」と1条で書かれた書類ではありません。ただし、以下の複数の条項の受け皿として、実務上ほぼ必ず作成することになります。

  • 労働安全衛生法 第28条の2(危険性又は有害性等の調査等):事業者による危険性・有害性等の調査(リスクアセスメント)と、その結果に基づく必要な措置の実施が求められる(努力義務/建設業を含む一部業種は指針で強く推奨)
  • 労働安全衛生法 第10条〜第19条:総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医・作業主任者などの選任・職務
  • 労働安全衛生法 第15条・第16条:特定元方事業者による統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者の選任
  • 労働安全衛生法 第60条:職長等に対する安全衛生教育の実施

出典:厚生労働省 労働安全衛生法e-Gov 労働安全衛生法

計画書は、これらの要求事項を 「この現場では具体的にこう実現します」 と落とし込むためのドキュメントとして扱われます。したがって、作成義務そのものを条文で断定するのは正確ではありませんが、リスクアセスメント結果の記録・関係者への周知・体制の明示を含めた計画書の作成は、事実上のスタンダードです。

労働者数による管理体制の分岐

事業場の労働者数によって、選任すべき安全衛生の管理者が変わります。建設現場では、元請・下請を合わせた同一場所での就労者数 で数える場合があり、届出時に迷いやすい論点です。

労働者数の目安 選任・配置の目安 根拠
常時 10人以上50人未満 の事業場 安全衛生推進者 労働安全衛生法 第12条の2
常時 50人以上 の事業場 安全管理者・衛生管理者・産業医 労働安全衛生法 第10〜13条
特定元方事業者の労働者と関係請負人の労働者の合計が 常時50人以上 となる建設現場 統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者 労働安全衛生法 第15条・第15条の2
ずい道等・一定の橋梁工事・圧気工事 上記の合計が 常時30人以上 で選任義務 労働安全衛生規則 第18条の6

具体的な人数区分・対象工事の範囲は最新の労働安全衛生規則・告示で必ず確認してください。詳しくは 監理技術者と主任技術者の違い と併読すると、技術者制度との切り分けが整理しやすくなります。

元請と下請の責任分界

建設業の安全衛生管理は、元請の統括管理下請の自主管理 の二段構えです。安全衛生管理計画書もこの二段構えを反映して2種類作られるのが基本です。

主体 作成する計画書 スコープ
元請 現場全体の安全衛生管理計画書/工事安全衛生計画書 現場全体の方針・体制・混在作業の連絡調整・全社統一ルール
下請(協力会社) 自社作業員に対する工事安全衛生計画書(全建統一様式第6号) 自社が担う工種の実施事項・危険性有害性・自社作業員への教育

下請が作った計画書は元請へ提出され、元請の統括管理計画書へと組み込まれます。この提出・承認・反映のフローが、実務での「元請下請の統括安全衛生管理」の骨格です。

経審・入札・公共工事での位置づけ

経営事項審査(経審)は安全衛生管理計画書そのものを直接評価する制度ではありませんが、労働福祉状況の評価項目として、法定外労働災害補償制度への加入、労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS等)認証、労働災害防止協会(建災防)加入など、安全衛生体制の運用に関わる仕組みが評価対象になります。計画書の内容は、これらの仕組みを継続運用する土台として機能する位置づけです。詳しくは 施工管理 求人 見極め方 の記事も併読すると、企業選びの視点として整理しやすくなります。

記載する8項目

8つの基本骨格

安全衛生管理計画書に必ず入れておきたい項目は、次の8つです。全建統一様式第6号の記入欄と、実務での深掘りポイントを対応させて整理しました。

# 項目 主な記載内容 全建統一様式第6号の対応
1 基本情報 工事名/工期/場所/元請・下請名/作成日/責任者 表紙・枠外項目
2 安全衛生方針・目標 スローガン、数値目標(例:休業災害ゼロ、災害度数率○以下) 工事安全衛生方針・工事安全衛生目標
3 管理体制・組織図 統括安全衛生責任者/元方安全衛生管理者/安全衛生責任者/職長 安全衛生管理体制欄/別紙組織図
4 重点実施事項 墜落・転落防止/重機災害防止/熱中症予防/感染症予防 など 重点実施事項・工種別対策欄
5 日常安全衛生活動 朝礼・TBM・KY活動・安全パトロール・新規入場者教育・安全大会 日常の安全衛生活動
6 リスクアセスメント結果 危険性・有害性の特定/リスク見積もり/低減措置 危険性又は有害性の特定/リスクの見積もり/リスク低減措置
7 緊急時対応 連絡体制/応急処置/避難経路/医療機関・警察消防連絡先 緊急時の連絡体制欄/別紙
8 使用機械・資材・資格 クレーン・重機の作業計画/保護具/必要資格・特別教育 使用資機材・保護具・資格欄

出典:全国建設業協会 全建統一様式 記載例および解説(第6号の様式は同協会が策定・改訂している)

各項目の実務ポイント

  • ①基本情報:所在地は誰でも即たどり着ける番地・目印まで書く。緊急搬送の想定に直結する
  • ②方針・目標:数値目標を入れないと形骸化しやすい。「休業4日以上災害ゼロ」「墜落・転落災害ゼロ」など、災害の種類を絞る方が現場で機能する
  • ③管理体制:組織図は氏名だけでなく、資格(1級施工管理技士・監理技術者資格者証保持など)と役割を併記する
  • ④重点実施事項:工種別に3〜5個に絞る。全網羅は逆に印象が薄くなるため、リスクアセスメントで優先度上位に来たリスクへ絞る
  • ⑤日常安全衛生活動:頻度(毎日/週次/月次)・時間帯・記録様式・参加対象まで具体化する
  • ⑥リスクアセスメント結果:様式に埋めるだけでなく、「なぜそのリスクを選んだか」の背景を1〜2行添えると承認が通りやすい
  • ⑦緊急時対応:夜間・休日の連絡先、労災病院の受入時間、警察・消防・保険会社の連絡順序まで整理する
  • ⑧使用機械・資格:機械ごとに作業計画書との連番を振り、揚重計画・クレーン計画と参照関係を明確にする(揚重計画・クレーン計画の作り方 参照)

弱くなりやすい項目

実務で弱くなりやすいのは、次の3項目です。

  1. リスクアセスメントの結果と重点実施事項の連動:リスクアセスメントで挙げた上位リスクが重点実施事項に反映されていないケースが目立つ
  2. 日常安全衛生活動の記録様式の指定不足:「KY活動を朝礼時に実施」だけで、記録様式・保存年限まで書いていないと後の監査で困る
  3. 元請下請間の役割分担の言語化:「〇〇は元請が主導、××は下請主体」といった分界の明記が弱いと、いざ災害が起きた際の責任範囲でトラブルが生じやすい

作成の8ステップ

8ステップ早見表

ステップ 主な作業 施工管理の確認点
1 現場条件の棚卸し 立地・工種・工期・工程・関係者・過去労災
2 法令・元請ルールの突合 労安法・規則・元請安全衛生マネジメント指針
3 方針と目標の設定 数値目標・優先災害・全社方針との整合
4 管理体制と役割分担 統括/元方/安全衛生責任者/職長/産業医
5 リスクアセスメント 特定→見積もり→評価→低減措置
6 実施事項とスケジュール 日常活動・重点対策・年間行事の落とし込み
7 周知と承認 元請承認→朝礼周知→現場掲示
8 記録・見直し(PDCA) 月次レビュー・災害発生時見直し・完了時総括

各ステップの詳細

ステップ1|現場条件の棚卸し

工事のQCDSE(品質・原価・工程・安全・環境)の中でも、特に「立地条件」「工法」「主要機械」「並行作業」「近隣状況」を洗い出します。ここでの粒度が浅いと、あとのリスクアセスメントが薄くなります。過去の労災事例・ヒヤリハット記録(ヒヤリハットの書き方と事例 参照)は、同種工事の教訓として最初に確認すべき情報源です。

ステップ2|法令・元請ルールの突合

労働安全衛生法・労働安全衛生規則・ずい道等安全衛生特別教育や有機溶剤中毒予防規則など、工種に応じた個別規則を確認します。元請の安全衛生マネジメントシステム(COHSMS等) に沿う必要があるため、元請の統括安全衛生管理計画書の骨子を必ず先に読み込みます。

ステップ3|方針と目標の設定

「無災害」だけでは目標として弱いため、災害の種類を絞った具体目標 に落とし込みます。

  • 例:「墜落・転落による休業4日以上災害ゼロ」
  • 例:「重機・車両との接触災害ゼロ」
  • 例:「熱中症による搬送ゼロ(WBGT31℃以上時の作業手順順守100%)」

数値化できないものは、行動指標に置き換えます。「フルハーネス着用率100%」「新規入場者教育実施率100%」などです。

ステップ4|管理体制と役割分担

統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者・安全衛生責任者・職長 の位置関係を明確にします。特定元方事業者の労働者と関係請負人の労働者の合計人数が常時50人以上(一部工事は30人以上)となる現場では、統括安全衛生責任者と元方安全衛生管理者の選任が必要になります。

ステップ5|リスクアセスメント

特定→見積もり→評価→低減措置の4段階で進めます(次章で詳述)。

ステップ6|実施事項とスケジュール

年間・四半期・月次・週次・日次の階段でスケジュール化します。安全大会・安全パトロール・避難訓練・健康診断・熱中症対策日など、日付が特定できる行事は前もって固めます。日次のKY活動・朝礼・TBMとの重複がないかも確認します。

ステップ7|周知と承認

元請の承認を得たあと、朝礼で全作業員に周知します。掲示物(現場事務所内・仮設事務所前)と、新規入場者教育での使用(技能講習・特別教育の一覧 との連動)を組み合わせるのが標準です。

ステップ8|記録・見直し(PDCA)

月次の安全衛生協議会で計画書の実施状況を確認し、必要に応じて改訂します。労働災害・重大なヒヤリハット発生時は都度見直しを行い、改訂履歴を残します。工事完了時の総括は、次工事の年間安全衛生管理計画書・工事安全衛生計画書へフィードバックする材料として重要です。

リスクアセスメントの進め方

4段階の実施フロー

労働安全衛生法 第28条の2に基づく 危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)は、次の4段階で進めます。

  1. 危険性又は有害性の特定:作業手順書・過去労災・ヒヤリハット・作業観察から洗い出す
  2. リスクの見積もり:可能性(頻度)×重大性(結果の大きさ)を目安に評価する
  3. 優先度の決定:見積もりの高い項目から優先順位を付ける
  4. 低減措置の検討と実施:本質安全化→工学的対策→管理的対策→保護具着用の優先順位で検討する

出典:厚生労働省 リスクアセスメント

見積もりのシンプル例

可能性\重大性 大(死亡・後遺障害) 中(休業) 小(不休)
高い(頻繁)
中程度
低い
  • Ⅳ・Ⅴ:本質安全化・工学的対策で必ずリスクを下げる(作業自体を止める判断も含む)
  • Ⅱ・Ⅲ:管理的対策と保護具の徹底で運用する
  • :現状維持でも許容できるが、記録は残す

工種別の代表リスクと低減措置例

工種 代表リスク 低減措置例
土工 掘削面の崩壊、埋設物損傷、機械との接触 土留支保工、事前地下埋設物調査、誘導員配置(土工事 施工管理 参照)
鉄筋・型枠 転倒、墜落、鉄筋先端貫通 開口部養生、フルハーネス、鉄筋キャップ
鉄骨 建方時の墜落、玉掛け中の落下 親綱設置、玉掛け作業手順書、風速停止基準
内装 溶剤中毒、粉じん、火気養生 有機溶剤取扱注意、局所排気、火気養生・消火器
解体 石綿ばく露、飛来落下、粉じん 事前調査、養生シート、レベル別作業手順(解体工事 施工管理 石綿 参照)
舗装 熱中症、車両との接触、重機との接触 WBGT測定、交通誘導員、合材温度管理

実施事項とスケジュール設計

日常安全衛生活動6種

現場で毎日回す活動を、頻度と担当で整理します。

活動 頻度 主担当 記録様式の例
朝礼 毎日 元請所長・工事担当 朝礼記録
TBM(ツールボックスミーティング) 毎日 職長 TBM記録
KY活動(危険予知活動) 毎日 職長・作業員 KY活動シート(KY活動のやり方とネタ
安全パトロール 週1回以上 元請安全担当 安全パトロール記録
新規入場者教育 入場都度 元請安全担当 新規入場者教育記録
安全衛生協議会 月1回 統括安全衛生責任者 議事録

月次・週次・日次への落とし込み

頻度 主な内容
月次 安全衛生協議会・パトロール総括・改善計画レビュー・災害統計報告
週次 安全パトロール・危険作業事前打合せ・翌週工程との連動
日次 朝礼・TBM・KY・巡視・作業終了時報告

2024年問題と作業時間管理の両立

2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています。原則は 月45時間/年360時間、特別条項付き36協定がある場合でも 年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計で 単月100時間未満/複数月平均80時間以内 が上限です。違反企業には 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 が科されます。災害復旧・復興工事には一部の制限緩和特例があります(出典:厚生労働省 時間外労働の上限規制)。

安全衛生管理計画書には、上記を踏まえて 「作業時間・休憩・休日の設計」 をパートとして盛り込みます。長時間労働そのものが疲労由来の労災リスクを高めるため、時間管理は安全対策の中核として扱う設計が望ましいです。

4週8閉所 は日建連が推進する4週間で8日間の現場閉所を意味する業界指標で、完全週休2日制(労働者個人が毎週2日休日を取得する労務概念)とは別物です。閉所=個人の休日とは限らない点を、計画書内でも切り分けて記載します。詳しくは 建設業の4週8閉所 を参照してください。

熱中症対策の織り込み

夏季は熱中症予防対策の記載を厚くします。WBGT測定・作業休憩の目安・水分塩分補給・仮設休憩所・搬送体制・関係者への周知を、計画書と別紙で整合させます。厚生労働省の職場における熱中症対策を出典に、対策の最新版を反映してください。

元請と下請の役割分担

元請の役割

  • 現場全体の安全衛生方針・目標の設定
  • 統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者の選任
  • 混在作業の連絡調整
  • 下請計画書の統合・承認
  • 安全衛生協議会・安全パトロールの主催
  • 労働災害発生時の統括対応

下請の役割

  • 自社作業員に対する工事安全衛生計画書(全建統一様式第6号)の作成
  • 職長・安全衛生責任者の選任
  • 自社作業員の教育(新規入場者教育・特別教育・技能講習)
  • リスクアセスメントの実施と低減措置の履行
  • 元請への日常報告・災害報告

提出フロー(標準例)

  1. 契約時に元請から様式の指定(多くは全建統一様式第6号)
  2. 下請が自社の工事安全衛生計画書を作成
  3. 元請へ提出(着工前2週間目安)
  4. 元請の安全担当が内容確認・承認
  5. 承認後、元請の統括安全衛生管理計画書へ組み込み
  6. 朝礼・掲示・新規入場者教育で全作業員に周知
  7. 月次協議会で見直し

よくある失敗5パターン

  • 雛形丸写しで数値目標が全社共通のまま → 現場ごとの実情に合わせて数値化する
  • リスクアセスメントの結果と実施事項が連動していない → 上位リスクをそのまま重点実施事項に落とす
  • 元請の指定様式を確認せず自社様式で提出 → 契約時・キックオフ時に必ず様式を確認
  • 緊急連絡先が本社番号だけで、夜間・休日ルートがない → 携帯番号・当直・警察消防・搬送先を1枚に整理
  • 月次見直しが形骸化してPDCAが止まる → 安全衛生協議会での見直しを議事録化し、次月方針へ反映

ケース別の書き方

1年目:初めて安全衛生管理計画書に触れる若手の場合

  • 元請提出用の下請計画書のドラフトを、先輩と一緒に埋める役割から入る
  • KY活動・TBM・朝礼といった日次活動の記録係を担うことで、計画書のどの部分がどの記録に結びつくかを体で理解する
  • 全建統一様式第6号を印刷し、記入欄と対応する現場の書類・掲示物をヒモ付けする

中堅:所長補佐として作成主担当を任された場合

  • 現場条件の棚卸しからリスクアセスメント・体制設計までの上流工程を主導する
  • 元請の安全衛生マネジメント指針を熟読し、自社計画書との差分を洗い出す
  • 月次の安全衛生協議会の議長役として、PDCA運用まで責任を持つ

所長候補:現場所長として全体設計を担う場合

  • 元請の統括安全衛生管理計画書と、下請各社の工事安全衛生計画書を束ねる立場に立つ
  • 会社としての年間安全衛生管理計画書との整合を確保する
  • 2024年問題・担い手3法・熱中症対策・BIM/CIMなど、制度と現場の橋渡しを計画書で表現する

地場・中小の場合

  • 元請下請双方の役割を1人で担うケースも多いため、様式は全建統一様式第6号か、地元建設業協会の推奨様式を土台にする
  • 選任義務(労働者数区分)を最新の法令で確認し、無理のない体制で書く
  • 過度な数値目標より、実施率100%を狙える行動指標に寄せる

制度と法令の押さえどころ

施工管理技士制度と作成者の資格

安全衛生管理計画書自体は資格による作成制限はありませんが、実務では主任技術者・監理技術者が方針決定に関与するケースが大半です。1級施工管理技士は監理技術者になれる代表的な資格で、特定建設業の許可が必要となる元請工事のうち下請契約合計が一定額以上となる現場で配置されます。2級は主任技術者として、すべての工事現場の配置義務に対応する資格です。配置基準は国土交通省監理技術者制度運用マニュアルの最新版で確認してください。

なお、2024年度から施工管理技術検定の受検資格が改正されており、第一次検定は年齢要件を中心に受検しやすくなっています。第二次検定の実務経験要件などの詳細は、一般財団法人建設業振興基金一般財団法人全国建設研修センター の最新案内で確認してください。

第三次・担い手3法との整合

建設業法・入契法・品確法を一体改正した第三次・担い手3法は、2024年6月に公布され、改正事項ごとに段階的な施行を経て、2025年12月12日に全面施行に至ったとされています。3本柱は①労務費の基準・処遇改善、②資材高騰時の労務費しわ寄せ防止、③働き方改革・生産性向上です。個別の施行状況は国交省の公表資料の最新版で確認してください(出典:国土交通省 第三次・担い手3法)。

安全衛生管理計画書には、③働き方改革・生産性向上の観点から、閉所日・時間外労働・書類簡素化・ICT活用 を織り込むことが求められる段階に入っています。

経審での位置づけ

経営事項審査(経審)では、労働福祉状況の評価項目として、雇用保険・健康保険・厚生年金の加入、退職一時金・企業年金制度、法定外労働災害補償制度、労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS等)認証、建災防加入、CCUS事業者認定などが並びます。安全衛生管理計画書の内容とこれらの認証・加入状況は、企業評価に直結します。詳細は国土交通省 経営事項審査制度で確認してください。

記録保存の年限

安全衛生管理計画書と関連記録の保存年限は、関係法令・発注者の仕様書・契約書・社内文書規程 の複数レイヤーで決まります。労働安全衛生規則の記録保存年限(例:健康診断個人票5年・雇入れ時健康診断5年など)や、発注者仕様書での指定(公共工事では竣工引渡後○年など)を確認したうえで、社内規程で最も長い年数に統一する運用が現実的です。

改訂履歴とデジタル化

計画書の改訂は、日付・改訂理由・改訂箇所・承認者 を1枚の改訂履歴表に残します。労働災害発生時の見直しでは、改訂前後の差分と根拠を明確にすることで、以降の類似災害防止に活かせます。安全衛生管理計画書はPDF・Excelで電子化し、施工体制台帳・工事写真管理(工事写真の撮り方と基準 参照)と一元管理するのが標準になりつつあります。BIM/CIMや建設DXツールとの連動も進んでいます。

なお、タテルート編集部が 2026年6月中旬〜7月中旬総合転職媒体・建設特化転職媒体・地元求人サイトの主要4媒体・約80件 の施工管理職公開求人(首都圏・関西圏中心、正社員限定、派遣・海外・雇用形態不明は除外、同一企業複数媒体は1件換算)を確認した範囲では、「安全衛生管理計画書の作成経験」や「安全衛生協議会の運営」を必須条件として明記する求人は限定的でしたが、想定業務内容欄で「安全書類の作成・提出」「安全衛生管理」の表現を含む求人は多く見られました。数値は編集部の求人観測ベースの参考値で、公的統計ではありません。

よくある質問(FAQ)

Q1. 安全衛生管理計画書と工事安全衛生計画書は同じものですか

一般に現場単位の実行計画 としては同義で扱われることが多く、全建統一様式第6号(工事安全衛生計画書)を安全衛生管理計画書と呼ぶ現場も少なくありません。会社全体の年間計画(年間安全衛生管理計画書)とは、対象範囲と期間が異なる点だけ切り分けて理解してください。

Q2. 安全衛生管理計画書の作成は法的に義務ですか

「安全衛生管理計画書」という書類そのものを名指しで作成義務化した法令条文は存在しませんが、労働安全衛生法第28条の2(危険性又は有害性等の調査等)や、第15条・第16条(統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者)に基づく管理を実行するうえで、実質的に不可欠な書類として運用されています。

Q3. 全建統一様式第6号は必ず使わなければいけませんか

法定の指定様式ではありませんが、多くの元請ゼネコンが全建統一様式第6号を指定・推奨しているため、事実上の標準様式として広く使われています。元請の指定に従うのが実務の基本です。

Q4. 計画書の作成期間の目安はありますか

工事規模により幅がありますが、着工前2〜4週間前から準備を始める のが実務の目安です。現場条件の棚卸し→リスクアセスメント→計画書作成→元請承認まで含めると、余裕を持ったスケジュールが必要になります。

Q5. リスクアセスメントの結果はどこまで細かく書くべきですか

上位のリスク(見積もり評価がⅢ以上)は、危険性・有害性の特定、リスクの見積もり、低減措置を1件1行で明記します。上位でないリスクも記録として残しますが、重点実施事項に反映するのは上位に絞ります。

Q6. 労働者数の数え方(10人・50人)は同じ場所の全就労者ですか

建設業では、特定元方事業者の労働者と関係請負人の労働者の合計 で数える場面(統括安全衛生責任者の選任基準など)があります。会社ごと・事業場ごとの数え方(安全管理者・衛生管理者の選任基準など)とは異なるため、労働安全衛生規則で対象と数え方を必ず確認してください。

Q7. 統括安全衛生責任者と元方安全衛生管理者はどう違いますか

統括安全衛生責任者 は特定元方事業者の統括安全衛生管理を統括する立場で、その事業場の労働者と関係請負人の労働者数の合計が常時50人(一部の工事では30人)以上の建設現場で選任されます。元方安全衛生管理者 は、統括安全衛生責任者の指揮のもとで技術的事項を管理する立場で、選任要件を満たす学歴・実務経験・資格の技術者を配置します。

Q8. 下請の安全衛生管理計画書は自社の年間計画書とどう関係しますか

下請でも、会社全体の年間安全衛生管理計画書(本社・支店の方針)を持つのが標準です。各現場の工事安全衛生計画書(全建統一様式第6号)は、その年間計画の方針・目標を現場に落とし込む位置づけで作成します。

Q9. 計画書の周知はどうすればいいですか

朝礼での説明、現場事務所内・仮設事務所前への掲示、新規入場者教育での使用、電子データでの共有を組み合わせます。非常駐現場代理人の現場でも、書面と電子データの2重で周知できるよう設計します。

Q10. 計画書は完成させたら終わりですか

いいえ。工事期間中は月次の安全衛生協議会で実施状況を確認し、必要に応じて改訂します。労働災害・重大なヒヤリハット・工事内容の大きな変更が発生した場合も改訂し、履歴を残します。

Q11. 熱中症対策はどこまで書くべきですか

WBGT測定・作業休憩の目安・水分塩分補給・仮設休憩所・搬送体制・関係者への周知を、計画書と別紙で整合させます。厚生労働省の職場における熱中症予防対策の最新版を出典として参照し、暑熱環境下の労働者早期把握・報告体制・作業手順見直し・関係者周知の項目を反映してください。

Q12. 労働災害の連絡フローはどこまで詳しく書くべきですか

第一報(現場→本社/元請)→ 二次連絡(労基署/保険会社/搬送先)→ 三次連絡(家族/関係先) の3段階で書き、時間帯(日中/夜間/休日)別の連絡順序を1枚の表にまとめます。労働者死傷病報告や労働災害統計調査の提出フローも含めて整理します。

Q13. 経審や公共工事入札で計画書が加点対象になりますか

計画書そのものが直接加点されるというより、労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS等)の認証・建災防加入・CCUS事業者認定 など、計画書運用の裏付けとなる仕組みが評価対象になる構図です。計画書の質は、これらの仕組みを継続運用できるかどうかの土台になります。

Q14. 監理技術者・主任技術者は計画書の作成主体ですか

計画書自体は元請の安全衛生担当・安全衛生責任者が主に作成しますが、主任技術者・監理技術者は方針決定・体制整備の意思決定に関与 します。1級施工管理技士は監理技術者になれる代表的な資格で、経審では監理技術者として、2級は主任技術者として加点対象になります。

Q15. デジタル化・BIM/CIMとの連動はどう進めればいいですか

計画書自体はPDF・Excelで電子化するのが第一段階で、施工体制台帳・工事写真管理・工程表・作業計画書との相互参照をリンクで結ぶ形が現実的です。BIM/CIM原則適用の工事では、3Dモデル上でのリスク箇所ハイライトや、遠隔臨場での安全確認との連動も進んでいます(ICT施工とは 参照)。

まとめ

  • 安全衛生管理計画書は、労働災害を防ぐための方針・目標・体制・実施事項・リスクアセスメント・緊急時対応を束ねた計画書で、名指しの法定義務はないものの、労働安全衛生法と元請運用によって実務上ほぼ必須
  • 記載事項は ①基本情報 ②方針・目標 ③管理体制 ④重点実施事項 ⑤日常安全衛生活動 ⑥リスクアセスメント ⑦緊急時対応 ⑧使用機械・資格 の8項目が骨格
  • 作成は ①現場条件棚卸し→②法令元請突合→③方針目標→④体制→⑤リスクアセス→⑥実施事項スケジュール→⑦周知承認→⑧PDCA の8ステップで
  • 元請は統括管理計画、下請は自主管理計画(全建統一様式第6号)の二段構えで作り、朝礼・掲示・新規入場者教育で全作業員に周知する
  • 2024年問題(時間外労働上限規制)と担い手3法(2025年12月12日全面施行)が定着した現在、計画書は「働き方と安全の両立」まで書ける水準に更新するタイミング

安全衛生管理計画書は、キャリアが進むほど「所長として現場をどう運営したいか」を体現するドキュメントに変わります。若手のうちは記入例を追いかけ、中堅からは自分の判断を計画書の言葉に落とせるように書き方を鍛えていく順序が現実的です。

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