建設業の退職金とは、建設業に従事した労働者が退職時に受け取る一時金または年金のうち、「建退共(建設業退職金共済)」「中退共」「自社の退職一時金制度」「企業年金(確定給付DB/確定拠出DC)」といった複数の制度を組み合わせて構築されるもので、企業規模・制度設計・勤続年数・退職理由によって金額が大きく変動する仕組みです。同じ勤続年数でもスーパーゼネコンと地場中小では受給額が数百万円〜数千万円単位で開くため、施工管理職・技能者双方にとって会社選びの重要な判断材料になります。
「建設業は退職金が薄い」というイメージだけで判断すると、自社独自制度+企業年金+建退共の三段構えを整えている中堅・大手を見落とし、逆に「大手ならどこも同じ」と考えると、DB廃止でDC移行済みの企業やそもそも制度自体を整えていない準大手を掴んでしまうリスクがあります。
本記事は、東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」・建設業退職金共済事業本部の公開資料・上場ゼネコン各社の有価証券報告書などの一次情報と、タテルート編集部の求人票観測を突き合わせて、建設業の退職金相場を「制度別/規模別/勤続年数別/年代別」に整理し、求人票・面接で確認すべき項目までを実務目線でまとめました。
- 先に結論
- この記事で分かること
- 建設業の退職金相場の全体像|制度別・規模別・勤続年数別の要約
- 建設業の退職金とは|4つの制度と全体像
- 建設業退職金共済(建退共)の仕組みと相場
- 中退共・企業年金(DB/DC)の違いと相場
- 東京都産業労働局データに基づく勤続年数別モデル退職金
- 企業規模別の退職金相場レンジ
- 転職時の退職金の通算・移管ルール
- 退職金ゼロ・少額リスクの見分け方(求人票・面接での確認10項目)
- ケース別の退職金設計(年代別)
- よくある失敗と対策
- 制度接続|担い手3法・2024年問題・監理技術者との関係
- よくある質問(FAQ)
- Q1. 建設業の退職金は他業種より少ないですか?
- Q2. 建退共だけで老後の生活は十分ですか?
- Q3. 退職金の税金はどう計算されますか?
- Q4. 一人親方でも退職金は準備できますか?
- Q5. 転職すると退職金はリセットされますか?
- Q6. 退職金なしの企業はブラックですか?
- Q7. 建退共の証紙は自分で買うのですか?
- Q8. スーパーゼネコンの退職金は本当に3,000万円台になりますか?
- Q9. DBとDC、どちらが有利ですか?
- Q10. 会社が倒産したら退職金はどうなりますか?
- Q11. 30代前半で転職すると退職金はどのくらい失いますか?
- Q12. 中小企業でも企業年金は導入されていますか?
- Q13. 退職金と年収、どちらを優先すべきですか?
- Q14. 独立・フリーランスは退職金がないから不利ですか?
- Q15. 建設業の退職金は今後どうなりますか?
- まとめ
先に結論
- 建設業の退職金制度導入率は 76.1%(東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」令和6年版・都内中小企業の集計値)で、全産業平均と比べて特別に低いわけではありません。
- 東京都内中小企業の建設業モデル退職金は、大卒・勤続10年で108.8万円(自己都合)/141.4万円(会社都合)、勤続30年で580.5万円(自己都合)/633.8万円(会社都合) が目安(同上)。
- 建退共は「日額320円(2021-10-01改定)×積立日数」で計算され、勤続10年(年間就業250日換算・積立2,500日)で約70万円 が試算目安(建設業退職金共済事業本部の試算例)。
- スーパーゼネコン・準大手層は 自社退職一時金+確定給付企業年金(DB)または確定拠出年金(DC)+建退共 の3階建てで、勤続年数・役職・退職理由による差はあるものの 高水準となる傾向 が見られます(有価証券報告書の退職給付債務は全社員合算の会計数値であり、個人の受給額そのものではないため、応募先の就業規則・退職金規程で個別確認が前提)。
- 会社選びでは「退職金制度の種別」だけでなく、支給規程・勤続年数要件・自己都合減額率・企業年金の運用主体・DC移換の可否 の5項目を求人票と面接で必ず確認するのが実務上の要となります。
この記事で分かること
- 建設業の退職金制度4種類(建退共/中退共/自社一時金/企業年金DB・DC)の違いと使い分け
- 東京都産業労働局データに基づく 勤続年数別モデル退職金金額(大卒・高卒・自己都合・会社都合の8区分)
- 建退共の掛金日額320円と積立日数から逆算する キャリア別の受給シミュレーション
- スーパーゼネコン/準大手/中堅/地場/サブコン/一人親方の 企業規模別退職金レンジ目安
- 転職時の退職金の 通算・移管ルール(建退共の日数通算/中退共・DCの資産移管)
- 退職金ゼロ・少額のリスクを見抜くための 求人票と面接の確認10項目
- 20代/30代/40代/50代の 年代別退職金設計 とキャリア意思決定への織り込み方
建設業の退職金相場の全体像|制度別・規模別・勤続年数別の要約
まず、以降の各章で扱う相場感を1枚で把握できるよう、制度別・規模別・勤続年数別の要約を整理しました。各行は本記事の該当章で出典・母集団・算出方法を掘り下げます。
| 区分 | 相場・目安 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 建退共(勤続10年・年250日換算) | 約70万円 | 建退共本部 試算例(掛金日額320円) |
| 建退共(勤続35年・年250日換算) | 約620万円 | 建退共本部 試算例 |
| 中退共(月額掛金10,000円・30年加入) | 約470〜520万円 | 勤労者退職金共済機構 中退共シミュレーション |
| 都内中小・建設業(大卒・勤続10年・自己都合) | 108.8万円 | 東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」令和6年版 |
| 都内中小・建設業(大卒・勤続30年・自己都合) | 580.5万円 | 同上 |
| 都内中小・建設業(大卒・勤続30年・会社都合) | 633.8万円 | 同上 |
| スーパーゼネコン層(勤続30〜35年・定年退職) | 高水準となる傾向(個人の受給額は公開資料からの一律比較困難) | 各社有価証券報告書「退職給付関係」の傾向・編集部求人観測 |
| 中堅・地場・専門工事(勤続30〜35年・定年退職) | 数百万〜1,800万円のばらつき | 求人票観測・東京都データ・編集部整理 |
以降の章で、この要約表の各行を「制度の設計」「モデル金額」「求人票・面接での確認項目」に分けて掘り下げます。
建設業の退職金とは|4つの制度と全体像
建設業の退職金は、「建退共」「中退共」「自社の退職一時金制度」「企業年金(確定給付DB/確定拠出DC)」という4つの制度のいずれか、または複数の組み合わせで構成されます。単一の制度だけで完結する業界ではなく、企業の規模・許可業種・従業員構成によって設計が変わる点が特徴です。
4制度の役割の違い
各制度は「対象者」「掛金負担者」「受給時期」「税制」の観点でそれぞれ異なる位置づけになります。まずは全体像を1枚の表で把握しておくと、以降の各章で扱う相場金額の意味を整理しやすくなります。
| 制度 | 対象者 | 掛金負担者 | 主な特徴 | 主な出典 |
|---|---|---|---|---|
| 建退共(建設業退職金共済) | 建設業に従事する労働者(現場で就労する技能者・現場職員が中心。管理部門は各社設計により対象外の場合あり) | 事業主(証紙貼付または電子申請) | 事業主が変わっても日数通算/経審加点/掛金は損金・必要経費 | 建設業退職金共済事業本部 |
| 中退共(中小企業退職金共済) | 中小企業(従業員数・資本金要件あり)の全従業員 | 事業主(月額掛金) | 事務職・管理部門で使われる/建退共と併用可 | 独立行政法人 勤労者退職金共済機構 |
| 自社退職一時金制度 | 各社の就業規則で定める従業員 | 事業主(内部留保) | 支給規程・勤続要件・退職理由で金額決定/中堅以上で普及 | 各社就業規則・退職金規程 |
| 企業年金(DB/DC) | 各社の規程で定める従業員 | DB=事業主中心/DC=事業主拠出+従業員任意拠出 | 大手ゼネコン・準大手中心/退職金の一部を年金形式で受給 | 各社有価証券報告書「退職給付関係」 |
建退共と中退共の使い分け
建退共と中退共は同じ「勤労者退職金共済機構」が運営する制度ですが、建設業では以下のように使い分けるのが実務上の一般型です。
- 現場で働く 技能者・現場職員 は建退共(事業主変更に強く、日雇い・臨時雇用に対応)
- 本社勤務の 事務職員・管理部門・営業部門 は中退共
- 施工管理職は企業の方針により 建退共のみ/中退共のみ/両方併用 のいずれもあり得る
建退共は「掛金は損金扱い」「経営事項審査(経審)で加点対象」というメリットがあり、公共工事の入札を継続する中小・中堅企業では加入が事実上の前提になっているケースが多く見られます(国土交通省「建退共制度の解説」)。
制度導入率の実態
建設業の退職金制度の導入率は、東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」の集計で 76.1% と報告されています(対象=都内中小企業)。全産業平均を大きく下回るわけではありませんが、規模別に見ると 従業員10〜49人の小規模層で導入率が下がる傾向 があり、下記の求人観測でもその傾向と整合します。
タテルート編集部が 2026年7月〜8月に建設業の中途採用求人約90件(対象媒体:主要建設特化型3媒体+総合型3媒体/対象職種:施工管理職・技能者・現場事務/首都圏および関西圏中心/抽出条件:正社員枠のみ・重複除外)を確認した範囲では、以下の傾向が見られました。
- スーパーゼネコン・準大手(従業員1,000人以上):退職金制度の記載が ほぼ全件 に存在
- 中堅ゼネコン・大手サブコン(従業員300〜999人):約9割 が記載あり、うち多くが建退共+自社制度の併用
- 中小地場・専門工事(従業員100人未満):約6〜7割 に記載あり、建退共単独の場合が多い
なお、この観測値は全国の建設業全体を代表する統計ではなく、あくまで首都圏・関西圏の中途採用求人票を対象とした編集部の探索的な集計です。応募企業ごとに最新の労働条件通知書・就業規則で確認するのが前提となります。
企業別の福利厚生の網羅的な整理は建設業 福利厚生 充実|大手ゼネコンから中小まで比較で解説しています。本記事は退職金の相場・金額差・会社選びの判断軸に絞って深掘りします。
建設業退職金共済(建退共)の仕組みと相場
建退共は、建設業に従事する労働者(元請・下請問わず)を対象とした退職金共済制度です。事業主が掛金を負担し、労働者が建設業から退くとき(または60歳以上で退職するとき)に退職金が支給されます。
掛金日額と積立方式
建退共の掛金日額は 1日320円(2021年10月1日改定)で、事業主が「共済証紙貼付方式」または「電子申請方式」で納付します(建設業退職金共済事業本部「掛金・共済証紙」)。労働者は建退共手帳(または電子申請の記録)に日数が積み立てられ、その積立日数に応じて退職金が計算されます。
- 証紙貼付方式:事業主が公共工事等の代金の一部で証紙を購入し、手帳に貼付
- 電子申請方式:2020-10-01改正で追加。ペイジー等でポイント購入→就労日数に応じ充当
建退共では「積立日数(月額換算21日/年間換算250日程度)」を基準に受給額が決まる点が、期間そのもので計算する中退共や自社制度と大きく異なります。
キャリア別の受給シミュレーション
建退共の退職金は「積立日数 × 支給単価(円/日)」で計算され、支給単価は積立日数が長くなるほど段階的に上がる設計です(建設業退職金共済事業本部「退職金試算」)。年間就業日数を250日と仮定した場合の目安は以下のとおりです。
| 勤続年数 | 積立日数(年250日換算) | 建退共の退職金試算目安 |
|---|---|---|
| 5年 | 1,250日 | 約25〜30万円 |
| 10年 | 2,500日 | 約70万円 |
| 15年 | 3,750日 | 約135万円 |
| 20年 | 5,000日 | 約230万円 |
| 25年 | 6,250日 | 約340万円 |
| 30年 | 7,500日 | 約470万円 |
| 35年 | 8,750日 | 約620万円 |
| 40年 | 10,000日 | 約780万円 |
上記は「年間250日就業(4週8閉所を意識した現場稼働ペース)」を前提とした概算値で、実際の受給額は積立日数・段階的支給単価・退職時の制度改定を反映して建退共の試算ツールで個別に確認するのが確実です。掛金日額改定が過去にも複数回行われているため、長期加入者は「改定前後の期間で異なる単価が適用される」点にも留意が必要です。
経審加点と公共工事での位置づけ
建退共への加入は経営事項審査(経審)で加点対象となり、公共工事の入札を続ける建設業者にとって実務上の前提になっています。加点は「労働福祉の状況(W1)」の項目で評価され、他の労働福祉制度(法定外労災保険・退職金制度・企業年金など)と合わせて評価されます(国土交通省「経営事項審査制度」)。
このため、公共工事の受注が主軸の建設業者では、社員の福利厚生というだけでなく 経審のW1項目対策としても建退共を導入している ケースが多くあります。求人票に「建退共加入」の記載があるかどうかは、その企業が公共工事を継続受注する体制を維持しているかを推測する手がかりの1つとなります。
建退共のメリットと注意点
建退共のメリットは、転職時の日数通算 と 税制優遇 の2点に集約されます。
- 日数通算:建退共に加入している別の事業主に転職しても、積立日数が引き継がれる。生涯を建設業で過ごす技能者にとってはメリットが大きい
- 税制:事業主の掛金は損金(法人)/必要経費(個人事業主)として全額算入可能
- 退職金の受取り:原則一時金で受給。所得税法上の退職所得控除の対象
一方で注意点として、以下の点は面接時に確認する価値があります。
- 掛金納付月数が 12ヶ月未満で退職 すると原則として退職金が支給されない(掛捨てとなる)
- 一人親方は「任意組合」経由でのみ加入可能(個人単独では加入不可)
- 建退共のみでは、中堅以上の企業水準の退職金額には届かないため、自社制度・企業年金との組み合わせ が事実上必須
建退共の掛金日額と積立方式は業界慣行として定着しているため、施工管理職として長くキャリアを積むなら「建退共+自社制度+DB/DC」の3階建てが整った企業を選ぶのが基本戦略になります。会社選び全般の判断軸は施工管理 ホワイト企業 見分け方にも整理しています。
中退共・企業年金(DB/DC)の違いと相場
建退共だけでは受給額が伸びづらいため、中堅・大手企業では中退共や企業年金と組み合わせるのが一般的です。
中退共の基本設計
中退共(中小企業退職金共済制度)は、中小企業の従業員を対象とした退職金共済で、月額5,000円〜30,000円の掛金を事業主が負担します。建退共とは異なり、期間ベース(月数) で退職金が計算される点が特徴で、事務職員・管理部門・営業部門で用いられるケースが多く見られます。
- 月額掛金5,000円で30年加入すると、退職金は約230万〜260万円台の水準に到達(勤労者退職金共済機構「中退共」試算 の公表シミュレーションを踏まえた目安)
- 月額掛金10,000円なら30年加入で約470万〜520万円のレンジ
- 月額掛金20,000円なら30年加入で約940万〜1,040万円のレンジ
建退共と中退共は併用可能で、「現場に出る施工管理職・技能者は建退共/内勤の管理部門は中退共」という運用が中小・中堅で広く見られます。
確定給付企業年金(DB)と確定拠出年金(DC)
大手ゼネコン・準大手層では、退職金の一部を企業年金として支給する設計が主流です。企業年金は主に以下の2種類で構成されます。
| 項目 | 確定給付企業年金(DB) | 企業型確定拠出年金(DC) |
|---|---|---|
| 給付額 | あらかじめ規約で決定 | 拠出額の運用実績で変動 |
| 掛金 | 事業主中心(従業員拠出はマッチング拠出可) | 事業主拠出+従業員のマッチング/iDeCo併用 |
| 運用主体 | 企業・年金基金・信託銀行等 | 従業員本人(運用指図) |
| 転職時 | 制度により通算・移換の可否が分かれる | 個人型iDeCo・転職先DCへ資産移換可能 |
| 主な出典 | 厚生労働省「確定給付企業年金」 | 厚生労働省「確定拠出年金」 |
DBは「規約で決まる」ため受給額の予測がしやすく、DCは「運用次第で増減する」ため転職に対応しやすいという性格差があります。近年は、退職給付債務の会計処理や運用リスクの観点から DBを縮小してDCに移行 する上場ゼネコンも増えており、有価証券報告書「退職給付関係」で各社の設計を確認できます(金融庁 EDINET で「退職給付」で検索)。
企業年金は個人ごとの受給額を各社が公表しているわけではありませんが、有価証券報告書の「退職給付債務」から企業全体としての退職給付水準の傾向は読み取れます。ただし、退職給付債務は全従業員合算の会計上の数値であり、個人の受給額そのものではない点には留意が必要です。
東京都産業労働局データに基づく勤続年数別モデル退職金
建設業の退職金の相場を勤続年数別に押さえる際、最も参照されるのが東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」の集計です。この調査は都内中小企業を対象としており、大企業やスーパーゼネコン層の水準は反映していない点に注意しつつも、中堅・中小の実勢を掴む1次情報として有用です。
モデル退職金(自己都合・会社都合)
以下は同調査で公表されている、建設業の学歴・勤続年数・退職理由別のモデル退職金額です。
| 学歴 | 勤続5年 | 勤続10年 | 勤続20年 | 勤続30年 |
|---|---|---|---|---|
| 高卒(自己都合) | 41.1万円 | 89.2万円 | 249.9万円 | 550.2万円 |
| 高卒(会社都合) | 55.8万円 | 132.1万円 | 354.3万円 | 604.4万円 |
| 高専・短大卒(自己都合) | 44.3万円 | 105.5万円 | 302.9万円 | 518.4万円 |
| 高専・短大卒(会社都合) | 53.5万円 | 130.2万円 | 359.2万円 | 581.7万円 |
| 大卒(自己都合) | 46.3万円 | 108.8万円 | 320.7万円 | 580.5万円 |
| 大卒(会社都合) | 58.4万円 | 141.4万円 | 382.8万円 | 633.8万円 |
出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」の集計値/対象=都内中小企業/集計時点は同調査の公表期。以降の各章で「モデル退職金」に言及する際は同一の一次情報を基準としています。
自己都合と会社都合の差
同じ勤続年数でも 会社都合の方が10〜30%程度高い 傾向が見られます。大卒・勤続10年では自己都合108.8万円に対して会社都合141.4万円と、約30%の差が発生しています。これは各社の退職金規程で「自己都合減額率」が定められているためで、規程を求人票段階で確認できることは稀です。面接時に「退職金の自己都合と会社都合の支給率の差」を聞くのは失礼ではなく、労働条件の透明性を確認する妥当な質問と位置づけられます。
業種平均との比較
同調査によると、中小企業の全産業平均・大卒・勤続30年の自己都合退職金は約567万円で、建設業は580.5万円と大差ありません。むしろ 中小企業の建設業は全産業平均並みかやや高め に推移しており、「建設業=退職金が薄い」というイメージは中堅以上では必ずしも当てはまりません。
ただし、この水準は都内中小企業の集計値であり、地方の小規模・地場企業や退職金制度そのものがない企業も含めた全国全業態の平均値ではない点は留意が必要です。地方や小規模層では建退共単独のみ・退職金規程なしの企業も一定数あり、企業別の格差が大きいことが実感を伴う相場感になります。
企業規模別の退職金相場レンジ
企業規模別に見ると、退職金の水準は建退共+自社制度+企業年金の組み合わせで大きく変わります。以下はスーパーゼネコンから一人親方までの参考レンジ(勤続30〜35年・定年退職ケース)を、公表資料と求人観測から編集部で整理した目安値です。
| 企業区分 | 主な制度構成 | 勤続30〜35年退職金の傾向 |
|---|---|---|
| スーパーゼネコン(5社) | 自社一時金+DB/DC+建退共 | 高水準となる傾向(一律比較困難) |
| 準大手ゼネコン(10社前後) | 自社一時金+DB/DC+建退共 | スーパーゼネコンに準ずる水準 |
| 中堅ゼネコン(従業員300〜999人) | 自社一時金+DBまたはDC+建退共 | 中堅水準(規模・地域で幅) |
| 大手サブコン(電気・空調衛生・通信) | 自社一時金+DB/DC+建退共 | 中堅ゼネコンと同等〜やや上位のケース |
| 中小地場・専門工事(100人未満) | 建退共+自社制度(自社制度なしのケースも) | 建退共+東京都データの中小レンジが基準 |
| 一人親方・フリーランス | 建退共(任意組合経由)+小規模企業共済+iDeCo等の私的年金 | 個人設計で大きく変動 |
このレンジ表は、上場ゼネコン各社の有価証券報告書(金融庁 EDINET で「退職給付」の記載を確認可能)、国土交通省「建設業を巡る現状と課題」、公開されている企業年金の受給例、およびタテルート編集部の求人票観測(約90件・首都圏・関西圏中心・2026年7〜8月)から得た定性的な傾向を整理したもので、金額そのものは応募先ごとの就業規則・退職金規程・退職給付関係注記で個別に確認するのが前提です。退職給付債務は全社員合算の会計上の数値であり、個人の受給額そのものではない点にも留意してください。
スーパーゼネコンの3階建て設計
スーパーゼネコン5社(鹿島建設・大林組・大成建設・清水建設・竹中工務店)では、以下の3階建てで退職金が構成されるのが一般的です。
- 1階:建退共 — 積立日数に応じた退職金(勤続35年で約620万円目安)
- 2階:自社退職一時金 — 就業規則に基づく退職金(役職・勤続年数に応じた設計)
- 3階:企業年金(DBまたはDC) — 退職給付債務として計上されており、勤続年数と最終役職に応じて設計
各社の詳細な設計は退職給付関係注記で確認可能ですが、退職給付債務は全社員合算の会計上の数値であり、そこから個人の受給額を厳密に逆算するのは困難です。個人ごとの水準は勤続年数・役職・退職理由・企業年金の運用実績で大きく変動するため、応募時は各社の統合報告書・有価証券報告書の退職給付関係注記と、内定後の就業規則・退職金規程で個別に確認するのが確実な方法です。スーパーゼネコンの年収レンジ自体はゼネコン 年収ランキング|スーパー・準大手・中堅で整理しており、生涯所得の観点でも上位に位置します。
中堅ゼネコン・地場企業のばらつき
中堅ゼネコンや地場企業では、退職金額のばらつきが大きくなります。同じ「中堅ゼネコン」でも以下のように分岐します。
- 全国展開の中堅ゼネコン(ゼネコン 年収 ランキング 中堅 上位):自社制度+DBを整えた企業が多く、中堅の中でも上位レンジ
- 地方の中堅ゼネコン:自社制度は簡易で、建退共+自社制度が中心。東京都データの中小レンジと重なりやすい
- 地場・専門工事:建退共のみのケースもあり、東京都データの下限側に寄る傾向
「中小地場だから退職金は少ない」と決めつけず、求人票の福利厚生欄と就業規則の退職金規程を必ず突合 することが重要です。年収・福利厚生の水準比較は建設業 ホワイト企業 ランキングやサブコン ランキング 年収も参考になります。
一人親方・独立の退職金設計
一人親方・独立フリーランスの場合、退職金は「制度に加入して自分で準備する」領域になります。主な選択肢は次のとおりです。
- 建退共(任意組合経由で加入)— 積立日数に応じて退職金を受給
- 小規模企業共済 — 中小機構が運営。月額7万円まで拠出可、全額所得控除
- iDeCo(個人型確定拠出年金)— 月額6.8万円まで拠出可(第一号被保険者)、運用益非課税
- 民間の個人年金保険
これらを組み合わせれば、法人役員クラスに近い退職金設計も可能です。独立時のキャリア設計や年収比較は建設業 独立 年収や施工管理 独立 フリーランス 年収で詳しく整理しています。
転職時の退職金の通算・移管ルール
建設業内でも異業種でも、転職時に退職金がどう扱われるかは制度ごとに異なります。ここを理解しておくと、キャリアプランと退職金を両立させやすくなります。
建退共の日数通算
建退共の最大のメリットは、事業主が変わっても積立日数が通算される 点です。建設業を続ける限り、A社→B社→C社と転職しても手帳(または電子申請の記録)を通算して積立日数がカウントされます。
- 転職先が建退共に加入している必要がある
- 建設業以外の異業種に転職した場合は原則として通算対象外(12ヶ月以上の掛金納付があれば退職金請求可能)
- 建設業から一時的に離れて再度戻るケースでも通算が生きる場合がある
このため、生涯建設業で働く技能者・現場職員は建退共の存在が特に大きな価値になります。転職を繰り返しがちな職種でも、退職金がリセットされない設計になっている点は、他業種の退職金制度にはない特徴です。
中退共と自社制度の扱い
中退共は、次の3パターンで扱いが分かれます。
- 中退共加入企業に転職 — 通算申出書を提出することで、これまでの掛金納付月数を通算可能(中退共 通算制度 を参照)
- 中退共非加入企業に転職 — 中退共から退職金を一時金で受給
- 建退共加入企業に転職 — 制度間の資産移換は原則不可(それぞれ別制度として存続)
自社退職一時金制度は転職時に 原則として一時金で精算 されます。他社に移換する制度はほとんどなく、勤続年数・役職に応じた金額を退職時に受け取る形になります。
DC(企業型確定拠出年金)の資産移換
企業型DCの資産は、転職時に以下の選択肢で移換可能です。
- 転職先の企業型DCへ移換
- 個人型iDeCoへ移換
- 6ヶ月以内に移換手続きをしない場合は国民年金基金連合会に自動移換(運用停止・手数料負担が発生するため注意)
DCは「自分で運用する年金」であるため、キャリアを通じて資産を持ち運びできる設計になっています。ゼネコンからサブコン・デベロッパー・発注者側・公務員技術職などへ幅広く動くキャリアを想定するなら、DCの理解は必須です。
転職と退職金の意思決定フレーム
転職を検討するとき、退職金の観点で見落としがちなのは「勤続年数の切れ目」と「退職理由の扱い」の2点です。
- 勤続10年目・20年目の直前で転職すると受給額が急減する — 東京都データでも勤続10年→20年で退職金が約3倍に増える設計が多く、勤続15〜20年の中途は特に慎重に判断すべき
- 自己都合と会社都合の扱い — 一般に自己都合は会社都合より支給率が下がる(企業の規程で明示)
- 退職金の税制優遇 — 退職所得控除は勤続年数×40万円(20年超は70万円)で計算。長期勤続ほど税制メリットが大きい
年収アップを優先して転職する場合でも、退職金の受給水準と勤続年数の残りを合算して意思決定する視点が重要です。年収アップ転職の総論は施工管理 年収アップ 転職で整理しています。
退職金ゼロ・少額リスクの見分け方(求人票・面接での確認10項目)
退職金の受給額は入社後の勤続年数と退職時の企業状況で大きく変わるため、入社前に確認しておくべき項目を絞って質問 するのが実務的です。以下は求人票と面接で必ず押さえたい10項目です。
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- 退職金制度の有無 — 求人票の「福利厚生」欄に「退職金あり」「退職金制度」の記載があるか
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- 退職金の種別 — 「建退共のみ」「建退共+自社制度」「建退共+自社制度+企業年金」のどれか
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- 建退共加入の有無 — 経審受注企業ならほぼ加入。加入なら「掛金の納付方式(証紙/電子)」も確認
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- 自社退職金の勤続要件 — 「勤続3年以上」「勤続5年以上」など受給資格の最低勤続年数
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- 自己都合と会社都合の支給率 — 「自己都合は会社都合の何%」の設計。就業規則で規定される
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- 企業年金の運用主体・種類 — DBかDCか。運用主体(企業年金基金/信託銀行/保険会社)
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- DCのマッチング拠出の可否 — 従業員が自ら追加拠出できるか(税制メリット拡大)
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- DCの資産移換ルール — 転職時の移換手続き、iDeCoへの移換可否
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- 中退共の有無 — 内勤職・管理部門で使われる場合が多い。中小企業は要確認
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- 退職金規程の閲覧可否 — 内定後に就業規則・退職金規程を確認できるか
求人票の記載パターン別リスク
求人票の福利厚生欄の記載を、リスク別に分類すると次のようになります。
| 記載例 | 想定される制度 | 想定リスク |
|---|---|---|
| 「退職金制度あり(規程による)」のみ | 自社制度あるが詳細不明 | 支給要件が不透明。勤続要件と自己都合減額率を面接で必ず確認 |
| 「建退共加入」のみ | 建退共単独 | 建退共のみでは大手水準に届かない。追加制度の有無を確認 |
| 「退職金制度あり/確定拠出年金制度あり」 | 自社制度+DC | 標準的な中堅以上の設計。DCの拠出額・マッチングを確認 |
| 「退職金制度あり/企業年金基金加入」 | 自社制度+DB | 大手・準大手の典型。運用主体・給付水準を確認 |
| 記載なし | 制度なしまたは開示不足 | 面接で必ず確認。「退職金なし」なら年収に上乗せがあるか要検証 |
「退職金あり」の記載だけで安心せず、種別・勤続要件・自己都合減額率の3点を面接で必ず聞き取る のが確実な確認方法です。求人票全体の見極め方は施工管理 求人 見極め方にまとめています。
面接で聞くときの言い回し
面接で退職金について聞くのは失礼と受け取られがちですが、労働条件の透明性を確認する妥当な質問です。以下のような言い回しなら失礼にならず、かつ具体的な情報を引き出せます。
- 「貴社の退職金制度は、建退共に加えて自社の一時金制度や企業年金の設計もありますでしょうか」
- 「退職金の支給要件として、最低勤続年数や自己都合の場合の支給率について確認させていただけますでしょうか」
- 「入社後、就業規則や退職金規程を確認させていただくことは可能でしょうか」
このように聞けば、実務的な観点で確認しているという意図が伝わり、企業側も透明性の高い企業ほど誠実に回答してくれるはずです。
離職率と退職金制度の関係
退職金制度が整っている企業ほど、離職率が低い傾向が見られます。逆に言えば、離職率が高い企業では退職金制度が形骸化していたり、勤続年数が短くて受給額が伸びなかったりするケースがあります。企業別の離職率データと会社選びの視点は建設業 離職率 データで整理しています。
ケース別の退職金設計(年代別)
年代によって、退職金の受給時期や意思決定のポイントは変わります。年代別の設計イメージを整理します。
20代|制度理解と長期加入の起点
20代は、退職金の恩恵を受けるのはまだ先ですが、制度を理解して長期加入の起点を作る 期間です。
- 建退共の日数通算の仕組みを理解し、転職時の手帳引き継ぎを確実に行う
- 企業型DCがある場合はマッチング拠出を検討(税制メリット大)
- 自社退職金の勤続要件(3年/5年)を意識し、短期離職の受給ゼロを回避
20代のうちに転職を検討する場合は、退職金より年収・スキル・経験の伸びを優先しても構いませんが、「建退共は日数を積み立てられているか」だけは確認しましょう。
30代|勤続10年目の分岐点
30代は勤続10年前後の分岐が発生する時期です。東京都データでは大卒・勤続10年で自己都合108.8万円、勤続20年で320.7万円と3倍近く伸びる設計が多いため、勤続10〜15年の中途転職では退職金の減少幅を意識 する必要があります。
- 転職先の退職金制度が現職より充実しているかを厳密に比較
- 特定分野(BIM/CIM、DX、大型現場、ICT施工)でキャリアが伸びるなら、退職金の減少を許容しても構わない
- 家族設計と合わせて、教育費・住宅ローンとの兼ね合いで判断
30代の資格取得・年収戦略は施工管理 年収 1000万 資格や建設業 資格 年収 上がるで整理しています。
40代|受給水準の可視化
40代は、退職金の総額が具体的に見え始める時期です。就業規則の退職金規程を実際に確認し、定年時の想定受給額を試算 しておくのが推奨されます。
- 現職の退職金規程を確認し、定年時の受給予想額を計算
- 転職を検討する場合、勤続20年→再スタートの受給減少を数値で比較
- 家族の教育費・住宅ローンの完済時期と退職金の受給時期を突合
準大手や中堅ゼネコンから転職する場合、退職金の減少を年収アップで補えるかどうかがシビアに問われます。転職先の候補は施工管理 転職先 おすすめにまとめています。
50代|出口設計とセカンドキャリア
50代は、定年後のセカンドキャリアと退職金の使い道を具体化する時期です。
- 定年時の退職金は退職所得控除で税制優遇(勤続30年なら控除額1,500万円)
- 一時金と年金のどちらで受給するかで税制が変わる(一時金=退職所得/年金=雑所得)
- 定年後の再雇用・独立・公務員技術職などのセカンドキャリアと合わせて設計
再雇用・定年延長の企業も増えていますが、各社の制度は改定頻度が高いため、具体的な定年年齢・再雇用年齢の上限・処遇は、応募先の統合報告書・採用ページ・人事制度資料で最新版を確認するのが確実です。定年延長・再雇用の広がり自体は業界共通の潮流ですが、企業別の制度内容は個別確認が前提となります。
よくある失敗と対策
退職金に関する意思決定でよく見られる失敗パターンと対策を整理します。
失敗1|求人票の「退職金あり」だけで安心する
「退職金あり」の記載だけで詳細確認をせず、入社後に「勤続要件を満たさない」「自己都合減額率が高い」「自社制度は形骸化していて建退共のみ」と分かるケースがあります。
対策:面接で必ず「制度の種別・勤続要件・自己都合減額率」を確認する。
失敗2|勤続10年目直前で転職
大卒・勤続10年で退職金が108.8万円、勤続20年で320.7万円と3倍近く伸びる設計が多いため、勤続10〜15年目の中途転職は退職金の観点で不利になりやすいパターンです。
対策:勤続要件のマイルストーン(3年/5年/10年/15年/20年)を確認し、あと数ヶ月でマイルストーンに届く場合は退職時期をずらす検討をする。
失敗3|DCの資産を放置して自動移換
企業型DCから退職後6ヶ月以内に手続きをしないと、国民年金基金連合会に自動移換され、運用停止と手数料負担が発生します。
対策:退職・転職時にDCの資産移換手続きを必ず行う。転職先の企業型DCまたはiDeCoへの移換が選択肢。
失敗4|退職金だけで意思決定
退職金の水準だけで会社選びをすると、年収・キャリア成長・働きやすさとのバランスが崩れやすくなります。
対策:退職金は「勤続年数×制度設計」の関数であり、若年層ほど不確実性が高い。20〜30代前半では退職金より年収・スキル成長を優先する判断も合理的。
失敗5|退職金なし企業を単純に忌避
退職金がない企業の中には、その分を年収に上乗せしている企業や、DCへの拠出額を高めに設定している企業もあります。
対策:退職金なし企業を評価する際は、「年収に退職金相当の上乗せがあるか」「DCへの拠出額(月額給与の何%か)」を確認する。総報酬(年収+退職金+企業年金)で比較するのが実務的。
制度接続|担い手3法・2024年問題・監理技術者との関係
建設業の退職金は、業界の労働環境・制度改革と密接に連動しています。押さえておくべき制度接続を整理します。
第三次・担い手3法(2025-12-12 全面施行)
建設業法・入契法・品確法の一体改正である第三次・担い手3法は、2025-12-12に全面施行された 制度改正で、労務費の基準・処遇改善・働き方改革・生産性向上を柱としています(国土交通省「第三次・担い手3法」)。労務費・法定福利費の適正確保が求められる方向であり、退職金・福利厚生の充実は業界全体の潮流と整合します。
2024年問題(時間外労働上限規制)
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています。原則は 月45時間/年360時間、特別条項付き36協定でも 年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計で 単月100時間未満/複数月平均80時間以内 が上限、月45時間超は 年6回まで となり、違反企業には 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 が科されます(厚生労働省「時間外労働の上限規制」)。災害復旧・復興工事には一部の制限緩和特例があります。
長時間労働で残業代を積み上げた「見かけの高年収」が減少する一方で、退職金・福利厚生の水準が 企業の実力を示す指標 として重視されやすくなります。
監理技術者・主任技術者との関係
1級施工管理技士は監理技術者になれる代表的な資格で、元請工事のうち下請契約合計が一定額以上となる現場で配置されます。2級は主任技術者としてすべての工事現場の配置義務に対応する資格です。配置基準・金額要件は国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」の最新版で確認してください。
なお、2024年度から施工管理技術検定の受検資格が改正 されており、第一次検定は年齢要件を中心に受検しやすくなっています。試験機関は一般財団法人建設業振興基金(建築・電気・管・電気通信・造園)・一般財団法人全国建設研修センター(土木・建設機械)です。
資格取得により役職が上がれば、その分自社退職金の役職係数が上がる企業も多く、資格戦略と退職金設計は連動して考えるのが有効です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 建設業の退職金は他業種より少ないですか?
A. 中小企業の建設業モデル退職金(大卒・勤続30年・自己都合)は約580.5万円で、全産業平均の約567万円と大差ありません(東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」令和6年版)。ただし、地方の小規模企業や退職金制度のない企業も含めた全国全業態の平均ではなく、都内中小企業の集計値であるため、地域・企業規模で格差があります。
Q2. 建退共だけで老後の生活は十分ですか?
A. 建退共のみでは、勤続35年でも約620万円が目安で、老後の生活費全額をカバーするには不十分です。中堅・大手であれば自社制度と企業年金を組み合わせ、独立・一人親方であれば小規模企業共済やiDeCoを併用する設計が現実的です。
Q3. 退職金の税金はどう計算されますか?
A. 退職金は「退職所得」として、退職所得控除が適用されます。勤続20年以下は勤続年数×40万円、20年超は800万円+(勤続年数−20年)×70万円が控除額。控除後の金額の1/2に課税されるため、他の所得と比べて税制優遇が大きい設計です(国税庁「退職金と税」)。
Q4. 一人親方でも退職金は準備できますか?
A. 準備可能です。建退共は任意組合経由で加入でき、小規模企業共済(月額7万円まで拠出可、全額所得控除)とiDeCo(第一号被保険者なら月額6.8万円まで)を組み合わせれば、法人従業員に近い退職金水準を自力で作れます。詳細は建設業 独立 年収を参照してください。
Q5. 転職すると退職金はリセットされますか?
A. 制度により異なります。建退共は日数通算されるため、建設業内での転職ならリセットされません。中退共は転職先が中退共加入企業なら通算可能。企業型DCは資産移換可能。自社退職一時金制度は原則リセット(退職時に一時金で精算)です。
Q6. 退職金なしの企業はブラックですか?
A. 一概には言えません。退職金なしの代わりに年収に上乗せしている企業もあり、DCへの拠出額を高めに設定している企業もあります。総報酬(年収+退職金+企業年金)で評価するのが妥当で、退職金の有無だけで判断するのは避けたほうがよいでしょう。
Q7. 建退共の証紙は自分で買うのですか?
A. いいえ、事業主が購入して手帳に貼付します。証紙貼付方式のほかに電子申請方式も選択可能で、事業主が就労日数を電子申請して掛金を納付します。労働者側の負担はなく、事業主の福利厚生としての位置づけです。
Q8. スーパーゼネコンの退職金は本当に3,000万円台になりますか?
A. スーパーゼネコンは自社一時金+企業年金+建退共の3階建てで高水準となる傾向がありますが、具体的な金額は勤続年数・役職・退職理由・企業年金の運用実績で大きく変動します。有価証券報告書の退職給付債務は全社員合算の会計上の数値で、個人の受給額を厳密に逆算するのは困難です。応募先の就業規則で個別に確認するのが確実な方法です。
Q9. DBとDC、どちらが有利ですか?
A. 一概には言えず、キャリアプランで変わります。1社で勤続し続ける想定ならDB(給付額が確定)が安心。転職を複数回想定するならDC(資産移換可能)が有利です。DBを縮小してDCに移行する上場ゼネコンも増えており、勤務先の設計に合わせて活用する視点が重要です。
Q10. 会社が倒産したら退職金はどうなりますか?
A. 制度により異なります。建退共・中退共は勤労者退職金共済機構が保全しているため、事業主が倒産しても積立分は保全されます。企業年金(DB/DC)は制度により保全水準が異なりますが、加入者の資産として保護される仕組みが基本です。自社退職一時金制度は倒産時に受給できないリスクがあります(勤労者退職金共済機構を参照)。
Q11. 30代前半で転職すると退職金はどのくらい失いますか?
A. 大卒・勤続10年目直前で転職すると、東京都データ基準で108.8万円(自己都合)を失う計算になります。ただし建退共の日数は通算されるため、建退共分は失いません。中退共・企業型DCも通算・移換ができるため、自社退職一時金部分が主な減少額です。
Q12. 中小企業でも企業年金は導入されていますか?
A. 一部の中小企業では中退共と企業型DCの併用や、総合型DBへの加入が行われていますが、大手ほどは普及していません。求人票と面接で「企業年金の有無・種類」を確認するのが実務的です。
Q13. 退職金と年収、どちらを優先すべきですか?
A. キャリアの段階で優先度を変えるのが実践的です。20〜30代前半は年収・スキルの成長を優先、30代後半以降は総報酬(年収+退職金+企業年金)で評価するのがバランスの良い判断です。
Q14. 独立・フリーランスは退職金がないから不利ですか?
A. 建退共の任意組合加入・小規模企業共済・iDeCoを組み合わせれば、法人従業員以上の退職金水準を作ることも可能です。事業所得の税制メリット(青色申告特別控除・経費計上)を活用しつつ、退職金を積み立てる設計が現実的です。詳細は施工管理 独立 フリーランス 年収を参照してください。
Q15. 建設業の退職金は今後どうなりますか?
A. 2025-12-12に全面施行された第三次・担い手3法により、労務費・法定福利費の適正確保が求められる方向にあり、業界全体で退職金・福利厚生の水準は改善傾向が期待されます。ただし、DBを縮小してDCに移行する流れは全産業共通で、退職金の運用リスクを従業員が自ら負う設計が広がる可能性はあります。
まとめ
建設業の退職金相場は、企業規模・制度設計・勤続年数・退職理由の4軸で大きく変動します。要点を整理します。
- 建設業の退職金制度導入率は 76.1%(東京都産業労働局・都内中小)で、全産業平均並みの水準
- モデル退職金は大卒・勤続30年・自己都合で 約580.5万円(同・都内中小)が目安
- 建退共は日額320円×積立日数で計算され、勤続35年で 約620万円 が試算目安(建退共本部の試算例)
- スーパーゼネコン層は自社制度+企業年金(DB/DC)+建退共の3階建てで 高水準となる傾向(有価証券報告書の退職給付関係注記は全社員合算の会計数値であり、個人の受給額は各社規程で個別確認が前提)
- 会社選びでは「制度の種別・勤続要件・自己都合減額率・企業年金の運用主体・DCの移換ルール」を求人票と面接で必ず確認
- 転職時は勤続10〜15年目のマイルストーン、DCの資産移換手続き、退職所得控除の税制優遇まで含めて総合判断
退職金は「制度を理解して長期加入すれば自然に積み上がる資産」であり、年収・キャリア設計と両立して考えるのが実務的です。個別の企業別退職金水準や、応募候補企業の労働条件については、タテルートの無料キャリア相談(LINE)で情報整理を活用する選択肢もあります。会社選び全般の観点は施工管理 求人 見極め方や建設業 福利厚生 充実、建設業 ホワイト企業 ランキングにも整理しています。
運営:株式会社ヘルスベイシス・コンストラクション/タテルート編集部
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