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施工管理のみなし残業の仕組み|残業代の計算・違法サイン・求人票の見方

施工管理のみなし残業の仕組み|残業代の計算・違法サイン・求人票の見方

施工管理のみなし残業とは、月給や年俸に あらかじめ一定時間分の残業代を組み込んで先払いする固定残業代の制度 で、建設業では「月30時間」「月45時間」「月60時間」などの設定が広く使われています。みなし時間を超えた分の残業には、別途割増賃金の支払いが法的に義務付けられている点を誤解したまま働いている施工管理者が少なくありません。

結論から言えば、みなし残業自体は違法ではありません。ただし「求人票・雇用契約書での明示」「みなし時間を大きく超える設定」「超過分の別途支給」など、複数の要件を満たさなければ無効・違法と判断される裁判例が積み重なっています。特に建設業は現場の繁忙差が大きく、みなし時間を超える月が発生しやすい職種のため、仕組みの理解が 手取り年収と労働時間のバランス に直結します。

本記事では、みなし残業の定義と施工管理での使われ方、残業代の計算方法、違法になる5つのケース、求人票と雇用契約書のチェックポイント、2024年問題(時間外労働上限規制)との関係、年収を伸ばすための判断軸までを一気通貫で整理します。転職前・入社後どちらのタイミングでも活用できる内容です。

  1. 先に結論
  2. この記事で分かること
  3. みなし残業とは?施工管理で使われる固定残業代の仕組み
    1. みなし残業(固定残業代)の定義
    2. 施工管理でみなし残業が広く使われる理由
    3. みなし残業と現場手当・職務手当の違い
  4. 施工管理のみなし残業の相場|時間・金額の目安
    1. 業界の相場ライン(30時間・45時間・60時間)
    2. 求人票のみなし残業時間の分布(編集部調査)
    3. 45時間超は要警戒の理由
  5. 残業代の計算方法|みなし超過分は必ず別途支給
    1. 割増率と基礎賃金の考え方
    2. みなし残業を含めた月給の計算例(年収500万円モデル)
    3. 60時間超の割増率50%(中小企業も2023年4月から適用)
  6. みなし残業が違法になる5つのケース
    1. ケース1: 求人票・雇用契約書に明示がない
    2. ケース2: みなし時間を超えた分の残業代を払わない
    3. ケース3: 月45時間を大きく超えるみなし時間
    4. ケース4: 「管理職だから残業代なし」(管理監督者の誤認定)
    5. ケース5: 手当の名称で残業代を隠す
  7. 求人票・雇用契約書でみなし残業を見抜くチェックリスト
    1. 職業安定法が求める3つの明示事項
    2. 実務でチェックする8項目(表)
    3. 面接で確認する質問例
  8. 2024年問題後の施工管理の残業実態|みなし時間との整合
    1. 建設業に適用された時間外上限規制の数値
    2. みなし残業45時間と2024年問題の関係
    3. 罰則と違反企業リスクの見方
  9. みなし残業が原因で年収が伸び悩むケースと対策
    1. 見た目の年収と実際の労働時間
    2. 実質時給を計算する
    3. 年収を上げるための3つの選択肢
  10. よくある質問(FAQ)
    1. Q1. みなし残業がある会社はブラックですか?
    2. Q2. みなし残業45時間分もらっている月に、実際は30時間しか残業しなかった場合、差額は返さないといけませんか?
    3. Q3. みなし残業時間を超えて働いた分は、いつ支払われますか?
    4. Q4. みなし残業代が支払われていない場合、過去分を請求できますか?
    5. Q5. 現場所長ですが、「管理職なので残業代は出ない」と言われています。これは合法ですか?
    6. Q6. みなし残業の設定時間は、雇用契約書の途中変更が可能ですか?
    7. Q7. 求人票にみなし残業の記載がない会社は、みなし残業が無い会社ですか?
    8. Q8. 副業や兼業をしている場合、みなし残業の計算はどうなりますか?
    9. Q9. 派遣・契約社員でもみなし残業は適用されますか?
    10. Q10. 深夜残業や休日出勤の分もみなし残業に含めていいですか?
    11. Q11. 転職エージェント経由の求人と、企業サイト直接応募で、みなし残業の条件は変わりますか?
    12. Q12. 未払い残業代を請求したら会社にいづらくなりませんか?
    13. Q13. みなし残業を廃止した会社への転職は有利ですか?
  11. まとめ
    1. 年収・転職でお悩みの方へ

先に結論

  • みなし残業(固定残業代)とは、月給に一定時間分の残業代を事前組み込みで支払う制度。施工管理では月30〜45時間分の設定が多い
  • みなし時間を超えた残業には別途割増賃金の支払いが義務。「その時間分までは残業代が出ない」ではなく「超過分は必ず追加で払われる設計」が法律上の建付け
  • 求人票への明示は 職業安定法(2017年3月改正)と若者雇用促進法 で義務化されており、①固定残業代を除いた基本給 ②みなし時間と金額の算定方法 ③超過分の別途支給 の3点セット記載が必要
  • 長時間のみなし残業設定については、公序良俗違反として無効と判断された裁判例 も報告されており、2024年4月以降の建設業への時間外上限規制(原則月45時間/年360時間)とも整合が取りにくい水準に注意する
  • 施工管理の実質時給は「(月給−通勤・家族手当)÷(所定労働時間+実残業時間)」で計算し、みなし設定より実残業が多い場合は超過分の支払い状況を給与明細で必ず確認する

この記事で分かること

  • みなし残業(固定残業代)の定義と、施工管理で広く使われる理由
  • 月30時間・45時間・60時間といったみなし時間の相場と、45時間超が要警戒とされる根拠
  • 残業代の計算式(基礎賃金・割増率・除外可能な手当)とみなし超過分の計算例
  • みなし残業が違法・無効と判断される5つのケースと重要判例
  • 求人票・雇用契約書でみなし残業を見抜くチェックリスト(8項目)と面接での質問例
  • 2024年問題(時間外労働上限規制)の数値とみなし残業の整合性
  • みなし残業が原因で年収が伸び悩むケースと、実質時給の計算・改善アクション

みなし残業とは?施工管理で使われる固定残業代の仕組み

みなし残業とは、正式には 「固定残業代」 と呼ばれる賃金制度で、月給や年俸に 一定時間分の時間外労働(残業)に対する割増賃金 を事前組み込みで支払う仕組みを指します。「見込み残業」「定額残業代」と呼ばれることもありますが、実務上はほぼ同義です。

みなし残業(固定残業代)の定義

厚生労働省の指針では、固定残業代は「毎月一定額の残業代を、実際の残業時間にかかわらず定額で支払う制度」と整理されています。仕組みとしては次の2種類があります。

種類 内容 給与明細での見え方
基本給組込型 「基本給30万円(うち固定残業代5万円/30時間分を含む)」のように基本給の中に含める 基本給と固定残業代の内訳が明細に分けて表示されない場合がある
手当型 「基本給25万円+固定残業手当5万円(30時間分)」のように独立した手当として支給 給与明細に「固定残業手当」「みなし残業手当」として別項目で表示される

どちらの方式でも、みなし時間を超えて働いた分の残業代は別途支払わなければならない 点は共通しています。ここは特に誤解が多い部分で、「みなし残業45時間分をもらっているから、45時間を超えても残業代は出ない」というのは法律的に誤りです。

施工管理でみなし残業が広く使われる理由

建設業の施工管理職でみなし残業が採用される背景には、次のような業界事情があります。

  • 月ごとの繁忙差が大きい(工程の山谷・繁忙期/閑散期)ため、変動する残業時間を毎月厳密に計算するより固定額で先払いした方が給与管理が単純になる
  • 募集時に提示年収を高く見せられる(例:「年収600万円(固定残業代60時間分含む)」)ため、採用競争力を上げる意図で使われるケースがある
  • 元請ゼネコンでは現場所長など 管理職手前の等級 に固定残業代が組み込まれることが多い

一方で、施工管理の残業実態はみなし時間を超えるケースが少なくありません。編集部が2026年6〜7月に主要建設転職媒体で公開されていた施工管理職の正社員求人約80件を確認した範囲では、みなし残業の設定は 月30時間・月40時間・月45時間・月60時間 の4パターンが中心で、うち 月45時間以上が過半数 を占めていました(媒体は建設特化型4媒体+総合型2媒体の計6媒体、紹介予定派遣・業務委託・海外案件は除外)。

みなし残業と現場手当・職務手当の違い

給与明細を見て、「固定残業手当」「みなし残業手当」以外にも 現場手当・職務手当・役職手当・営業手当 といった項目に残業代の対価が含まれていないか確認することが重要です。

  • 時間外労働の対価として支払われる手当は、名称に関わらず「固定残業代」として扱う ことが可能(日本ケミカル事件 最高裁 平成30年7月19日判決の判示)
  • ただし、「時間外労働の対価であるか」は雇用契約書・就業規則の記載、会社の説明内容、実際の勤務状況などから客観的に判断される
  • 単に「現場手当」として支給されており、時間外労働の対価だと明示されていない 場合、後から「これは残業代でもあった」と会社が主張しても認められないケースがある

給与明細だけを見て残業代の内訳を判断せず、雇用契約書と就業規則の両方を突き合わせるのが基本です。

施工管理のみなし残業の相場|時間・金額の目安

施工管理職におけるみなし残業の設定時間・金額は、企業規模・事業内容・雇用形態によってばらつきがあります。ここでは求人票で確認できる範囲の相場を整理します。

業界の相場ライン(30時間・45時間・60時間)

主要な求人票で見られるみなし残業の設定時間と、その意味合いを整理すると次のようになります。

みなし時間/月 位置づけ 補足
20〜30時間 抑制型 労基法36協定の原則(月45時間/年360時間)に十分な余裕を持たせた設定
30〜45時間 標準型 施工管理職で最も多い設定帯。原則上限45時間ぎりぎりに寄せる企業も一定数ある
45〜60時間 拡張型 特別条項付き36協定を前提。実残業が45時間を頻繁に超えることを想定している可能性が高い
60時間超 要警戒 恒常的な長時間労働を前提とした設計。裁判例で無効判断が出やすい水準

「みなし時間 ≒ 会社が想定している月間残業時間」 と読み替えるのが実務のセオリーです。みなし時間が長い会社ほど、実際の残業も長時間になりやすい傾向があります。

求人票のみなし残業時間の分布(編集部調査)

タテルート編集部が 2026年6月下旬〜7月上旬主要な建設業向け転職媒体6媒体(建設特化型4媒体+総合型2媒体) で公開されていた 施工管理職の正社員求人約80件 を確認した範囲では、みなし残業時間の分布は次のような傾向でした。対象範囲:全国/年収下限400万円以上/同一企業の重複掲載は最新1件に統一/紹介予定派遣・業務委託・海外案件は除外。

みなし時間帯 該当求人の割合(目安) 給与モデル例
20〜30時間 約15% 年収450〜550万円(固定残業代4〜6万円)
30〜45時間 約45% 年収500〜650万円(固定残業代6〜9万円)
45〜60時間 約30% 年収550〜750万円(固定残業代8〜12万円)
60時間超 約10% 年収600〜900万円(固定残業代10〜18万円)

この分布は編集部が確認できた公開求人ベース の傾向であり、非公開求人・企業ごとの個別条件は含まれません。また金額は基礎賃金と割増率、みなし時間の掛け合わせで決まるため、同じ年収でも実労働時間が大きく異なる点に注意が必要です。関連する年収の考え方は 施工管理の年収を上げる5つの方法|大手ゼネコン・準大手・独立で変わる伸び代 も併せて確認してください。

45時間超は要警戒の理由

みなし残業時間が 月45時間を大きく超える設定 は、いくつかの観点から要警戒サインとされます。

  • 労基法36協定の原則上限(月45時間/年360時間) を超えた設定を常態化させている可能性がある
  • 特別条項付き36協定を締結していても、月45時間超は年6回まで の制限があり、みなし時間として恒常的に設定するのは制度趣旨に反する
  • 過労死ライン(月80時間超が2〜6ヶ月平均で継続、または単月100時間超)に近づく水準を 入社時から前提として設計 されている
  • 過去には、月80時間・100時間規模の長時間みなし残業設定について 公序良俗違反 として無効と判断された裁判例も報告されている(有効性は個別事案ごとに、契約書の記載・実態・使用者の説明などを踏まえ判断される)

企業の説明で「45時間分のみなし残業をつけていますが、実際は月20〜30時間くらいです」と言われる場合、なぜ余裕を持って高めに設定しているのか、繁忙期の実残業時間はどのくらいか、という2点を必ず確認する必要があります。

残業代の計算方法|みなし超過分は必ず別途支給

みなし残業を含む給与でも、残業代の基本計算式は変わりません。理解しておくと、給与明細から自分が受け取っている残業代の妥当性を検証できます。

割増率と基礎賃金の考え方

残業代の計算式は次の通りです。

残業代 = 基礎賃金 × 残業時間 × 割増率

割増率は労働基準法で以下のように定められています。

種類 割増率 適用条件
時間外労働(法定8時間超) 25%以上 通常残業
時間外労働(月60時間超) 50%以上 中小企業も2023年4月から適用
深夜労働(22時〜翌5時) 25%以上 時間外と重なる場合は25%+25%=50%
法定休日労働 35%以上 週1日の法定休日に労働した場合

基礎賃金(1時間あたりの賃金)は、月給から 割増賃金の算定から除外できる7つの手当 を差し引いたうえで、月所定労働時間で割って算出します。労基法施行規則で除外可能とされる手当は次の7つに限定されています。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

ただし、これらの手当であっても、全従業員に一律で支給されている場合や、実費と関係なく定額支給されている場合 は除外対象にならないと判断されるのが実務です。「住宅手当」と名前がついていても、実質は基本給の一部として全員に定額支給されているようなケースが該当します。

みなし残業を含めた月給の計算例(年収500万円モデル)

具体例で見ていきます。以下は年収500万円モデル(月給約36万円+賞与2ヶ月×34万円)で、みなし残業45時間・年間所定労働時間2,000時間の場合の計算です。

項目 金額・時間
月給合計 360,000円
通勤手当 15,000円
家族手当 0円
住宅手当(一律5,000円) 5,000円(除外可否は要検討
固定残業手当(みなし45時間分) 82,000円(給与明細で明示)
基本給(みなし除外後) 258,000円
月所定労働時間 167時間

このケースでの基礎賃金の考え方は次のようになります(一律5,000円の住宅手当は除外できない前提)。

  • みなし残業代の算定基礎:258,000円(基本給)+5,000円(住宅手当)=263,000円
  • 1時間あたりの基礎賃金:263,000円 ÷ 167時間 ≒ 1,575円
  • みなし残業代(45時間・割増25%)の理論値:1,575円 × 45時間 × 1.25 ≒ 88,600円

実際の固定残業手当が82,000円で理論値88,600円と乖離している場合、みなし残業代が過少に設定されている 可能性があります。この場合は「みなし時間分の残業代が満額支払われていない」として、差額請求の対象になります。

さらに、実際にこの月の残業が55時間だった場合は、45時間分がみなし残業でカバーされ、超過10時間分は別途割増賃金として支払わなければなりません(10時間 × 1,575円 × 1.25 ≒ 19,700円)。この計算式で自分の給与明細を検証すると、実質時給と超過残業代の支払い状況が把握できます。

60時間超の割増率50%(中小企業も2023年4月から適用)

2023年4月から、中小企業についても 月60時間超の時間外労働に対する割増率が50%以上 に引き上げられました(大企業は2010年から適用済み)。建設業の中小企業も2023年4月以降はこの規制の対象です。

  • 月60時間を超えた分の時間外労働は、通常の割増率25%ではなく 50%以上 で計算する必要がある
  • みなし残業設定が月60時間を超える場合、超過分については50%割増を含めた金額でみなし残業代が算出されているかを確認する
  • 深夜労働と重なる場合は 50%+25%=75% の割増となる

出典:厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」

みなし残業が違法になる5つのケース

みなし残業制度そのものは違法ではありませんが、次の5つのケースに該当すると みなし残業代が無効・違法 と判断される可能性が高くなります。

ケース1: 求人票・雇用契約書に明示がない

職業安定法(2017年3月改正)若者雇用促進法(2015年10月施行) により、固定残業代制度を採用する会社は、求人媒体・自社サイト・労働条件通知書に次の3点を明示することが義務化されています。

明示事項 記載例
①固定残業代を除いた基本給 「基本給258,000円(固定残業代を除く)」
②みなし時間と金額の算定方法 「固定残業手当82,000円は月45時間分(1時間あたり単価○円で計算)」
③超過分の別途支給 「みなし時間を超える時間外労働については、別途割増賃金を支払います」

この3点セットの記載がない求人票は、募集情報や労働条件明示の運用に不備がある可能性 があります。最終的な条件は労働条件通知書・雇用契約書で書面確認するのが安全です。転職活動中は、みなし残業や固定残業代の記載を求人票で必ず確認してください。求人票で会社を見極める視点は 施工管理のブラック企業の見分け方|求人票・面接で見抜く17項目施工管理のホワイト企業の見分け方 にも詳しく整理しています。

ケース2: みなし時間を超えた分の残業代を払わない

もっとも多い違法パターンです。「固定残業手当45時間分に含まれているから」との説明で、実際は50時間・60時間残業していても超過分の割増賃金が支払われないケースが該当します。

  • 「みなし残業代を払っているから、それ以上の残業代は出ない」との説明は 法律上誤り
  • みなし時間を超えた分は 必ず別途 割増賃金として支払わなければならない
  • 支払われていない場合は、賃金請求権の消滅時効(当分の間3年/改正民法・労基法第115条) の範囲で遡って請求できる。発生日によって扱いが異なるため、個別確認が必要

給与明細に「時間外手当」「超過残業手当」「時間外割増」といった項目が みなし残業手当とは別に 記載されているかを確認するのが第一チェックです。

ケース3: 月45時間を大きく超えるみなし時間

月45時間を大幅に超えるみなし残業設定は、公序良俗違反 として無効と判断される裁判例があります。

  • 労基法36協定の原則上限(月45時間/年360時間)
  • 過労死ライン(単月100時間超、または2〜6ヶ月平均で月80時間超)
  • 建設業への時間外上限規制(2024年4月適用)

これらとの整合性が取れないみなし時間の設定は、契約書に記載されていても無効と判断される可能性が高くなります。目安として 月80時間・100時間を超えるみなし残業設定は避けるべき水準 です。

ケース4: 「管理職だから残業代なし」(管理監督者の誤認定)

労働基準法第41条2号の 「管理監督者」 に該当する労働者には、時間外・休日労働に関する規制が適用されず残業代の支払いが不要となります。しかし、この管理監督者の要件は非常に厳格です。

管理監督者と認められる要件 内容
①経営方針の決定への参画 事業運営の重要事項に関与している
②労働時間の裁量 出退勤時間を自己判断できる
③職務内容と権限 部下の採用・評価・懲戒に実質的な決定権を持つ
④待遇 一般社員と比較して十分な優遇(賃金・賞与等)を受けている

現場所長・作業所長クラスでも「管理監督者」に該当しないケースが多い のが実務の実態です。特に「会社からの指示で現場に配置される」「勤務時間が事実上決まっている」「所長といっても他の現場所長と待遇に大差がない」といった状況では、管理監督者と認められない可能性が高くなります。

「管理職だから残業代は出ません」と説明されても、上記4要件を満たしていなければ違法状態にあたる可能性があるため、雇用契約書と実態の乖離を確認することが重要です。

ケース5: 手当の名称で残業代を隠す

「現場手当」「営業手当」「業務手当」といった名称の手当を実質的な残業代として支給しつつ、雇用契約書や就業規則に「時間外労働の対価である」旨の明示がないケースは、時間外労働の対価としては認められない 可能性があります。

  • 日本ケミカル事件(最高裁 平成30年7月19日判決)では、手当が時間外労働の対価かどうかは 契約書の記載・使用者の説明・実際の勤務状況 から客観的に判断されると示された
  • 会社が「これは残業代でもある」と主張しても、上記から時間外労働の対価と認められなければ、別途残業代の支払いが必要となる
  • 給与明細で 「残業手当」「時間外手当」以外の名称の手当 に不明瞭な項目がある場合、その内訳を人事に確認するのが安全

求人票・雇用契約書でみなし残業を見抜くチェックリスト

転職活動中や入社直後に、みなし残業の設計が適切かを確認するためのチェックリストです。

職業安定法が求める3つの明示事項

改正職業安定法(2017年3月)と若者雇用促進法(2015年10月)による明示義務は、以下の3点です。

  • 固定残業代を除いた基本給の額 が明示されている
  • 固定残業代に相当する労働時間数と金額の算定方法 が明示されている
  • 固定残業時間を超える分について、割増賃金を追加で支払う ことが明示されている

3点のうち1つでも欠けている場合は、募集情報等の明示義務違反にあたる可能性 があります。指針上は媒体掲載時点での明示が求められており、最終的な労働条件は労働条件通知書等で書面確認します。

実務でチェックする8項目(表)

# チェック項目 確認ポイント
1 求人票の「みなし残業時間」記載 「固定残業代◯円(◯時間分)」が明示されているか
2 みなし時間の妥当性 月45時間を大きく超えていないか(60時間以上は要警戒)
3 超過分の別途支給 「みなし時間超過分は別途支給」の明示があるか
4 基礎賃金の割合 月給に占める基本給と固定残業代の比率が明示されているか
5 実残業時間との整合 「実残業時間はみなし内に収まる」との説明と、繁忙期の実態にズレがないか
6 雇用契約書の記載 求人票と雇用契約書のみなし残業条件が一致しているか
7 就業規則の閲覧 就業規則で固定残業代の規定を閲覧できるか(労基法上開示義務あり)
8 給与明細の項目 内定後の給与モデルで、基本給・固定残業手当・その他手当が明細で分離表示されるか

面接で確認する質問例

面接段階でみなし残業の運用実態を確認する際の質問例です。「貴社のみなし残業の運用実態を教えてください」と切り出す形が自然です。

  • 貴社の施工管理職のみなし残業時間は月何時間で、金額はいくらでしょうか
  • 直近1年で、みなし時間を超える月はどのくらいの頻度で発生していますか
  • みなし時間を超えた場合の追加残業代は、給与明細のどの項目に反映されますか
  • 現場所長クラスの残業代の扱いを教えてください(管理監督者扱いか、みなし残業扱いか)
  • 4週8閉所の運用状況と、みなし残業時間との整合をどう考えていますか

面接で 「みなし残業の運用について明確に答えられない」「答えを濁す」「実態と乖離した説明をする」 会社は、入社後にトラブルになりやすいサインです。関連する残業・休日の考え方は 施工管理の残業は月何時間?平均・実態・2024年問題後の変化建設業の4週8閉所とは?完全週休2日制との違い・達成率の実態 にも整理しています。

2024年問題後の施工管理の残業実態|みなし時間との整合

2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。みなし残業の設定はこの上限規制の枠内に収まっていなければなりません。

建設業に適用された時間外上限規制の数値

2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています。数値は次の通りです。

  • 原則:月45時間/年360時間
  • 特別条項付き36協定がある場合でも 年720時間以内(休日労働を除く)
  • 時間外労働と休日労働の合計で 単月100時間未満/複数月平均80時間以内(2〜6ヶ月平均のいずれもがすべて80時間以内)
  • 月45時間超は 年6回まで(特別条項適用時)
  • 違反企業には 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
  • 災害復旧・復興工事には 一部の制限緩和特例 がある

出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制」

みなし残業45時間と2024年問題の関係

みなし残業が 月45時間 に設定されている場合、次の点で2024年問題との整合が取れます。

  • 労基法36協定の原則上限(月45時間)と一致
  • 特別条項を使わなくても、みなし時間内に残業を収められる
  • 年720時間の上限を「月45時間 × 12ヶ月 = 540時間」で余裕を持ってクリア

一方、みなし残業が 月60時間・80時間 といった水準に設定されている場合は、次の懸念が生じます。

  • 特別条項の適用(月45時間超は年6回まで)を 恒常的に前提 としないと成立しない設計
  • 単月100時間未満・複数月平均80時間以内という 休日労働を含む上限 に抵触するリスクが高い
  • 4週8閉所の推進(現場閉所を4週間で8日間確保する日建連の取り組み)との整合が取りにくい

「みなし残業時間 ≒ 会社が想定している月間残業水準」 と読み替えると、2024年問題に対する会社のスタンスが見えます。詳細な2024年問題の背景と施工管理への影響は 建設業の2024年問題と転職|時間外規制で変わる働き方と会社選び に整理しています。

罰則と違反企業リスクの見方

2024年4月以降、時間外労働の上限規制を違反した企業には 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 が科せられます。加えて、次のような 公共工事や企業評価への影響 が生じる場合があります(自治体や発注者の運用によって扱いは異なります)。

  • 労働基準法違反企業として、自治体・発注者の運用によっては公共工事の指名停止・入札評価への影響が生じる場合がある
  • 経営事項審査(経審)の労働福祉評価項目に反映される可能性がある
  • 送検事例が公開されると企業イメージへの影響も大きい

みなし残業時間が 月60時間・80時間 に設定されている企業に転職を検討する場合は、時間外上限規制への具体的な対応策(工程の平準化・書類のデジタル化・下請けとの適正な工期協議など)を面接で確認するのが安全です。「公序良俗違反」 は労働契約や合意が社会通念上明らかに不合理な場合に無効と判断される民法上の考え方で、労働条件が過度に労働者に不利な設計を無効とする根拠として使われます。

みなし残業が原因で年収が伸び悩むケースと対策

みなし残業は募集時の年収を高く見せられる仕組みでもあるため、額面年収に対して 実質時給 が低いケースが起こりやすい制度です。

見た目の年収と実際の労働時間

たとえば「年収600万円(固定残業代60時間分含む)」の求人があるとします。この場合、月給に換算すると次のように分解できます。

項目 金額
月給合計 500,000円
基本給 380,000円
固定残業手当(60時間分) 120,000円
賞与(年2回・計月給×2ヶ月分想定)

同じ600万円でも、みなし残業45時間の会社と60時間の会社では、実残業時間の想定が異なります。60時間分のみなし残業がついている会社では、実残業60時間が「基準」 になっていると考えるのが自然です。

実質時給を計算する

実質時給は次の式で概算できます。

実質時給 = 月給(除外可能な手当を差し引く) ÷ (月所定労働時間 + 実残業時間)

年収600万円モデル(月給50万円、通勤手当・家族手当なし、月所定167時間、実残業60時間)で計算すると:

  • 500,000円 ÷ (167時間 + 60時間) = 1時間あたり2,203円

一方、年収500万円モデル(月給41.7万円、月所定167時間、実残業30時間)では:

  • 417,000円 ÷ (167時間 + 30時間) = 1時間あたり2,117円

額面年収は100万円違っても、実質時給の差は約100円 というケースが実在します。転職前に「額面年収」と「実残業時間」の両方を確認し、実質時給ベースで比較するのが重要です。

年収を上げるための3つの選択肢

みなし残業を含めた実質時給を改善するアプローチは、大きく次の3つに整理できます。

  • ① 同業他社への転職:みなし時間が短くて基本給が厚い会社を選ぶ。ただし総合的な労働環境(休日・現場配属先など)も併せて確認
  • ② 資格取得と昇格:1級施工管理技士取得後の資格手当・監理技術者手当は基礎賃金に含まれることが多く、残業代の割増計算にも反映されるケースがある
  • ③ 発注者側・公務員技術職への転職:みなし残業ではなく所定内労働時間ベースの給与体系。年収は下がっても実質時給が上がる可能性がある。詳細は 施工管理から公務員(技術職)に転職する方法とキャリア を参照

年収と労働時間のバランスを整理する視点は 施工管理の年収を上げる5つの方法施工管理のボーナスはいくら?相場と支給の仕組み にも詳しく整理しています。

タテルートの 無料キャリア相談(LINE) は、みなし残業を含む給与モデルの検証や、求人票の読み解きを整理する場としても活用できます。押しつけの求人紹介はせず、条件面の見立てを一緒に整理するスタンスです。

よくある質問(FAQ)

Q1. みなし残業がある会社はブラックですか?

みなし残業自体はブラック要素ではありません。判断軸は 「みなし時間・超過分の別途支給・実残業との整合」の3点 です。月30〜45時間のみなし残業で、超過分が別途支払われ、実残業もみなし内に収まっていればホワイト運用と言えます。逆に月60時間超のみなし残業で、超過分が支払われないケースは要警戒です。

Q2. みなし残業45時間分もらっている月に、実際は30時間しか残業しなかった場合、差額は返さないといけませんか?

返す必要はありません。みなし残業は「実残業がみなし時間より短くても満額支給する」設計です。労働者に有利な運用として、みなし時間より短い月の差額返還を求めることは基本的にできません。

Q3. みなし残業時間を超えて働いた分は、いつ支払われますか?

給与計算締日の翌月支給日に、通常の給与とあわせて支払われるのが一般的です。給与明細の「時間外手当」「超過残業手当」といった項目に反映されます。反映されていない場合は、まず人事に確認してください。

Q4. みなし残業代が支払われていない場合、過去分を請求できますか?

請求可能です。改正民法・労働基準法第115条により、賃金請求権の消滅時効は 原則5年(当分の間は3年) とされています。発生時期によって遡及できる範囲が異なるため、給与明細・タイムカード・雇用契約書を確認したうえで、労働基準監督署や労働問題に強い弁護士に個別確認するのが安全です。証拠として タイムカード・勤怠システムのログ・業務メール・PC起動履歴 などが有効です。

Q5. 現場所長ですが、「管理職なので残業代は出ない」と言われています。これは合法ですか?

労働基準法第41条2号の管理監督者の要件(経営方針への関与・労働時間の裁量・十分な権限・優遇された待遇)を満たしていなければ違法です。現場所長でも「会社の指示で現場に配置される」「勤務時間が事実上決まっている」場合は、管理監督者に該当しないケースが多い のが実務の実態です。労働基準監督署への相談も選択肢の1つです。

Q6. みなし残業の設定時間は、雇用契約書の途中変更が可能ですか?

労働条件の一方的な不利益変更は認められません。会社がみなし時間を延長する場合は、労働者の個別同意または就業規則の合理的な変更手続きが必要です。「今後、みなし残業を60時間分に増やす」という会社側の一方的な通知は、労働契約法上無効となる可能性があります。

Q7. 求人票にみなし残業の記載がない会社は、みなし残業が無い会社ですか?

「みなし残業がない」または「求人票にみなし残業の記載を怠っている(違法状態)」のどちらかです。応募前に 雇用条件通知書の交付を求めて、みなし残業の有無と時間・金額を書面で確認 するのが安全です。書面提示を渋る会社は、後々のトラブルにつながりやすいサインです。

Q8. 副業や兼業をしている場合、みなし残業の計算はどうなりますか?

労働基準法上、複数の事業場での労働時間は通算されます。ただし、みなし残業代の計算は主たる勤務先の労働時間に基づいて行われるのが一般的です。副業先での労働時間が長い場合は、主たる勤務先の残業代計算に影響することがあるため、双方の会社に労働時間の通算を届け出てください。

Q9. 派遣・契約社員でもみなし残業は適用されますか?

適用可能です。派遣・契約社員の雇用契約書に固定残業代の記載があり、超過分の別途支給・時間と金額の明示があれば、みなし残業制度を使えます。ただし派遣の場合は派遣元との契約が基準となるため、派遣先ではなく 派遣元の雇用契約書 で条件を確認してください。派遣・契約社員の位置づけは 施工管理の派遣は稼げる?正社員との違いとキャリアの選び方 にも触れています。

Q10. 深夜残業や休日出勤の分もみなし残業に含めていいですか?

深夜残業(22時〜翌5時)と法定休日労働は、通常の時間外労働と割増率が異なるため、固定残業代に含めるには 雇用契約書・就業規則で明確に区分 して定める必要があります。「深夜労働20時間分含む」「法定休日労働10時間分含む」といった内訳明示が必要で、内訳がなければ深夜割増・休日割増分は別途支払わなければなりません。

Q11. 転職エージェント経由の求人と、企業サイト直接応募で、みなし残業の条件は変わりますか?

原則同じ条件ですが、同じ会社でも媒体や求人ごとに固定残業代の金額表示が違うケース があります。表示金額の違いは「表記の丸め方の差」か「募集ポジションの違い」に起因します。必ず雇用契約書段階で最終確認してください。関連するブラック企業/ホワイト企業の見分け方は 施工管理のブラック企業の見分け方施工管理のホワイト企業の見分け方 を参照。

Q12. 未払い残業代を請求したら会社にいづらくなりませんか?

労働基準法第104条の2により、労働基準監督署への申告や未払い賃金請求を理由とした 不利益取扱い(解雇・降格・配置転換等)は禁止 されています。ただし現実には人間関係が悪化するケースもあるため、退職・転職を並行して検討する選択肢もあります。労働問題に強い弁護士・労働組合・労働基準監督署(全国労働基準監督署の所在案内)への相談が有効です。

Q13. みなし残業を廃止した会社への転職は有利ですか?

一概には言えません。みなし残業廃止=残業ゼロではなく、実労働に応じた完全支給制 に切り替わっただけです。基本給が下がって手取り総額が減るケースや、逆に基本給が変わらず総額が増えるケースなど、給与モデルの再設計次第で結果は異なります。廃止後の給与モデルを具体的な月給例で確認するのが重要です。

まとめ

施工管理のみなし残業は、月給に一定時間分の残業代を先払いで組み込む固定残業代の制度です。制度自体は違法ではないものの、「求人票と雇用契約書での明示」「みなし時間の妥当性」「超過分の別途支給」 という3点が守られていない場合、無効・違法と判断される可能性が高くなります。

  • みなし残業は月30〜45時間分の設定が施工管理職では標準的で、60時間超は要警戒水準
  • みなし時間を超えた残業には別途割増賃金の支払いが義務。実質時給ベースで判断する
  • 職業安定法(2017年3月改正)と若者雇用促進法により、求人票・労働条件通知書での3点セット明示が義務化されている
  • 「管理職だから残業代なし」の説明でも、労基法第41条2号の管理監督者要件を満たさなければ違法状態にあたる可能性がある
  • 2024年4月からの建設業への時間外上限規制(原則月45時間/年360時間)とみなし時間の整合を確認する
  • 実質時給を計算して額面年収と労働時間のバランスを検証。転職時は求人票と雇用契約書を必ず突き合わせる

みなし残業の条件面を1人で読み解くのが難しい場合は、タテルートの 無料キャリア相談(LINE) で求人票の見立てを一緒に整理する選択肢があります。押しつけの求人紹介はせず、条件面の妥当性検証を中心に対応しています。

関連する働き方・年収の判断軸は次の記事でも整理しています。


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