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施工管理の離職率はなぜ高い?7つの理由と低い会社の選び方

施工管理の離職率はなぜ高い?7つの理由と低い会社の選び方

施工管理の離職率とは、施工管理職を担う技術者が一定期間内に離職した割合のことで、建設業全体の離職率と新規学卒3年以内離職率の2軸で語られることが多い指標です。厚生労働省の公的データを見ると、建設業全体の離職率は10%前後で全産業平均と大差ない一方、新規学卒3年以内では3〜4割が離職する構造的な課題を抱えています。

「施工管理は離職率が高い」と一括りに語られがちですが、データを分解すると 学歴・年代・企業規模で大きく傾向が異なる ことが分かります。本記事では、公的統計の数値を一次情報リンク付きで整理したうえで、離職率が高くなる7つの理由、年代別の離職タイミング、2024年問題以降の構造変化、そして離職率が低い会社の見極め方までを建設業界の精度要件に沿って解説します。

対象読者は、施工管理職として在職中で離職を検討している方、これから施工管理職への転職・就職を考えている方、自社の若手定着率に課題を感じる管理職の方です。読み終えるころには、公的データの読み解き方と、自分の状況に合った判断軸が手に入ります。

  1. 先に結論
  2. この記事で分かること
  3. 施工管理の離職率は本当に高い?公的データで見る実態
    1. 建設業全体の離職率(雇用動向調査)
    2. 新規学卒3年以内離職率(高卒・大卒)
    3. 全産業との比較で見える「2軸」の構造
  4. 施工管理の離職率が高い7つの理由
    1. 理由1|長時間労働と「みなし残業」のミスマッチ
    2. 理由2|転勤・現場移動による生活の不安定さ
    3. 理由3|書類作業・労務管理の負荷増
    4. 理由4|給与・昇給ペースとのギャップ
    5. 理由5|人間関係・職人とのコミュニケーション
    6. 理由6|キャリアパスが見えにくい
    7. 理由7|2024年問題以降の構造変化
  5. 年代別に見る離職タイミングと判断軸
    1. 新卒〜3年目(1年目/2〜3年目)
    2. 20代後半〜30代前半
    3. 30代後半〜40代
    4. 50代以降
  6. 2024年問題以降の離職構造の変化
    1. 表面的な残業時間の減少と「サービス残業」の温存
    2. DX投資が進む企業/進まない企業の分化
    3. 4週8閉所と完全週休2日制の区別
  7. 離職率が低い会社の特徴と見極め方
    1. 公開IR・有報・統合報告書での離職率開示
    2. 4週8閉所達成率・有給取得率の開示
    3. 中途採用比率・退職理由分析の社内体制
    4. 離職率が低い会社の見極めチェックリスト
  8. 離職する/残る/転職するの判断軸
    1. 「残る」選択が合理的なケース
    2. 「転職する」選択が合理的なケース
    3. 異業種・発注者側・公務員という選択肢
  9. 離職を決める前に必ずやるべき4ステップ
    1. ステップ1|在職中に状況を数値で記録する
    2. ステップ2|自社のIR・統合報告書を確認する
    3. ステップ3|求人票の見極め基準を準備する
    4. ステップ4|キャリア相談で第三者視点を入れる
  10. よくある質問(FAQ)
    1. Q1|施工管理の離職率は本当に「業界平均より高い」のですか?
    2. Q2|どの世代が一番離職しやすいですか?
    3. Q3|2024年問題で離職率は下がりましたか?
    4. Q4|大卒と高卒で離職率が違うのはなぜですか?
    5. Q5|離職率が低い会社をどう見抜けばよいですか?
    6. Q6|在職中に転職活動するのは現実的ですか?
    7. Q7|離職率が高い会社に在籍している場合、すぐに辞めるべきですか?
    8. Q8|女性施工管理者の離職率は男性より高いですか?
    9. Q9|離職率の数値は会社見学・面接で聞いてもよいですか?
    10. Q10|離職してから次を探すのと、在職しながら探すのはどちらがよいですか?
    11. Q11|離職率が低くても残業が多い会社はありますか?
    12. Q12|建設業界以外への転職は離職率改善になりますか?
  11. まとめ
    1. 年収・転職でお悩みの方へ

先に結論

  • 建設業全体の離職率は 約10%(厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概要」/2023年データ) で、全産業平均(一般労働者で約10.3%)と比較してもほぼ同水準
  • 一方で、新規学卒3年以内離職率は高卒で約4割/大卒で約3割 と、若年層の早期離職が業界全体の慢性的人手不足の主因
  • 離職理由は 長時間労働・転勤や現場移動・書類業務の負荷・給与とのギャップ・人間関係・キャリア不透明感・2024年問題以降の混乱 の7つに整理できる
  • 2024年4月以降の 時間外労働上限規制 で表面的な残業時間は減ったものの、サービス残業や持ち帰り業務が温存される現場では離職圧力が継続している
  • 離職率が低い会社は、有報・統合報告書での開示/4週8閉所達成率/中途採用比率/離職理由の社内分析体制 など客観指標で見極められる

この記事で分かること

  • 建設業/施工管理の離職率に関する公的データ(厚生労働省・日建連)の正確な数値と母集団
  • 「離職率が高い」と語られる背景にある 7つの構造的理由 とその深さ
  • 年代別(新卒〜3年目/20代後半〜30代/40代〜)の 離職タイミングと判断軸
  • 2024年4月の 時間外労働上限規制 以降に変わったこと/変わらなかったこと
  • 離職率が低い会社を 公開情報で見極める チェックリスト
  • 「離職する/残る/転職する」を意思決定するための判断フレーム
  • 離職を決める前に必ずやっておくべき4ステップ

施工管理の離職率は本当に高い?公的データで見る実態

「施工管理は離職率が高い」というイメージが先行していますが、まずは 業界全体のマクロ数値新規学卒3年以内 という別の指標を整理することから始めます。両者は意味が異なるため混同せず読み解くと、本当の課題が見えてきます。

建設業全体の離職率(雇用動向調査)

厚生労働省が毎年実施している 「雇用動向調査」 によると、令和5年(2023年)の建設業の離職率は 10.1% で、入職率は 10.0%、入職超過率は マイナス0.1% でした。建設業の入職者は約27.8万人、離職者は約28.1万人で、わずかに離職が入職を上回る構造です(出典:厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概要」)。

全産業の一般労働者の離職率は 10.3% で、建設業の10.1%とほぼ同水準。つまり「業界全体としての離職率」は 全産業平均と大差ない のが実態です。

区分 入職率 離職率 入職超過率 出典
建設業(全体・2023年) 10.0% 10.1% -0.1% 厚生労働省 令和5年雇用動向調査
全産業 一般労働者 10.0% 10.3% -0.3% 同上
パートタイム労働者 9.7% 5.6% +4.1% 同上

業界団体である 日本建設業連合会 の「建設業の現状」でも、過去30年スパンで見ると建設業の離職率は 右肩下がりで改善傾向 にあると整理されています(出典:日本建設業連合会「建設業の現状」)。

新規学卒3年以内離職率(高卒・大卒)

業界全体の離職率が10%台前半であるのに対し、新卒で就職した若手の3年以内離職率 は明確に高い水準で推移しています。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」によると、2021年3月卒業者の 建設業の3年以内離職率は約35.6%、内訳は 高卒43.2%/短大卒41.5%/大卒30.7% です(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」)。

全産業平均と比較すると、高卒・短大卒は平均よりも高い 一方、大卒は全産業平均の34.9%を約4ポイント下回って います。新卒入社段階での学歴別の早期離職傾向には、現場配属時のミスマッチが背景にあると指摘されています。

区分 建設業 3年以内離職率 全産業平均
高卒 43.2% 38.4%
短大卒 41.5% 41.4%
大卒 30.7% 34.9%
建設業全体 35.6%

※2021年3月卒業者の3年以内(〜2024年3月時点)離職率。出典は前述の厚生労働省データ。

全産業との比較で見える「2軸」の構造

ここまでのデータを総合すると、建設業の離職率は マクロでは平均並み/若年層では明確に高い という二段構造になっています。在職者全体としての離職率は他産業並みに収束しつつあるものの、入口(新卒)で4割が3年以内に抜けていく ため、業界全体の人材不足が解消しないという循環が続いています。

なお、「離職率が高い」という表現で語られる文脈の多くは、新規学卒3年以内 または 若手の体感 を指していると考えるとつじつまが合います。本記事でも、以降は「マクロ離職率(雇用動向調査ベース)」と「若年層離職率(新規学卒ベース)」を区別して扱います。施工管理の働き方の実態については施工管理がきついと言われる実態と公的データも合わせて参照してください。

施工管理の離職率が高い7つの理由

公的データを踏まえると、特に若年層の早期離職を押し上げている構造的理由は7つに整理できます。順に見ていきます。

理由1|長時間労働と「みなし残業」のミスマッチ

施工管理職は、現場朝礼前の準備から夕方の打ち合わせ・夜の書類仕事まで時間が伸びやすい職種です。2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用される前は、月80時間超の時間外労働が常態化していた現場 も多く報告されていました。

ここで離職要因となりやすいのが みなし残業(固定残業代)制度 との認識のズレです。みなし残業は、月給に一定時間分の残業代が事前に組み込まれており、その時間を超えた分は別途残業代が支払われる設計です。法的にはみなし時間超過分の残業代支払いは義務ですが、実態として 超過分が未払いになっている/申告しづらい雰囲気 がある現場では、若手の離職動機になります。残業実態については施工管理の残業は月何時間?2024年問題前後の比較データで詳しく整理しています。

理由2|転勤・現場移動による生活の不安定さ

施工管理は 現場ごとに配属が変わる 職種特性があり、特にゼネコンでは数年単位での転居を伴う転勤も発生します。結婚・出産・住宅購入といったライフイベントとぶつかる年代では、転勤の頻度が離職判断に直結しやすいことが報告されています。

転勤の少ない働き方を望む場合、地場ゼネコン・サブコン・発注者側(デベロッパー) などへキャリアの軸を移す選択肢が現実的です。転勤実態はゼネコン 転勤が多いと言われる実態も参照してください。

理由3|書類作業・労務管理の負荷増

施工管理職の業務は、現場での品質・原価・工程・安全(QCDS:Quality・Cost・Delivery・Safetyの4大管理)に加え、労務管理書類・建設業法に基づく各種届出・施工計画書・写真整理・図面チェック など多岐にわたります。2024年問題対応で工程管理が厳格化され、複数の作業員の労働時間を週単位で管理する負担が増えた現場も少なくありません。

技術者1人あたりの工事担当件数が増えるほど書類業務が積み上がりやすく、「現場よりPC作業の時間の方が長い」 という不満が離職動機に転化します。

理由4|給与・昇給ペースとのギャップ

入職時の年収提示が「業界平均より高め」に見えても、残業代込みの提示 だった場合、2024年問題で上限規制が入ると基本給ベースの実額に近づき、結果として年収が下がる事例も報告されています。

特に20代後半〜30代前半は、1級施工管理技士の取得や所長候補のポジションを意識する時期 で、他業界の同年代と比較した相対的な賃金感度が高まる年代です。年収を上げる選択肢は施工管理の年収を上げる5つの方法で整理しています。

理由5|人間関係・職人とのコミュニケーション

施工管理者は、自社・元請・下請・職人・発注者・近隣住民など 立場の異なる関係者 を束ねるハブの役割を担います。特に若手の段階では、年上の職人や下請所長から 「現場経験のないPC屋」 と見られるなど、関係構築の難易度が高い場面が頻発します。

パワハラ・モラハラに発展しやすい構造でもあり、対処法の整理は施工管理のパワハラ対処法、メンタル不調の兆候は施工管理 うつ病・メンタル限界の見極め方を参照してください。

理由6|キャリアパスが見えにくい

「主任→所長→部長」という伝統的なルートは存在するものの、所長到達には10〜15年スパン の年功序列が残る企業も多く、若手から見ると次のキャリアステップが見えにくい状況があります。

加えて、1級施工管理技士の取得タイミング が会社のキャリアパスと結びついていない場合、資格取得のモチベーションが上がらず、「結局自分は何の専門家になるのか」を見失いやすい構造です。1級は監理技術者になれる代表的な資格で、特定建設業の許可が必要となる元請工事のうち下請契約金額の合計が一定額以上となる現場で配置されます。2級は主任技術者として、すべての工事現場の配置義務に対応する資格です。配置基準・金額要件は国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」の最新版で確認してください(出典:国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」)。

理由7|2024年問題以降の構造変化

2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。原則は 月45時間/年360時間、特別条項付き36協定がある場合でも 年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計で 単月100時間未満/複数月平均80時間以内 が上限です。月45時間超は 年6回まで(特別条項適用時)、違反企業には 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 が科されます(出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制」)。なお、災害復旧・復興工事には一部の制限緩和特例があります。

規制適用で表面の残業時間は減った一方、工期や受注体制が見直されないまま残業時間だけが短縮された現場 では、サービス残業や持ち帰り業務が温存され、若手が「制度はできたが実態は変わらない」と感じる温床が生まれています。日本経済新聞は、2024年問題適用後に サービス残業を理由とした退職が加速 している現場があると報じています(出典:日本経済新聞「2024年問題で施工管理の求人増 サービス残業で退職加速」)。詳細は建設業 2024年問題と転職タイミングでも整理しています。

年代別に見る離職タイミングと判断軸

離職は年代によって動機もタイミングも異なります。ここでは新規学卒データと現場の傾向を踏まえて、年代別の論点を整理します。

新卒〜3年目(1年目/2〜3年目)

最も離職が集中する区間で、前述の通り 建設業の新規学卒3年以内離職率は約35.6% に達します。1年目は「業務内容と求人票のミスマッチ」「現場の人間関係」「想定外の長時間労働」などが主因。2〜3年目は「責任の急増(小規模現場の主任クラス担当)」「資格勉強と業務の両立負担」「同期との配属差」などが加わります。

この区間で離職を考える場合、第二新卒・第二の新卒として 建設業内での転職 が現実的な選択肢になります。詳しくは施工管理 新卒で辞めたい1年目の判断、3年目の整理は施工管理 辞めたい3年目のキャリア判断を参照してください。

20代後半〜30代前半

実務経験5〜10年程度を積み、1級施工管理技士の取得を目指す層です。市場価値が最も高まりやすい年代で、転職市場で評価されやすい傾向 があります。離職動機としては「年収頭打ち感」「次のステップが見えない」「結婚・育児との両立困難」などが上位に挙げられます。

この層の離職は 同業他社へのステップアップ転職 または 発注者側・コンサル・公務員技術職 などへのキャリアチェンジに分かれます。判断軸は施工管理 30代未経験〜経験者の転職判断が参考になります。

30代後半〜40代

所長クラスの責任を担う一方、家族の事情(介護・子育て)と転勤・残業との両立が難しくなる年代です。離職動機としては「健康面の限界」「親の介護で地元志向」「自社の経営方針への違和感」などが目立ちます。

40代以降は転職市場で年齢的なハードルが上がりますが、地場ゼネコン・サブコン・発注者側 はマネジメント経験を評価する傾向があり、ポジションを選べば年収維持の転職も現実的です。整理は施工管理 未経験40代の転職を参照。

50代以降

定年や役職定年が視野に入る年代で、早期退職・独立・顧問・嘱託契約 など多様な選択肢が見えてくる時期です。長年の経験を活かしてサブコンの技術顧問や中小ゼネコンの所長として転身するケースが報告されています。離職率の数値自体は低い区間で、退職に近い形での「卒業」が中心になります。

年代 主な離職タイミング 主な動機 現実的な選択肢
新卒〜3年目 1年目末/3年目末 業務ギャップ・人間関係 第二新卒で同業転職/別職種
20代後半〜30代前半 1級取得後/結婚前後 年収頭打ち・両立困難 同業ステップアップ/発注者側
30代後半〜40代 所長就任後/親介護期 健康・家族・経営方針 地場ゼネコン/サブコン
50代以降 役職定年/再雇用前 キャリアの整理 顧問・嘱託・独立

2024年問題以降の離職構造の変化

2024年4月の制度適用から1年以上が経過し、現場の運用は徐々に分化してきました。離職構造に影響する3つの変化点を整理します。

表面的な残業時間の減少と「サービス残業」の温存

時間外労働の上限規制が入り、各社とも タイムカード上の残業時間は確実に減少 しています。一方で、工期や見積もり方針が見直されない現場では、書類業務の 持ち帰り や、休日のサービス出勤に置き換わるケースも報告されています。

「制度はできたのに現場は変わらない」という認識は、特に若手層の離職判断を加速させやすい要因です。自社が制度遵守を表面で済ませているか、業務量自体を見直しているか を見極める眼が必要になっています。

DX投資が進む企業/進まない企業の分化

2024年問題への対応は、DX投資とセットで進めると効果が出やすいとされています。BIM/CIM(建築・土木の3次元モデルに属性情報を持たせる技術)/ICT施工(情報通信技術を活用した施工管理)/施工管理アプリ/クラウド型図面管理 などへの投資が進む企業では、書類業務の効率化で残業削減と離職率低下を両立できているケースが増えてきました。

逆に、これらの投資が進まない企業では、上限規制対応のしわ寄せが現場に集中し、離職圧力が強まる構造があります。求人票や面接で 「BIM/CIM導入率」「ICT施工の現場割合」 などを質問できると、企業の本気度を測りやすくなります。

4週8閉所と完全週休2日制の区別

働き方改革の指標として 4週8閉所(4週間で8日間の現場閉所、業界の働き方改革指標)が日建連を中心に推進されています。ただし、4週8閉所は 現場が閉まる日数 を示す業界指標で、労働者個人が毎週必ず2日休日を取得する完全週休2日制とは別概念 です。

会社の制度が「4週8閉所達成」と謳っていても、個人ベースで完全週休2日になっているかは別問題。現場閉所=個人の休日とは限らない ため、面接時に「実際の有給取得率」「土曜出勤の頻度」を確認する必要があります。詳細は建設業 週休二日の実態を参照してください。

離職率が低い会社の特徴と見極め方

離職率を下げる施策に成功している企業には、共通する開示・運用パターンがあります。求人選びや在職先の評価に使える視点を整理します。

公開IR・有報・統合報告書での離職率開示

東証プライム上場の スーパーゼネコン大手5社(鹿島建設・大成建設・大林組・清水建設・竹中工務店)や準大手ゼネコンの多くは、有価証券報告書または 統合報告書/サステナビリティレポート で離職率(または定着率)を開示しています。EDINET(金融庁が提供する有価証券報告書等の電子開示システム)から最新の有報を確認でき、各社IRページの統合報告書では時系列の推移が読み取れます。

開示文書 確認できる指標 入手先
有価証券報告書 平均勤続年数・離職率(任意開示) EDINET
統合報告書 離職率・新卒3年以内定着率 各社IRページ
サステナビリティレポート 多様性指標・育休復職率 各社IRページ

数値を見る際は、「全社員平均」と「施工管理職単独」を区別 することが重要です。有価証券報告書の平均年収・平均勤続年数は 全社員平均 であり、施工管理職単独の数値ではない場合が多い点を必ず確認してください。

4週8閉所達成率・有給取得率の開示

日建連は会員企業に対して 「週休二日実現行動計画」 のフォローアップ調査を毎年実施しており、会員企業(大手・準大手ゼネコン中心)の 4週8閉所達成率/有給取得率 が公表されています(出典:日本建設業連合会)。

会員企業=大手中心であるため数値は全国平均より高めに出る傾向がありますが、業界の上位層がどこまで到達しているかを把握する目安になります。

中途採用比率・退職理由分析の社内体制

離職率を構造的に下げている会社は、退職時の「真の退職理由」を社内で分析する仕組みを持っています。退職面談を所属長以外(人事・労務)が行う、匿名のサーベイを定期実施する、などの体制が整っている企業は、離職率の改善に本気で取り組んでいる目安となります。

求人票だけでは見抜きにくい部分ですが、面接で「退職理由の社内分析」を聞く ことで姿勢を把握できます。

離職率が低い会社の見極めチェックリスト

求人票・面接で確認すべき項目を整理します。

  • 統合報告書または有報で 施工管理職の離職率・3年以内定着率 が開示されているか
  • 4週8閉所達成率完全週休2日制適用社員の割合 を分けて確認できるか
  • 平均残業時間 が複数年で減少傾向にあり、根拠データが提示できるか
  • BIM/CIM・ICT施工の 現場導入率 を具体数値で説明できるか
  • 退職面談・サーベイなど 退職理由の社内分析体制 があるか
  • 中途採用比率 が公表されており、新卒だけに依存していない
  • 女性技術者の在籍数・育休復職率 が開示されているか

7項目のうち5項目以上を満たす企業は、業界内では離職率が低い部類に入る目安です。ホワイト企業の見分け方は施工管理のホワイト企業の見分け方、ブラック企業の特徴は施工管理のブラック企業 見分け方で詳しく整理しています。

離職する/残る/転職するの判断軸

離職率の高さを知ったうえで、自分はどう動くべきかを決めるための判断軸を整理します。

「残る」選択が合理的なケース

  • 1級施工管理技士の 受験要件まで実務経験年数が残り少ない(取得後に転職することで市場価値が大きく変わる)
  • 現職が 業界平均より明確に高水準(4週8閉所達成・残業40時間未満・年収平均超)で、転職してもメリットが薄い
  • 介護・子育てなど 環境要因で大きな変化を起こせない タイミングである
  • 所長候補として打診を受けており、社内キャリアの折り返し が見えている

「転職する」選択が合理的なケース

  • 現職の労働時間が 複数月平均80時間/単月100時間 を恒常的に超過している
  • 退職金・賞与の支給条件が 客観指標 で他社より明確に劣る
  • パワハラ・モラハラなど 健康に影響が出始めている
  • 1級取得済みで、所長候補としての打診が他社からある
  • 結婚・出産など ライフイベント で転勤・残業の前提を変える必要がある

異業種・発注者側・公務員という選択肢

施工管理経験を活かせる転職先は、同業他社(ゼネコン・サブコン)だけではありません。デベロッパー(発注者側)/設計事務所/建設コンサル/公務員技術職 など、現場経験を評価する選択肢があります。

転職先カテゴリ 強み 想定年収 詳細記事
同業ステップアップ 経験を直接活かせる/年収UP余地 現職+50〜150万円 施工管理 転職失敗の回避
発注者側(デベロッパー) 上流工程/転勤少/WLB良好 700〜1,200万円 施工管理 デベロッパー転職
公務員技術職 安定/地元勤務/福利厚生 500〜750万円 施工管理 公務員技術職への転職
異業種(不動産・FM等) 業界知見が評価される 業界・職種次第 施工管理 やめとけと言われる理由

※年収レンジは複数の転職サイトの集計・上場企業の有価証券報告書(2024年度〜2025年度開示)を総合した目安。実際の提示は経験・資格・企業規模により大きく変動します。

離職を決める前に必ずやるべき4ステップ

離職判断は感情で動くと後悔につながりやすい意思決定です。在職中に必ず通すべき4ステップを示します。

ステップ1|在職中に状況を数値で記録する

退職前1〜3ヶ月は、実際の残業時間・休日出勤・有給取得率・通勤時間 を実数で記録します。退職時に労基へ相談する場合や、転職面接で現職の労働環境を説明する場合の客観材料になります。

ステップ2|自社のIR・統合報告書を確認する

自分の所属企業が上場している場合は、有報・統合報告書の離職率/勤続年数/残業時間平均 を必ず確認します。社内の体感と公表数値の乖離は、社内分析の本気度を示す指標にもなります。

ステップ3|求人票の見極め基準を準備する

転職を視野に入れる場合、みなし残業時間/年間休日/4週8閉所達成率/3年以内定着率 の4点は最低限ヒアリングする項目です。求人票に書かれていない場合は、面接時に質問できる準備をしておきます。

ステップ4|キャリア相談で第三者視点を入れる

在職中に 建設特化型のキャリア相談 で、自分の市場価値・転職先の選択肢を整理する選択肢があります。タテルートの無料キャリア相談(LINE)も、情報整理の場として活用できます。失敗パターンは施工管理 転職で後悔する失敗で整理しています。

よくある質問(FAQ)

Q1|施工管理の離職率は本当に「業界平均より高い」のですか?

業界全体の離職率(雇用動向調査ベース)は約10%で、全産業平均と大差ありません。一方、新規学卒3年以内離職率は約35.6% と若年層では明確に高く、「離職率が高い」と語られる場面の多くはこの若年層を指していると考えると整合します。

Q2|どの世代が一番離職しやすいですか?

新規学卒3年以内、特に 高卒1〜2年目 が最も離職率が高い区間です。次いで 30代後半〜40代前半 で、ライフイベントや健康・介護要因が重なる時期に再び離職が増えます。

Q3|2024年問題で離職率は下がりましたか?

最新データ(2023年)の段階では建設業の離職率は10%台で安定しています。2024年4月以降のデータは現時点では確定値が出揃っていませんが、サービス残業や持ち帰り業務が残る現場では離職圧力が継続している と複数メディアが報告しています。

Q4|大卒と高卒で離職率が違うのはなぜですか?

高卒は配属時期が早く、現場での責任が早い段階で来やすいこと、また地元志向と転勤要件のミスマッチが起きやすいことが指摘されています。大卒は 配属前研修や本社業務との両立期間 が比較的長く、現場ギャップを段階的に吸収できる構造です。ただし大卒でも30%超は3年以内に離職しており、決して低い水準ではありません。

Q5|離職率が低い会社をどう見抜けばよいですか?

統合報告書・有報での開示/4週8閉所達成率/中途採用比率/退職理由の社内分析体制の4点を確認するのが基本です。求人票だけでなく 面接で具体数値を質問 することで企業の本気度を測れます。

Q6|在職中に転職活動するのは現実的ですか?

在職中の転職活動は、施工管理職においても標準的な進め方とされています。有給を活用した面接調整/オンライン面接の活用/週末面接の打診 などで両立は可能です。退職前提で動くと条件交渉で不利になりやすいため、在職を維持したまま進める方が選択肢が広がります。

Q7|離職率が高い会社に在籍している場合、すぐに辞めるべきですか?

数値だけで判断する必要はありません。自分の労働時間・年収・健康状態 が業界平均と比べてどうかを客観的に把握し、悪化方向にあるなら早めの行動が合理的です。健康に直接影響が出ている場合は、休職制度の活用も含めて検討します。

Q8|女性施工管理者の離職率は男性より高いですか?

公的統計で「施工管理職の男女別離職率」を直接示すデータは限られています。建設業全体の女性技術者比率は依然として低水準で、産休・育休復帰後の現場配属の柔軟性が定着率に影響することが指摘されています。詳細は施工管理 女性のきつい現実を参照してください。

Q9|離職率の数値は会社見学・面接で聞いてもよいですか?

質問することは問題なく、むしろ採用側にとっても 意識の高い候補者 という印象を与えやすい質問です。聞き方としては「貴社の 施工管理職の3年以内定着率 はどの程度ですか」「退職理由の社内分析の体制 はありますか」など、データ寄りの質問が好印象につながります。

Q10|離職してから次を探すのと、在職しながら探すのはどちらがよいですか?

経済合理性・条件交渉力の両面で、在職しながら探す方が有利 とされています。退職して動く場合、3〜6ヶ月の生活費を準備したうえで、健康保険・住民税の支払い対応を計画しておく必要があります。

Q11|離職率が低くても残業が多い会社はありますか?

存在します。離職率が低いのは 賃金・福利厚生・社内人間関係 が安定しているためで、残業が少ないとは限りません。逆に、年収レンジが業界トップクラスの大手ゼネコンでは、残業時間も相応に高い傾向があります。「離職率」「残業時間」「年収」 は別軸で評価する必要があります。

Q12|建設業界以外への転職は離職率改善になりますか?

ケースバイケースです。異業種でWLBが大幅改善 する事例もある一方、年収が下がる・施工管理経験を活かしにくいなどのリスクもあります。発注者側・コンサル・公務員技術職など、建設業界の周辺領域へ移動 する方が経験を活かしやすい選択肢として挙げられます。

まとめ

施工管理の離職率は、マクロでは全産業平均と大差ない一方、新規学卒3年以内では3〜4割 が離職する構造的な課題があります。「離職率が高い」と語られる文脈の多くは若年層の早期離職を指しており、長時間労働・転勤・書類業務・給与ギャップ・人間関係・キャリア不透明感・2024年問題以降の混乱という7つの構造要因が重なる結果です。

要点を再掲します。

  • 建設業全体の離職率は 約10%(厚生労働省 令和5年雇用動向調査) で全産業平均と大差なし
  • 新規学卒3年以内離職率は 高卒43.2%/大卒30.7%/業界平均35.6%(厚生労働省 2021年3月卒業者データ)
  • 離職要因は 7つの構造的理由 に整理され、特に若年層では複数要因が重なる
  • 2024年4月の 時間外労働上限規制 で表面の残業は減ったが、サービス残業・持ち帰り業務の温存リスクあり
  • 離職率が低い会社は 有報・統合報告書/4週8閉所達成率/中途採用比率/退職理由分析体制 の4点で見極められる
  • 離職判断は感情ではなく 4ステップの数値記録 で行うのが合理的
  • 同業ステップアップ/発注者側/公務員技術職/異業種など、経験を活かせる選択肢 は複数ある

次のアクションとして、自社の離職率・残業時間・有給取得率の客観値を把握することから始めることをおすすめします。判断に迷う場合は、施工管理 ホワイト企業の見分け方施工管理 転職失敗の回避施工管理 2024年問題と転職タイミングなどの関連記事もあわせて参照してください。在職を維持したまま、第三者視点を入れて選択肢を整理する選択肢として、タテルートの無料キャリア相談(LINE)を活用できます。


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